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【上積みで決める】セリエA20-21 第34節クロトーネ-インテル レビュー

内容は良くても結果に繋がらない中、ディテールという引き出しを開けるインテル。
確かな成長を見せる中、勝負を決めた要因は昨季からの明確な”上積み”だった

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第34節クロトーネ-インテルのマッチレビューです。

●選手起用

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・クロトーネ選手交代
38分レツァ▶︎ペレイラ
46分チガリーニ▶︎エドゥアルド
66分ベナリ▶︎ヴリッチ
72分ウナス▶︎リヴィエレ
・インテル選手交代
65分センシ▶︎エリクセン
65分ラウタロ▶︎サンチェス
65分ダルミアン▶︎ペリシッチ

●前半-大枠は変わっていないが…

前回対戦時のクロトーネはストロッパ監督でしたが、交代を経て今回はコズミ監督が旗を振います。

どのようなカラーチェンジが起きているか楽しみでしたが、大枠はそこまで変わっていないように見えました。

しかし、色の濃度に変化が見られた点が本節のクロトーネ側のポイントだったでしょうか。

というわけで、前回レビューを前提としますので、未読の方はあらかじめご覧いただけると幸いです。

ビルドアップは今回も左に数的優位を作る設計。

しかし後述しますが、シミーの存在が前回対戦時と比較を生みました。

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✔︎ベナリが降りたり膨らむことでバレッラを釣る。
✔︎ウナスがそのスペースへ降りてくる。
ベナリがビルドアップの起点で数的優位を作るとともに、
ウナスが降りることで位置的優位が発生

連動性が◎。

これまた後述するインテル側の狙いが最も大きな後押しと睨んでいますが、それとは別に確実に洗練されてました。前回は割と大味で強引だった感。

ベナリとウナスのポジショナルプレーあってこその設計なので、どうしても彼らに目を奪われますが、戦術的なポイントになったのは実はシミーと考えています。

●前半-良くも悪くもシミー

34節時点で19ゴールと最下位のチームとは思えほどのスタッツを残すストライカーをインテルはリスペクトしていました。

バレッラは持ち前の運動量でベナリに付いていきますが、シュクリニアルはシミーを警戒し、降りるウナスに張り付きません

・インテルとバレッラのアタッキングサードてのプレス回数
※さっぱりデータが上がってこないのでスルーしてアップしました。後日更新する…かも。

察するにインテルが嫌がったのはこの形。

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シミーにデ・フライとの数的同数マッチアップを許すだけならまだしも、本節は右IHに超絶ドリブラーのメシアス、右WBに快速のモリーナが配置されているので、個人的にはクロトーネの火力が最も発揮される編成だったと見ています。

前回のレビュー通り、ビルドアップ逆側のIH、WBが飛び込む形はクロトーネの十八番。そこに今回はシミー単騎の怖さもあったので、インテルとしては許容できなかったんでしょう。

そこで、シュクリニアルはウナスに張り付かず、シミーとのマッチアップ。または、デ・フライとシミーのマッチアップの+1になった。

シュクリニアルは慎重な立ち位置に終始

シュクリニアルのハイパフォーマンスもあり、この慎重な狙いはジャストだったんですが、なぜかチームはハイプレスに積極的

結果、ブロゾヴィッチがチガリーニとウナリの2選手を気にしなくてはいけなくなる基準点の乱れがクロトーネのビルドアップを機能させてしまった要因と断じます。早い話、インテルの動きがクロトーネ側に噛み合っちゃいましたね。

しかし、クロトーネはビルドアップが良くても、崩しで難を抱えます。
またもシミーは戦術的なポイントになりますが、今回は悪い意味で、です。

ずばり、ボールを収められず崩しのトリガーになれなかった。

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・ボール保持における選手の平均的な立ち位置(前半のみ)
シミー(25番)が中央やや左寄りに位置していることが分かります。
尚、モリーナ(17番)が中央に寄っているのはレツァの負傷交代により、途中でサイドが変わったことに起因します。
セリエA公式HPより引用。

上図が示すようにシミーのマッチアップは静的なポジション対面のバストーニではなく、シュクリニアル、デ・フライになった訳ですが、この2選手が迎撃体制を取っている中、ボールを収めて捌いたり、前を向いて仕掛けることはスペシャルなFWでも相当な高難度。

というか、クロトーネはそもそもパスを付けられませんでした。

ゆえ、機能を許したビルドアップに対をなして、崩しの局面では前回の怖さはありません。ここはシミーの力量不足を指摘したいのではなく、クロトーネの設計が響いた。ということをお伝えしたい。

ウナスはおそらく交代前提で、降りてもすかさず前線に戻る超精力的な貢献でしたが、それでも物理的にシミーが孤立する瞬間は避けられません。

重ねてになりますが、そのシチュエーションで今のインテルのソリッドで鉄壁な守備陣を崩すのは困難を極めます。

左ビルドアップの洗練さが右で刺す仕組みを薄めている

それでもコズミ監督はシミーを信頼しているでしょうし、シミーは実際にゴールというこれ以上ない結果で応えている

しかし、シミーがいることで左で崩して”右で刺す”!の色が薄まっているように見えました。インテルの守備がそうさせたのかもしれませんが、結果として本節はその事象を否定できないと考えています。

前回はインテルの個人責任の強いミスもあり、むしろ孤立していることがカウンターの先鋒としての機能を促した側面もありますが、今回はそううまくはいきませんでした。

こう見ると、インテルは前回の反省をしっかりと活かし、戦術的なアジャストを成功させたということかもしれません。

もしかしてウナリのスペースもわざと開けて誘ったというのか…?
なーんて。暴論ですw
ここまで来るともう甘々で見ちゃいますねw

というわけで、前半はスコアレスでしたが全く持って焦らなくていい内容。
上述の通り、クロトーネのビルドアップは機能していたので全体で見ると「むむむ」と唸ってしまうかもしれませんが、局面局面は完全に優位でしたね。

●後半-引き出しを開ける姿にシーズンの軌跡を感じる

「局面が優位でも結果が付いてこなかったら意味がないだろ!」

その通りです。

インテルはその結果を具現化するために引き出しを開けます
と、その前にクロトーネのボール非保持から確認させてください。

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✔︎ハイプレスは放棄。
✔︎左CFのウナスがブロゾヴィッチ番を務めて監視。
✔︎5-3ブロックは内寄りでとにかく中央を締める。

顕著な内切りブロックは前回対戦時と変わりありませんが、ディテールは変化が見られます。

DF-MF間がコンパクトに。

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前回はスカスカだった。
シーズン前半戦のレビューより抜粋。

前回のゴールラッシュはクロトーネの致命的な悪設計が最大理由と見ていますが、流石に2度は続きませんね。

縦も横もコレクティブなクロトーネのブロックはまさに”密集”ということばが良く似合いました。ただ、”集合的”ではあったけど”組織的”とは言い難いかな。

「物量と局面の1対1で負けない!」という守備的パワープレー!みたいな感じが垣間見えたのは否めないと思います。

なので、センシのスターティングに対しては「なるほどね!スカウティングの結果、しっかりと戦術に紐づく起用なのね!」と感嘆しました。

実際、効果的だったと思います。

やっぱりインテルでの彼は前目がハマりますね。押し込んだ際にパスを前につけて密集地に出入りするクオリティはオンリーなものがあります。
残念だったのは結果が出なかった点。エリクセンに持っていかれちゃいましたね笑

それはさておき。

インテルは外循環を強いられますが、シュクリニアルとバストーニの攻撃参加で厚みをつけます。クロスで外の怖さを見せつけるのをフックに、中を使う巧みな攻め分け。

さらにディテールの引き出しを開けます。

ⅰ)センシが大外に膨らみ、ダルミアンが内に絞る。ハーフスペースには持ち上がれるバストーニ。

ⅱ)センシが降りて、バストーニが上がる。縦の入れ替え。

ⅲ)合わせ技。センシが降りて、ダルミアンが内に絞り、バストーニが膨らむ。

ⅲを図解します。61分のシーンは綺麗でした。

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ダルミアンが内に絞ってペレイラを引っ張り、センシが降りることで大外のバストーニがどフリーになりました。

ポジショナルプレーで意外性を創造し、相手ブロックを掻き乱す。
右サイドも同じプレーは出力できていましたが、あえて左サイドを取り上げた理由は”あの左サイド”だからです。

ビルドアップ機能不全と言われた頃が遠く懐かしいものに思える内容

いやー、単なる負け惜しみですが、どうしても今の状態でCLや昨季ELファイナルを戦いたいという願望は頭から離れませんね。

●後半-スカッドの厚みと冬の大補強

とインテルを褒めちぎりましたが、後半も試合展開は互いにオープンな時間帯も目立ちました。

そんな中、コンテ監督は65分に珍しく?早い時間帯に3枚のカードを一気に切ります。

センシ、ラウタロ、ダルミアンOUT

エリクセン、サンチェス、ペリシッチIN

いやぁ、えぐい笑。

自チームなので少し感覚が麻痺しますが、3枚変更でこのカードを場に出せるのは改めて凄いですね。

交代策はすぐに結実します。いや、もう策と言えるか分からないけれども。

69分の先制点はブロゾヴィッチのジャストな縦パス、ゲームメイク。
エリクセンのダイレクトパス、チャンスメイクが起点に。

エリクセンフィット後の新しいインテル

「これこれ!これが”冬の大補強”エリクセンがフィットした新しいインテルの武器!」と声を大にして発したくなるゴール。

シーズン後半のミラノダービーレビューでも言及しましたが、ブロゾヴィッチとエリクセンの性質のちがいがこうも相互作用を生むとは。

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ミラノダービーレビューより抜粋。

上述の通り、センシも機能していましたが、エリクセン投入によるリズム、テンポのギャップにクロトーネは付いていけませんでした。

ブロゾヴィッチもエリクセンのことを理解した上でのパスでしたよね。あのスピード、あの強さ。
改めてリプレイを見ると「ほい!ダイレクトでスイッチ入れてね!」って意図が込められているように感じます。

試合終盤にはバレッラの脅威的な推進力と運動量。ハキミの理不尽スピードによるカウンターで一刺し。

昨季からの上積みで勝負を決めたインテル。勝ち点はあと1。

チェックメイトです。

・スコア
クロトーネ0-2インテル
(69分エリクセン、90+2分ハキミ)

●雑感-今日は特になし!

レビューと題しておいてなんですが、もうここまで来たら細かいことは置いておきましょう笑

本レビューを投稿した当日の22時KO、サッスオーロ-アタランタ戦でアタランタが引き分け以下なら決まります。

もしアタランタが勝利してもインテルは次節サンプドリア戦で引き分け以上で同様に決まります。

「せっかくならホームで自分たちで決めたい!」

「決まるならなんでもいい!」

さまざまな意見があって面白いですね。

ですが、それ以上に面白いのが訓練されたインテリスタと言えども、流石にもう期待を隠しきれない点。笑

果たしてどうなっているでしょうか。

最後までFORZA INTER!!⚫️🔵

ご覧いただきましてありがとうございました🐯

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