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”党史上初の女性委員長”なのに、一向にぱっとしない日本共産党~党員除名で”異論圧殺”の体質露呈、かつてなく低調だった党大会  筆坂秀世


【画像① かつて筆者(篠原常一郎)の上司でもあった元日本共産党No.4、党政策委員会責任者で参院議員であった筆坂秀世さん。テレビで放映される予算委員会質疑に立つと、NHKのその時間帯の視聴率がグッと上がるという伝説の論客でもあった。現在も論の鋭さ、明解さは健在だ。】




予告した通り、note「インテリジェンス・ウェポン」執筆陣に元日本共産党参院議員で党No.4だった筆坂秀世さんが加わった。もう御存知と思われるが、共産党関係では既に元党板橋区議団幹事長だった松﨑いたるさんにも、本noteでは健筆をふるっていただき、他では読めない共産党や政治史の裏面を紐解いていただいてきた。


この度、筆坂さんに寄稿していただいたのは、1月半ばに党大会を開催した日本共産党の「新体制」やその後の動向から読み取れる党内事情などを詳細に文責した長文記事である。「もう共産党なんか、影響力ないしいまいち興味が…」という向きもあるかもしれないが、日本共産党の幹部たちが声高に叫んで胸を張る「創立以来、100年の歴史を持つ」という点で見ると、どんな時代でも同党は日本の政治の一面を逆側から映し出す鏡の役割を果たしてきた。



率直に言って、かつての同僚やまじめに活動している党員の人たちに申し訳ない気持ちもあるが、私(篠原)はもう日本社会において共産党の存在意義は全くなくなり、旧態依然たる人権じゅうりん体質を具現化した「民主集中制」という組織運営ルールの下で相変わらず騒ぎを起こしているようなら1日も早く解党した方が人権が尊重されるべき社会への前進のためには有益だと思っている。そんな党だが、社会の中に根ざして様々な市民運動(生活擁護、福祉、零細事業保護、さらにはジェンダー平等運動ほか)に強い影響力を保持している。いまだ無視できない存在故にそのイデオロギー”共産主義”と共に社会にとってその克服方向を考えるのは、重要な課題とも考える。



そんな状況を見つめる材料として、筆坂さんにはいろいろ本noteでは論じていただこうと考えているので、読者のみなさんから取り上げて欲しいテーマの要望もいただければ幸いである。



【画像② かつて筆坂秀世さんは志位和夫氏にとって、かけがえのない”片腕”であった。筆坂氏が党内の抗争を背景にでっち上げられたスキャンダルで議員辞職に追い込まれた後、志位氏が自室で涙していたという話を同氏に近かった党関係者から聞いている。2002年2月、国会内の記者会見における両氏。】




◆論考:党創立100年にして”初の女性党首”~談合で決まった女性トップ、さっそく「パワハラ」言動で馬脚?~党大会経てもぱっとしない共産党/筆坂秀世



<女性委員長にしてみたものの…>



一昨年の2022年7月、党創立100周年を迎えた日本共産党が、今年1月になって創立100周年後初の党大会・第29回大会を開催した。共産党は他の政党と違い、党規約で「2年または3年のあいだに1回ひらく」となっている。今回は統一地方選挙などがあったため大会を延期し、4年ぶりの党大会であった。



新しく委員長になった田村智子氏(前党副委員長・参院議員)は、党大会で長時間にわたる中央委員会報告を行った。その最後の部分で「全党が新しい1世紀に飛躍する力となる、歴史的党大会にしようではありませんか」と呼びかけた。しかし、党大会を通して、またその後も日本共産党内部からそのような斬新さも、力強さも感じ取ることは出来なかった。すべてがありきたりとしか言いようがない凡庸な党大会だったとしかいいようがない。



<メディアの報道に八つ当たりする共産党指導部>



今回の党大会で新味があったと言えば、女性の委員長が初めて誕生したことぐらいだろう。しかしながら、これも後で触れるが田村氏を選定した経過も「共産党内にはやっぱり民主主義はない」ということをあからさまに示すだけのものであった。結果、メディアの報道も党大会に対して冷めたものとならざるを得なかったのも当然である。



しかし、共産党指導部はそれに腹を立てたようだ(毎度のことだが)。1月25日付赤旗で「各紙の日本共産党大会報道 鋳型にはめこむだけでいいのか」と題する記事を掲載し、次のように報じた。




「日本共産党の第29回党大会を、閉会翌日(19日)の各紙はいっせいに報道しました。閉会日(18日)の『朝日』と『読売』は事前記事を掲載し、マスコミが注目する大会でした。当日の記事では、田村智子参院議員の委員長就任を『選挙で女性候補を多数擁立してきた同党を象徴する人事』(「朝日」)と紹介しました」



ここまでは良かったが、この後の論評が酷いものだった。


「社説や論評を中心に多くは、『低迷の共産 刷新演出』(『朝日』)『党勢反転へ人事で刷新感』(『日経』)などともっぱら人事だけに焦点を当て、その背景に党勢の『低迷』をあげる皮相な中身でした」


自党に対する各紙の論評について、真摯に向き合う訳でもなく、赤旗記事は一律に「皮相な中身」とばっさり切り捨て、批判しているのだ。同党の実際は誰が見ても議員数、党員数、赤旗読者数が減り続けている共産党の現状は低迷どころか大低迷である。このことを指摘することは決して皮相な見方、うわべだけの見方などではない。これこそ現下の共産党の最大の解決すべき課題であり、こうした率直な指摘を皮相でしか受け止めていないのは日本共産党の側だと言わざるを得ない。


しかし、一方で赤旗記事はなぜ朝日記事などを「皮相だ」と批判するのか、とも思う。赤旗記事には、こうも書かれていた。


「そこでは党大会とそれに向けた3カ月にわたる全党討論で練り上げた決議や報告、さらには、大会での豊かな討論の内容にはいっさい触れませんでした」


全く意味不明で日本語にすらなっていない。そもそも自分たちが決めた目標である前大会時より130%増の党員数、赤旗読者数という数値はまったく未達成で迎えた党大会であった。いや、むしろ未達成どころか、さらに減らしてきたのだ。下手な言い訳ばかりして反省もなく、いくら目標が未達成に終わっても、その後同じような目標をまたしても掲げ、全党に押し付ける。もう「無能と無責任の極み」でしかない報告や討論をメディアに対してどう評価しろと言うのだろうか。ましてや一般紙が面白くもない討論内容に触れるわけがない。仮に言及したとするなら、その空疎さを手厳しく批判したことだろう。




【画像③ 党大会で選出された新女性委員長、田村智子氏と議長に”格上げ”となった志位和夫氏。】

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