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統合デザイン学科4年生インタビュー#04 八子智輝

八子智輝(やこ ともき)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
深澤直人・長崎綱雄プロジェクト所属


ー自己紹介と統合デザイン学科に入学した経緯について教えてください。

統合デザイン学科4年深澤直人・長崎綱雄プロジェクト所属の八子 智輝です。
プロダクトデザインを主体とするプロジェクトに所属していますが、グラフィック・ブックデザイン・タイポグラフィ・イラストレーションなど自分が興味を持った様々な分野のデザインに手を出しながら制作をしています。最近はZINEなどの小冊子を作り、それを売ることに熱中しています。趣味は食べること、古書店を巡ること、星野源さんを愛することです。

中学生くらいのときから文房具が好きでいつか自分でつくれるようになれたらいいなと漠然と思っていました。それから進学先の高校の先生に「最近できた面白い学科があるから見学しに行かないか」と言われて連れて行かれたのがこの学科で。そのまま統合デザイン学科を志望して入学しました。


ー統合デザイン学科で様々な分野を学んできた中で、自分の興味ある分野はどのように移り変わってきましたか?

まず大学に入ったときに感じたことは自分と周りの方との実力と知識量の差でした。制作もうまくいかないし、先生たちから褒められないし、周りと話してても話が合わないしで、自分がこんなところにいていいのか、みたいなことをずっと思っていて。自分がとても無力な存在に感じていました。

その頃に『コミュニケーションデザイン論』という授業で教鞭をとられていた、菅付雅信さんの「クリエイティブに普通の人はいらない」という言葉にものすごくハッとさせられました。そこで本当に、やるかやられるかくらいのシビアな環境に置かれていることと、制作していないと自分の居場所がなくなることに気付いて、それからは私なりに必死にもがいて制作をしてきたと感じています。

その中で自分の作品の制作に通底する軸のようなものを意識するようになったのは大学2年生のときに芸術祭で展示をした「そだつ展」でした。

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同学年の友人たちと行った展示だったのですが、どのような展示にしたら展示大賞(芸術祭の展示の中の最優秀賞。来場者の投票によって決まる)が取れるかということをコンセプトから延々と話し合いました。子供から大人まで来場者の方全員に面白いと思ってもらえるものを目指して色々と言葉出しをして、結果「そだつ」というテーマで各々で作品を制作しました。

私は「そだつ牛乳パック」という作品を作ったのですが、これがとても楽しかったんです。

そこで、自分は最初からアウトプットのジャンルは絞らずにコンセプトを練っていって、通底する軸のようなものを見失わずに制作することが好きなのかもしれないと思うようになりました。


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ー自身の制作スタイルについて教えてください。

私は自分が良いと思ったものを徹底して作った上で、受け取る人に喜んでもらうことが制作動機の一番中心にあるのかなと思っています。

なぜそう考えるようになったのか思い返してみると、小学生の頃に新聞委員会に入っていたんですけど、そこで絵を書く時に「人に配るものだから喜んでもらわないといけない。」と思った記憶があって、そこの軸が今も変わっていっていないのかなと思います。

あと、私の両親が大工なんですけど、私が幼稚園生の頃に両親が幼稚園にベンチを作りに来たことがあったんです。初めて見た実際に作業している姿がかっこよく感じて…。そのベンチがその後何年間も、ボロボロになっても幼稚園生たちが楽しんでくれていることが嬉しくて、物作りっていいなと思いました。その経験も、自分の作ったもので人に喜んでもらいたいと思うようになった原点なのかなと思います。


ーこれまでに制作してきた作品について教えてください。

電柱の脇に立つ黄色いポールを集めたZINE
『支線を集める』

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今はグリッドシステム(*1)やあらかじめ作ったフォーマットから紙面を構成していくのが好きで、本や冊子のエディトリアル(*2)が自分の得意分野かなと思っているのですが、実は大学3年生になるまで全然本を読んだことがなかったんです。

大学3年生でタイポグラフィーの授業を受けて、この授業を担当している守先正先生のおかげで本に興味を持ち始めました。この授業で夏休み中に行った考現学を用いて情報を収集し、その情報をグリッドシステムで構成するという課題がありました。

そこで私は電柱の脇に立っている支線と呼ばれる黄色いポールをひたすら集め『支線を集める』という本を制作しました。この作品がきっかけで本作りの楽しさに気付きました。

※1 グリッドシステム
下図のようにレイアウトを格子状に分解して配置するデザイン手法

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※2 エディトリアル
新聞や雑誌などの「編集」を意味する言葉



出版停止になってしまった書籍をコンセプトにした同人誌

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大学3年生の冬頃に、同人誌のデザインを担当しました。同人誌制作に参加したというのも、主宰の方のラジオで「同人誌のデザインやってくれる人いないかな」と言っていたのを聞いて。

それまで同人誌のデザインなんてやったことなかったんですけど、本を参考にしながら作ってみたものを送って連絡を取ったら採用されたことがきっかけです。

この同人誌を作った時はAdobeのインデザインを使用してフォーマットを制作する作業を170ページくらい作らないといけなかったので、採用されたからにはやるしかなくて(笑)とにかく手を動かしていくうちにエディトリアルとか、グリットシステムやフォーマットを用いて制作していくのがどんどん好きになっていきました。

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ー卒制のテーマとそれに至った経緯についてお聞きしたいです。

大学3年生くらいから本が好きになって本を作ることも多くなっていったんですけど、本やポスターを制作する際には、必ずA3とかB1といった判型のサイズを考えないといけません。その中でA4というサイズはコピー用紙などでは最もオーソドックスなサイズではあるんですけど、本やポスターなどではあまり使用されないんです。
私の所属しているプロジェクトの先生も「判型としてのありふれたサイズ過ぎてA4はかっこよくない」と言っていたことがあって。それが妙に自分の中で引っかかって、A4に固執し始めたのが制作のきっかけです。

そこで、A4は確かに自分たちの身の回りで一番普遍的で最も見慣れている平面のサイズであるけど、ではその最も見慣れているA4 のサイズで自分の周囲のもののサイズを表したら、どのようなギャップが生まれるだろうかと思って、ポスターやZINE など様々なバリエーションの作品を制作しています。

本を作るのが好きというのと、卒展の前までに一旦完成させて学外の人の目に触れてもらいたいという思いがあり、芸祭では本の形態にして売ったんですけど、自分でも結構気に入っていたり、評価してもらえるかわからないけど人に買ってもらって見てもらえることがすごく嬉しかったです。

元々作品をTwitterにあげていたんですけど、実際のA4のサイズじゃないし、ただの画像になってしまうので、紙で見てもらたいなと思っていて。「実際のA4のサイズで手にとって見たかったから買った」と言っていただけてそれが伝わったようでとても嬉しかったですね。


ー卒業後はどんなことをやっていきたいですか?

この4年間でいろんなものを制作したり経験してきたんですけど、その中で自分が良いと思ったものを徹底して作り、それを色んな人に見せて喜んでもらえるというのがクリエイティブの醍醐味であると思っていて。作った段階で満足に思うことが自分にはなくて、作ったものを人に見せて実際に喜んでもらうだとか楽しんでもらうことが制作の終着点だと思っているので、そこが自分が目指しているところです。

ただ、それをこれからも続けていくことが重要だと思っています。例え社会に出たとしても、やりたいことには手を出し、好きなことには好きと言い、表現したいものは表現するといったように、いちクリエイターとして制作を続けることは止めないようにしたいです。

WEB:http://8koweb.com
Twitter:@8KOWEB

(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和、田邊茜)


次回の統合デザイン学科4年生インタビューは…!

「世の中のネガティブな部分をすくい上げ、 新しい価値に転換するものづくりがしたい。」
川尻 優(かわじり ゆう)

多摩美術大学統合デザイン学科4期生
佐野研二郎・小杉幸一・榮良太プロジェクト所属

アイデア出しではいつもテーマと逆のことを探りながら制作しているという川尻さん。
就職活動を始めるまでは広告の道に進みたいと考えていたが、本当にやりたいことを考えた結果、ファッションの領域に方向転換しようとしているらしく…?
どんな作品を作り、どう考えが変わっていったのか。
4年生インタビュー第5弾は明日公開です!乞うご期待!

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