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【卒展2021 Making Process】 #07 図録製作

図録班統括
八子 智輝
(やこ ともき)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
深澤直人・長崎綱雄プロジェクト所属


はじめまして!今年度卒業制作展図録の担当をさせていただいた八子智輝です。

このたび卒業展示にあたって『多摩美術大学 統合デザイン学科卒業・修了制作展 2021 図録』を発行することになりました。
この図録とは今年度卒業生の作品がすべて載った作品集になります。(卒業展示にて予約販売、3月中旬頃発送予定です。)

学生1名に対し、見開き2ページに渡って作品の解説を載せたものを一冊の本にまとめています。
また今年度は統合デザイン学科学科長である深澤直人先生にご協力していただき対談を行い、その対談内容も収録させていただきました。

今回はこの場を借りて、本図録がどのようにして制作されたかを書いていきたいと思います。

1. 表紙デザインについて

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図録の表紙は卒業制作展のメインビジュアルを元にして制作しました。
展示会場に設置してあった、図像が棒から成長していくアニメーションをスマートフォンで撮影したところ、コマ送りすると成長する過程が軌跡になって重なって見えたことに着想を得ました。

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元になったメインビジュアルのコンセプトは「私たちの成長した姿」です。

成長の過程にはたくさんの経験があり、色々なことを学びました。
それぞれの選択があり、友人の制作物に影響を受け、成長しました。
それをいくつにも分かれ、隣の図像の色も取り入れながら伸びていくという形で表現しています。

この図録を通して私たちは個で完結しているのではなく、共に成長してきたということを感じていただけたら嬉しいです。

2. 本文デザインについて

【用紙・印刷について】

今年度の図録サイズはB5サイズと例年よりひと回り小さくすることにしました。
サイズの変更に至った経緯として、委員の話し合いで出た

・例年の流れから(良い意味で)脱却したいという思い
・一回り小さくすることで本としての塊感が出るのではないか
 また手にとって開きやすくなるのではないか
・生徒数が多いためページ数も多く、300ページを超えてしまうため
 サイズが大きいと重たい印象が出るのでは

などの理由からサイズを変更することを決めていきました。


また本文の用紙は軽やかでめくりやすい
微塗工紙の「b7トラネクスト」という紙に決まりました。
この用紙を選ぶことのメリットとして

・オンデマンドでもオフセットでも高い印刷再現性がある
・斤量(*)が低くとも高い紙厚がある
・印象や実際の重さとしても重たくなりすぎない

という点が挙げられます。

※斤量
用紙の厚さを示す単位で、原紙1,000枚の時の重さ(kg)です。
数値が低いほど薄く、高いほど厚くなります。
また、同じ斤量でも用紙が異なると厚さは異なります。


【使用書体について】

本文の使用書体を決めていくにあたって考えなくてはならないことは、個性のある書体を用いないということでした。
これはなぜかというと、130作品以上ある多種多様なジャンルの作品を掲載するため、文字情報が気になってしまうとそこに目が移ってしまうという危険性をはらんでいるためです。

そこで私はあくまで作品の説明に徹する書体を選定しなくてはならなかったため、様々な書体を様々な級数で実際に紙面に構成していきました。

その結果、和文には中ゴシックBBB、欧文にはUnivers BQという書体を使用することに決まりました。

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【エディトリアル・レイアウトについて】

本文のレイアウトはグリッドシステム(*)を用いて構成をしました。

grid_アートボード 1 のコピー

統合デザイン学科の特色として、学生各自がアウトプットの幅を狭めずに作品を制作するため、最終的な作品が幅広いジャンルの作品になっています。
その特色を活かすためにあらかじめ図録班で構成を23パターン用意し、また卒業生各自で構成することができるようにしました。

これによって構成の全体の流れとしての一体感は保ちつつも、
製作者一人ひとりに寄り添ったデザインにできると思っています。

grid_アートボード 1

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※グリッドシステム
レイアウトを格子状に分解して配置するデザイン手法 

3. 対談記事について

統合デザイン学科の良いところは様々なデザインの分野を横断するため、他学科よりも幅広いデザイン領域の先生方から学ぶことができるところにあると思います。

しかし、今現在の状況下においてはなかなか難しくなっているのが現実であり、私は卒業年度にあたるこの年に学びどころかコミュニケーションをとることさえ難しくなることが残念でなりませんでした。

私はそこで改めて卒業後に見返してこの学科にいた痕跡を残しておけないのかと考え、統合デザイン学科長である深澤直人先生との鼎談の企画「本質的なこと」を企画しました。

この記事は図録に収録されていますので、ぜひ購入していただいてお読みいただけたらと思っております。

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4.メイキング記事について

このnoteにて絶賛公開されております、卒展2021 Making Processは今回の図録にも掲載されております。

こちらもnoteと合わせて、どのように今年度の卒展が出来上がっていったのかをご確認いただけたら幸いです。

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5. 最後に

図録班の仕事は各自の卒業制作である作品の完成が見えるまで作業を進めることが困難であり、そのため、フォーマットの作成や構成する情報の取捨選択以外の本腰を入れての作業(学生各自の本文のデザインなど)の実働は1月20日より行われる卒業制作展から2月中旬までの1ヶ月間です。

その間に130人を超える学生の作品の写真の収集とレイアウトを行わなければなりません。

ですので図録班の仕事は展示が終わってからが本番となります。
これから全力で作業を行ってまいりますので、展示会期中での配布はできませんでしたが、購入していただいた方は3月中旬頃の図録の郵送までお待ちいただけたらと思います!

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この記事を見て少しでも図録が出来上がるまでのこだわりや意図を感じ取っていただけましたら本望です。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

また今年度図録はこちらのウェブサイトにて販売しております。
(現在は完売しております。)
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美術学部卒業制作展・大学院修了制作展Bの開催時期(3/13〜3/15)に合わせて、少数ですが再販売を予定しておりますので、追って卒展SNS等をチェックして頂けますと幸いです。
ぜひこの機会にお手に取ってご覧下さい!
(お届けは3月下旬になります。)

図録班統括
八子 智輝

デザイン・データ制作
畑楠 理森 八子 智輝

連絡
松尾 しい菜

メインビジュアル
山本 和幸 堀 聖悟




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