見出し画像

統合デザイン学科卒業生インタビュー#03西上真凪さん

西上真凪(にしがみ みなぎ)
オフィス家具メーカー勤務 プロダクトデザイナー
統合デザイン学科2期生 米山・米田プロジェクト出身

神奈川県の横須賀生まれ、現在は滋賀県に在住しています。在学時代はプロダクトデザインを軸に制作を進め、現在はオフィス家具の開発設計を主にしています。多趣味です。最近はキャンプと料理とゲームが趣味です。


ー統合デザイン学科ではどのようなことを学んでいましたか?

私は米山貴久・米田充彦プロジェクトに所属し、プロダクトデザインを中心に制作を進め、演習(*)は形体制作と映像表現を受講していました。

※デザイン演習
"3·4年次の専門課程では、全ての領域をつながった一つのデザインと捉え、各教員が社会に即したテーマをゼミ形式で行う「プロジェクト」を通じて統合的なデザインを実践します。さらに組み合わせを選択できるデザイン演習により、個々に必要とするスキルをより深く学んでいきます。"
引用:統合デザイン学科|受験生サイト 多摩美術大学

プロジェクトでは問題や気づきを自ら発見し、表面的ではなく本質的な部分を捉える”そもそもソレは何なの?”という大切な考え方を学び、そこから導き出された本質をアイデアに展開し、形に落とし込んだり、それを取り巻くサービスやプロモーションも含め、初めから終わりまでの流れを模索し、演習ではRhinocerosやCINEMA4D、After Effectsといったツールを使い、自分のできる表現の質を高める学びを得ることができました。

1.2年次で学んだ横断的なデザインの学びは、どれも大切で、自分の力になるカリキュラムだったと今でも実感しています。


ー卒業後、現在はどのようなことをされていますか?
 今後はどのようなことをやっていきたいですか?

主な仕事として、株式会社イトーキというオフィス家具メーカーに入社し、椅子の開発と設計を行っています。プロダクトデザイナーとして入社しましたが「製品のデザインをする上で、構造等を理解しないといけない」との事で、開発設計に努めています。

製品の品質改善や原価低減に関するテーマを通じて、構造や材質、モノの作り方などを学んでおり、最近では柴田文江氏がデザインを手がけた『vertebra03』の設計に携わっていたり、その他の仕事としては、石黒賢一郎氏の作品『INJECTION DEVICE』『GURUA BIPEDA』などの制作補助、某企業のバナーや広告動画の作成等をしています。

今後、椅子の開発やデザインは勿論ですが、自主制作も兼ねて、趣味で使う道具や、日々の生活で使うモノを制作していきたいです。


ーどのように進路を決めましたか?

そもそも小さい頃から「営業や事務といった一般的なサラリーマンの仕事は好みじゃないなぁ」という気持ちがありました。

その後も気持ちは変わらず、製品のデザイナーって格好いいな…という漠然とした想いで美術大学に入学。就活までの3年間の学生生活を過ごす中で、モノとして形に残るデザインの魅力に改めて惹かれ、プロダクトデザイナーになりたいと決意しました。


ー在学中に制作した課題や作品について紹介してください。

変わりゆく文字盤を楽しむ時計
『SUN』

形体制作の課題で制作した【時計】が特に印象に残っています。

大学1.2年次では【ドライヤー】や【傘の柄】などの決められたモチーフがありましたが、この課題に着手した3年次の後期までは【つかむ】や【はかる】などの漠然としたテーマの課題をこなすことが多く、久しぶりに皆で同じテーマをやるのが楽しかったです。

私は機械という”正確”なモノに、自然の”不規則”な現象を組み合わせる事で、独特な変化や、面白い表現ができるのではないかと思い”変わりゆく文字盤を楽しむ時計”として『SUN』を制作しました。

それぞれが違うプロジェクトに進んだ皆が作る課題として、その人の考え方や個性が見えた課題でした。


ー卒制で制作した作品と、それに至った経緯についてお聞きしたいです。

自然の中で過ごす豊かな時間
『PLAIN / PEDESTAL』

画像2


友人との何気ない会話がきっかけでした。

「海にはあまり行かないし、自然に興味がない」
「例えば海だと、泳ぐ以外の想像がつかなし、行くことに準備と覚悟がいる」

この言葉に私は衝撃を受けました。

幼い頃から海と山に囲まれて育った私の日常には、静かな夕暮れの海岸線や、動植物のいる森や川辺など、そういった自然の中で過ごす魅力的な時間があったからです。
あの魅力を友人に伝えようと、少しの食べ物とお酒を持ち寄り、夕方の海岸に連れていきました。彼はこういった体験は初めてだったらしく「こういうのって何かいいな」と話していました。

この経験を踏まえ、自分が経験してきた”自然の中で過ごす豊かな時間”を、気軽かつ満喫するためのプロダクトを提案することで、少しでも多くの人に魅力が伝わればと考えました。

“隆起的な場所でも、地面に打ち込みことで平面を作り出せることのできる机”
“バックであると同時に、地形に関係なく座ることのできるクッション椅子”
“持ってきたものを広げ、脚を伸ばし、心地の良い空間を作り出すための敷物”

私はこれら3つのプロダクトをデザインし、1つのパッケージとして提案しました。

画像2

既存のアウトドアファニチャーの分析、現代のニーズや思想から、より自然を感じるための要素とは何かを模索しました。
また、自然の中で扱うものとして、自然に与える影響を考えるべきと考え、いつかは自然に還る材質の検討や、ヒューマンエラーの起きないようなあり方を探求し、素材の想定や造形に落とし込みました。


ー卒制、卒展をやってどのようなことを感じましたか?

感じた上で伝えたいことは”最後だから尚更妥協せず、好きな表現をして、後悔ないようにして欲しい”ということです。

私は”統合デザイン学科”として得た学びを、どう表現するかを考え構成を決めました。欲張りかもしれませんが、自身のテーマをより深く伝える為の手段として、webや映像、ポスターの作成、展示空間の設計を行いました。
そのおかげか、先輩から「いい意味で”統合らしい”展示で本当に良かったよ」と言われて、嬉しかったのを覚えています。

画像4

また私は、使用時の雰囲気を演出したいが為に、浜辺から砂や流木を運んで、床にぶちまけました。これくらいか、更にもっと好きにやっていいと思います。(海藻は匂いが強いので取り除くことをオススメします)

画像5

もう一つ感じたことは、卒制展をする上で、本当にたくさんの人々に助けていただいたことです。
制作から展示空間の設営、初めから終わりまで、様々な相談や無茶に乗っていただいたり、一緒に汗を流してくれたりと、感謝しきれません。
限られた時間では限界があり、より良いモノにする為には、1人だと難しいと強く感じました。


ー統合デザイン学科で学生生活を送って感じたことを教えてください。

本当に楽しかったです!本当に!

あの場にいた全員が”モノ作り”にエネルギーを注いでいたので、制作を進める上で、あれ以上に魅力的で刺激的な場は無いと思っています。
友人であると共に、みんながライバルだったので、お互いに高め合う環境でした。

振り返って特に感じたことは、様々なデザインの分野を横断的に学べて良かったということです。モノのデザイン系がやりたいと漠然とした気持ちで入学したので、さまざまな分野を学べたことは新鮮で、自分のやれる幅が広がった様に感じました。
さらに言うならば、"少しだけでも知ってる"ということが大事だと思っています。モノを作ったとしても、それをプロモーションするグラフィックやwebなどが必ず付随します。そういった分野を少しでも知っていると、全体のクオリティに繋がっていくと思うので、横断的に学んだことは大事にしていきたいです。

また、同級生は勿論ですが、先輩や後輩、先生方や研究室の方々とも、楽しい時間を過ごさせていただきました。卒業後の今でも交友関係や繋がりは切れることなく、本当に有難いと感じています。

今後も統合デザイン学科で学んだ経験やスキル、交友関係を大切にしていきたいです。

(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和)


次回の統合デザイン学科卒業生インタビューは…!

自分をさらけ出していきたい!
ほし あさひ
映像制作会社勤務 プランナー
統合デザイン学科2期生 永井一史・岡室健プロジェクト所属

ユニークだったり、思わず笑ってしまうような作品が自分に合っているかもと気づき、コミカルな要素が多い作品を作るようになっていったというほしさん。卒業制作期間中は、髪の毛が墨汁まみれの状態で構内を練り歩き、後輩から見て見ぬ振りをされていたといいますが、ほしさんの作った作品とは一体…!?
卒業生インタビュー第4弾は明日公開です!乞うご期待!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?