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2023年西表島〜前編〜

まえがき

 昨年の西表島遠征から早1年。ヘッドライトの先に映る"八重山の紅玉"の魅力にすっかりハマってしまい、2度目の採集遠征を計画した。

 西表島が世界自然遺産に登録されてから早2年、同島エコツーリズム推進全体構想で定められた、島内5ヶ所の特定自然観光資源の立入規制が実施されるにあたり、自由にやれるのは今年が確実に最後らしいとの事を聞いたので、前回は4日間しか行けなかったので、学部生最後の年くらいは思い切りやりたいと思い、今回一緒に苦楽を共にする友人(以降I)と話し合い、8泊9日に日程を決めた。昨年と同じように、西表に発つ前に、8日間不休で動くための体づくりをした。

〜前夜〜

 西表入り前日、朝一番の飛行機に乗るためにIと空港で待ち合わせをし、そのままロビーで仮眠をとった。隣にいたカップルの男のイキリチキンレッグトレーニーが、周りにも寝ている人がいるにも関わらず「ウウェイ、ウウェイ」とか言いながら腕立て伏せを始めたので、熟睡することなく朝を迎えてしまった。

〜1日目〜

 翌朝、昨年と同様朝一の便で石垣に飛び立った。これもまた昨年と同様に、出発前は雨が降っていたが、離陸してからしばらく経つと晴天が私達を迎えてくれた。離陸から数時間後、石垣島に到着。懐かしのエントランスホールが迎えてくれた。

このエントランスホールを見るのは2回目。あと何回この玄関口を見れるのか、そう思い石垣離島ターミナルへ向かうバス停へ向かった。離島ターミナルに着いたら、乗る予定のフェリーの時刻が来るまでお土産を物色し、昼ご飯を食べた。なんだかんだフェリーを待つ間は暇で、近くに座っていたチョウ屋の人と話したり、具志堅さんの銅像の写真を撮ったりして時間潰しをした。

1年振りのソーキそば
具志堅さんの銅像

 ようやくフェリーの時間が来たので、船に乗り込んだ。船に揺られること50分、西表島に到着。大原港の船着場に足を踏み入れるなり、自然と「ただいま」と声が出た。1年振りの西表。今回はどんなドラマを生むのか、期待で胸が躍った。

レンタカーを借り、宿にチェックイン。今回は予約の都合上、1つの宿にずっと泊まることができなかったので、3つの宿を転々とする事にした。部屋に案内されたらすぐさま荷物の整理と山に入る準備をした。

さあ、今年も始まる。怪我だけはしないようにと、気を引き締めてポイントへ向かった。

 初日は午前中に先に西表入りをしていた友人(以降I先輩)が合流し、私のチームとI先輩の計3人でポイントを回る事にした。I先輩は西表5年目の頼れる先輩である。辺りが薄暗くなってきたタイミングで入山。久々に聴く虫の声やカエルの鳴き声、全てが懐かしく、帰ってきたんだなと更に実感した。

ポイントまでほぼ直登で登っていく。いい感じの大径木は沢山あるが、ヤエマルの姿は見当たらない。ポイントに着いてから大体1時間後、赤枯れが崩れたスダジイを見ると

2023年シーズン初のヤエマル

漸く1匹目を発見。「今年もまた出会えたね。」とひとまず安堵。しかし、その日見たマルバネはこの1匹が最後となってしまった。時間いっぱいやるが、追加できたのはサキシマヒラタの小さいオスのみ。初年度の1日目と比べて大分情けない結果になってしまった。

地上5メートル付近に張り付いていた

どうやら今年は発生が遅れているらしかった。後日談ではあるが、マルバネ界隈で名前を知らない人はいないであろう某有名な方でさえ、坊主の日があったとか。事前に予定していた日程は、発生が遅れている関係で全てお釈迦になってしまったので、明日入るポイントの作戦会議をしながら宿へ戻った。

〜2日目〜

 2日目はお昼頃から行動を開始した。チャマルはどうやらまだ本発生していないようだったので、新規開拓の為の下見をしに行くことにした。

事前に入りたいエリアを、地形図と航空写真を照らし合わせ、60箇所程度絞っておいたので、その中から今日はここと決めたら、明るいうちに入山。現地で実際に環境を見定め、暗くなるまで待機をした。昨日のような結果にはなるまいと、いつも以上に気合を入れて挑んだ。

捜索開始から30分後、早速1匹目を発見。とりあえずいてよかった。

この子は小歯だったのでそのままスルー。いることが分かったら、理想の個体を求めて奥へ奥へと進んでいく。数は見るが、持ち帰りは中歯、そしてメス1匹ずつ止まり。中々に厳しい結果であった。

捜索開始から3時間後、ようやく大歯っぽい陰を同じ木で2匹見つけた。1匹は斜面側に突き出した煙突から、もう1匹は6メートルほど上のウロにいた。

斜面側の方は網を使って、ウロ側の方は木を登って採りにいった。幸いにも、ツルアダンが沢山巻き付いていた木だったので、体重のせいで木登りが不得意な私でも登りやすかった。

高さよりもヤマンギの方が怖かった

2匹とも回収してから大顎を確認。しかし、どちらも大歯になりきれなかった半端者のイボ大歯であった。この2匹はどちらも喧嘩傷があったので、近くにこいつらを倒した大きい個体がいるかもしれないと思い探したが、そいつを見つけることは叶わなかった。この2匹を最後に、2日目は終了した。

顎先欠けイボ大歯
ボコボコにやられたイボ大歯

〜3日目〜

 2日目の採集は結局2時半頃まで山の中にいたので、3日目も午前中に起きれず昼まで寝てしまった。チャマル採集がどうもやる気が起きず、また後回しに。3日目はちょっと休憩を挟みたかったので、昨年大歯を採ったポイントへ行くことにした。

昨年の採集記はこちら↓

入山してから10分後、他の採集者の方とお会いし、立ち話をしつつ情報交換をした。その方と別れてから10分後、昨年激中歯に逃げられた木を見つけた。

Iに「この木は去年あそこのウロに激中歯が逃げ込んで採れなかった木なんだよね〜。笑」と思い出話をし、なんとなくその木の根本の裏をチェックすると

私「あ、いた。」

I「まじ?」

(大顎をよく見ると...)

私「え?!大歯!!!」

I「嘘でしょ!?」

2023年度初大歯 60.0 mm

なんと大歯が付いていた。どうやら昨年の激中歯が大歯になって返ってきたらしい。やっと大歯に出会えたからか、アドレナリンが爆発。

お散歩採集の予定ではあったが、予定を変更しそのエリアのさらに奥へ新規開拓へ。リュウキュウマツが沢山生えているエリアへ入った時、ふとリュウキュウマツの倒木を見ると

そこそこカッコいい中歯が付いていた。まだ小歯を見ていなかったこともあり、今夜は結構いい成績になるのでは?と期待をして奥へ進んだ。

 斜面を降りていき、奥のエリアに続いているであろう尾根筋を探した。奥のエリアは結構キツい斜面、細めの尾根が続いており、さっきまでの環境とは全く違う世界が広がっていた。尾根伝いに進んでいくが、途中で歩けそうな尾根がなくなってしまった。一度下に降りてからまた尾根を登る作戦に変え、ちょっとした崖部分に辛うじて降りれそうな場所があったので、その崖を降り谷筋から河方面へ降りた。

しばらく川沿いを歩くが中々登れそうな斜面が現れない。場所選びに苦戦し、中々次の個体に出会えない。ようやく尾根を見つけたので、キツい斜面を登っていく。いい感じのスダジイは見つかるが、全然いない。上がれるところまで上がった時、Iがフレーク上に出ていたヤエヤマネブトのメスを見つけた。オスはいるかなと、表面の土を手で少しだけ退かすと、ネブトではなくヤエマルの幼虫が出てきた。一応このエリアも発生木に成虫が付いていないだけで、いることは分かったので、対面の尾根に行くために尾根伝いを歩いた。対面の尾根筋もいい木は見つかるが、付いていない。結局その日は大歯1、中歯1の結果となってしまった。

その日は帰りの車の中、そして寝る前に反省会をし、次に繋げるためのデータを整理してから就寝した。

To be continued.

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