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2022年西表島
マルバネクワガタに憧れを抱いたのは、クワガタ好きとしては遅く大学生になってからだった。
当時はそこまで採集に興味はなかったが、オオクワガタを初めて採りに行って、いきなり大歯を採集できたことから採集にどっぷりハマってしまい、そんな時に誰かの投稿したマルバネクワガタのツイートを見て「こんなかっこいいクワガタを採りたい」と思ったのがきっかけだった。
マルバネクワガタは毎年"今年が最後説"が多く、2022年の採集は確実に最後だと聞いたので、急いで飛行機のチケットを買って、宿、レンタカーを予約した。
ある時友人との話の中で、あの島は簡単に死ねる場所だということを言われ、「まじか。。」と思い万全の準備をしようとジムで脚トレ、体力作りを行なった。
いよいよ来た本番の時。朝一番の便で石垣へ向かうため、空港のロビーの椅子で前泊をするというあたおかムーブをする。段々採集屋っぽくなってきたかも?と頭の中で考えながら眠りについた(寒さと寝心地の悪さで何度も目を覚ますという。)。
アラームの音で目を覚まし、搭乗手続きを行い飛行機に乗り込んだ(飛行機までバスで移動したのですが、某店のしゃちょさんが目の前にいてびっくりしたのを覚えている。)。
雨の中離陸。幸先不安になる天気だな、、と思いながら、やることもなかったのでボーッと外の景色を眺めていると
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天気がガラリと変わり目の前には碧い空、大海原のような雲海。息を呑むほど美しい景色に感動していると、もう到着。
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初めての石垣。本土と比べて暑い。南の島だから当たり前か。笑
別の便で来る友人を待ちながら、ソーキそばを食べる。修学旅行振りのソーキそばは絶品だった。
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待つ事2時間、友人が到着したので、いざ西表へ。
石垣空港からカリー観光の石垣離島ターミナル直通バスに乗るのが一番楽ちんである。
離島ターミナルに着き、フェリーのチケットを購入、そして乗船。
船に揺られること30分。遂に西表へやってきた。西表が見えた瞬間、胸が高鳴ったのを覚えている(友人は船酔いのため隣でダウン。笑)。
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島に上陸したらレンタカーを借り、宿へ。
宿に着くなりすぐ山へ行く準備をして、明るいうちにポイントへ入る。明るいうちにどういう環境なのか確かめて、少しでも不安と恐怖をかき消すようにした。「初心者は長い期間いても採れない人は採れない、採れても2,3匹程度。」と西表へ行く前に友人に言われ、不安で仕方なかった。ハブも怖い、GPSは持ってるけど、遭難も怖い。でもここまで来たらやるしかない。
そんな事を考えているうちに、夜が更けた。さあ始まる、マルバネ採集が。
まだはっきりとイメージのなかった、スダジイのフレークが溜まった巨木を探す。いい感じの木は見つけるが、マルバネは付いていない。
行く前に友人が言っていたことが現実になろうとしているのか?というような事が頭の片隅によぎりながらも、探し続ける。
同行していた友人はパッと見てすぐ次の木に行ってしまうが、私はじっくりと見るタイプなので細かく見て行った。
探し始めて30分。赤枯れた倒木が傍にあるスダジイが目に入った。友人はやはりパッと見て移動する。私はそんな友人をそっちのけで、じっくりと時間をかけて見ていた。すると中々移動しなかった私の方へ友人が戻ってきた。
するとほぼ同時に
「うわっいた!!!×2」
懐中電灯の灯りの先に、ワインレッドに輝く小歯が。ほぼ同時に見つけたので、じゃんけんをすることに。そして見事に負け、初マルバネは友人の元へ。涙
なんとなくいるイメージが分かったので、切り替えてどんどん森の奥へ。
良さそうな木が目に入る。すると
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探し始めて1時間。やっとこの手に取る事ができた。とりあえず2人とも坊主を回避できたのでよかった。
写真を撮り、座標の記録をしたらまた次の木を探しに動く。マルバネ採集という感じがしてきた。
10分後くらいに物凄くいい木を見つけた。私は左回り、友人は右回りで見に行った。
友人「いないわ〜」
私「いなかったっすか、俺の方は、、、ん!!?大歯!!?てか3匹付いてる!!」
友人「うそん!?」
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♂2, ♀1。マルバネのマの字も知らなかった私にとっては、めっちゃくっ付いてると思った。笑
歯型が遠目だと大歯に見えたけど、近くで見たら内歯が残っているイボ大歯で、少し残念だった。これは大歯が採れると思って、どんどん探しに行く。しばらく探した後に、またイボ大歯が付いていた木を見に行った。
すると今度は不発だった右側から友人の声が。
友人「うわっ、大歯やん!!!」
私「うそん!?」
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やばい。かっこいい。そして羨ましい。。まだ近くに他の個体もいるはずと思い、振り返るとメスがいた、お前じゃねぇ。涙
結局その日は全体で8匹見れた。マルバネビギナーにしては出会えた方かな?など考えながら宿に戻った。
私達が行っていた日程では、かなりの雨が毎晩のように降っており、精神的にも体力的にも削られる採集だった。
2,3日目も特にこれといった大きい個体の収穫はなく、激中歯と中歯のみの持ち帰り。
2日目には激中歯をスダジイの中部のウロのフレーク溜まりに見つけるも、ウロ内に逃げられ登って採ろうと頑張ったが、深い闇に消えてしまった。
3日目には林内でも暴風雨とわかるくらいの雨に降られ、採集どころではなく生きて森を出ることに必死だった。笑
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それにしてもマルバネは小歯が多い。初日に大歯が採れたのは奇跡なのか?俺は大歯を採ることができずにマルバネ人生が終わるのか??
最終日前夜、焦りが出てきたが、明日(正確には今日の夜)の為にしっかりと休もう。そう思い、目を閉じたのであった。
ついに迎えた最終日。なんとしても初年度大歯を採る為に、これまでにないくらいに気合を入れ、山に入った。
コツを掴んだのか、数は見れる。中歯までならそこそこ採れたが、中々大歯が現れない。
ふと目に入った木の裏を見ると、大きな影が。
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大顎を見るも大歯ではない。サイズは大きいのに、見事中歯の形のままで少し残念。ここまで大きいなら激中歯でも良くないか??そんな事を思い、また闇の中を進む。
いっぱい見れた勢いが収まり、連日の山登りでの疲労が出てきた。そのエリアをほとんど見尽くしたため、最後ここの山だけ見に行こうと、友人と話し合い、最後の勝負に出る。
ふと上を見上げると、小歯が。さっきまでラッシュの勢いはもう無くなってしまった。次のラッシュは起こるのか?そんな事を考えているうちに、どんどんモチベーションが下がっていく。
小歯を見つけてから5分後くらいに、リュウキュウマツの立ち枯れと倒木を見つけた。友人は「倒木の方を見に行くよ。」と下へ行った。
私は正直疲れて見る気が起きなかったが、力を振り絞って上の立ち枯れを見に行った。
大きいお尻が見えた。お尻だけで分かる。
私「大歯!!!」
友人「まじで?!」
友人がこちらに駆け寄ってくる。頭隠して尻隠さず状態だったので、大顎が見えない。緊張と興奮している状態で、ゆっくりと木から引き離す。大顎はどうだ?大歯か?イボ大歯か?それとも激中歯か???
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私「大歯だ!やばい!やばい!!!」
友人「おおおおお!!」
最終日の最後の個体が大歯。小さいけれども、大歯というだけで別格である。これまでの疲れが一気に吹っ飛び、有終の美で最終日を終えられた。
山を降りながら友人がこう言った。
友人「ドラマみたいな最後を終えたなぁ〜。」
確かに、最終日はドラマみたいだった。
宿に戻るなり、優勝してから飲もうと思っていたオリオンビールを飲んだ。結果を出して飲むビールは最高に美味い。マルバネとビールは最高に合う。
そんな事を思いながら、これまでの軌跡を友人と振り返り、西表で過ごす最後の夜を楽しんだ。
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翌朝、港へ帰りながら西表の景色を楽しんだ。午前中だからか、島に差す光がとても綺麗で、西表の自然の雄大さに感動した。
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港に着き、フェリーに乗る。あっという間の4日間だった。段々と小さくなっていく西表の姿を、その形が見えなくなるまで見続けた。
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「ありがとう西表。またいつか。」
そう心の中で呟き、帰路へ着いた。
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