鏡の中の魔女
子供も大きくなり少し怖い話に興味を持ち始めた頃に創った短編創作童話集の中の1つです。
内容は毎回即興で子供に話しながら考えるのですが、トラウマになり鏡嫌いになってしまっても困るので怖さレベルを調節しながら話すのが難しかった記憶があります。
それで第二話
鏡の中の魔女
はじまりはじまり~!
大好きなお母さんがいなくなり明日でもう3年になる。
僕が9歳の時に不治の病で天国に行ってしまった。
僕は生前母が毎日使っていた手鏡を形見として貰い、そしてその手鏡を母の事を想いながら毎日眺めていた。
そんなある日、不思議なことが起こった。
いつものように手鏡を眺めていると、鏡の中に僕と同い歳位の少女が映し出されていた。
僕は驚いて周りを見渡したが誰もいない、間違いなく鏡の中に少女がいたのだ。
そしてその少女は驚いている僕に淡々と語りかけてきた。
私の名前はエミリー、私もあなたのように毎日鏡を眺めていたの。
しかし3年経ったある日、鏡の世界に住む嘘つきで悪い魔女にそそのかされ、鏡の世界に来てしまい出られなくなってしまったの…
鏡の世界は喜びも悲しみもない無の世界。
明日あなたの手鏡の中に嘘つきで悪い魔女が現れるわ。そしてあなたをそそのかし鏡の世界に引き入れようとしてくるでしょう。
あなたにはこの鏡の世界に来て欲しくないの、これから私の言う事をよく聞いて!
そうすればあなたもそして私も助かるの。
僕はいったいどうすればいいんだい?
魔女はあなたに3つの質問をしてくるわ、そうしたら正直に答えるの。
しかし最後の質問だけ「はい」と答えてはいけない、そのまま鏡の世界に吸い込まれてしまうわ。
絶対に「いいえ」と答えて!
すると魔女はほんの一瞬だけあなたがいる現実世界に姿を現すはず。
その時に思いっきり手鏡を叩き割るのよ。
あなたの大事な宝物かもしれないけれど魔女を倒すにはその方法しか無いの…
お願い…お願い…
そう言って少女は鏡の中から姿を消した。
母が亡くなってちょうど3年になった。
いつものように手鏡を眺めていると、鏡の中にニッコリと微笑んでいる見知らぬおばぁさんが映し出されていた。
そして僕にこう語りかけてきた。
驚かなくてもいいんだよ、私は天国のように素晴らしい鏡の世界の住人。
毎日毎日お母さんを想いながら鏡を眺めているあなたの事を、なんて母親想いのいい子なのだろうと感心していたの。
あなたにこれから3つの質問をするわ。
正直に答えたらまたお母さんに会うことができるわよ。
この優しそうなおばぁさんが昨日エミリーが言っていた魔女なのだろうか?
わからない、だけどもう一度お母さんに会う事ができるのなら…
おばぁさんはニッコリ微笑みながら質問を始めた。
あなたはお母さんの事が今でも大好きかい?
僕は当然「はい」と答えた。
そうだろうそうだろう。
またお母さんに会いたいかい?
僕は当然これも「はい」と答えた。
そうだろうそうだろう。
最後の質問、鏡の世界にいるお母さんの所へ行きたいかい?
お母さんにまた会えるのなら会いたいに決まっている。
でもお母さんは、鏡の世界ではなく本当の天国に行ったんだ!!!
僕はエミリーの言った通りに「いいえ」と答えた。
すると今までニコニコと優しそうなおばぁちゃんが突然恐ろしい魔女の姿に変わりこう叫んだ。
なぜ最後の質問に「いいえ」と答えた!
「はい」と答えたら難なくオマエを鏡の世界へ吸い込めたのに!
こうなった力ずくにでもオマエを鏡の世界へ引きずり込んでやる!!
鏡の中から魔女の手が伸びてきて僕の腕を鷲掴みにした。
僕は「お母さんごめんね!」と言いながら力いっぱい手鏡を壁に投げつけ叩き割った。
ぎゃぁぁ〜〜〜!!!
断末魔が響き渡り魔女は消えた。
手鏡を手に取ってみると確かに割れたはずの鏡が元のキレイな鏡のまま。
そしてその鏡の中にはエミリーが映っていた。
ありがとう、もう二度と魔女が現れる事はないでしょう、これで私も現実の世界に戻りお父さんに会うことができるわ…
そう言うとすっと姿を消した。
それからも僕は毎日手鏡を眺めている。お母さんを想いながら、そしてエミリーが無事お父さんに会えたのかを気にしながら。
おわり
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