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いつかまた会いたい

きっと会えないとわかっているけど、ワタシには会いたいヒトがいる。アキちゃんだ。

アキちゃんと一緒に過ごしたのは小学3年生〜4年生の2学期の終わりまで。父の転勤で近くに住んでた期間のあいだだけだった。しかもアキちゃんは3年生の頃は月に数回しか学校にきてなくて、4年生から少し長く同じ教室で過ごすようになったと思うのだけど、はっきり正確には覚えていない。だから、いっしょに過ごした時間は、住んでいた時間よりだいぶ少ないと思う。

3年生の2学期。ワタシは人生で初めてクラスの3人くらいをのぞく全員にイジメられた。転校生の洗礼を初めて経験した。毎日学校が辛かった。社宅のある家まではそんなに遠くないけど、いつも帰り道はひとりで空や花や木を眺めたり話しかけたりしていた。

何ヶ月かしたある日。ワタシは終わりの会で勇気を出してイジメられていることを担任の先生の前で話した。優しい子にこっそり先生に言うように促されたり、家でも我慢できず泣くようになっていて、このままじゃだめだと思ったんだと思う。すると先生はワタシをイジメたヒトは立ちなさいと大声をあげた。クラスの中で3人をのぞく全員が席を立った。ワタシの班の人はもちろん全員立っていた。その日の放課後、先生と班のヒトたちと残ったのは覚えてるけど何を話したかは覚えてない。

よく覚えているのは、次の学級会の議題がなぜワタシをイジメたのかだったことと、たくさんワタシのダメなところをあげられてイジメられたワタシが悪かったのだと思わされたこと。学級委員が進行して黒板にどんどんワタシの嫌なところイジメた理由が書かれていく。今思えば、目つきが悪いとか睨んでくると言われたのはイジメられていたからだとも思えるが、ジブンのせいでイジメられ、席に戻ったら机の上にカマキリのつぶれた死骸が置かれていたり、何人かのヒトに床を踏みつけながらワタシの机の周りをぐるぐる回ってココの床汚いのうと言われみんなに笑われ続けたりしたと思うとツラかった。

その日から、鏡でジブンの睨んでいる顔をみたり、どういう顔をすればいいのか練習を始めた。いまとなっては感謝している面もあるが、もしいま同じようにイジメられてる子がいたら同じ経験はさせたくはない。

そんな日々の中で学校に時々くるアキちゃんはワタシのヒーロー(ヒロイン)だった。カノジョは耳が不自由で聾学校にいつも通い、普通学級に入る練習で時々学校にきている同じクラスの女の子。手話もできて、補聴器でわずかに聞こえる音を頼りに発話し、読唇術もできる。コトバはみんなと同じようにハキハキ話せるわけではないが、伝わるように話せる。教室で発言しているヒトが何を言っているかわからないときは先生でも臆せず口をしっかり開けてアキちゃんの方をみて話して欲しいとはっきり伝える。イジメられジブンのせいだと思ってからオドオドしていたワタシにはカノジョは本当にすごく年上にみえたしカッコ良かった。あと、ワタシは左目だけが弱視なのがコンプレックスで身体測定と称してみんなの前で毎回右目2.0左目は0.1を披露するのが嫌だった。でもアキちゃんをみてたらいっしょにがんばろうと思えた。

4年生になり普通教室に通うのが増えたアキちゃんと気づいたら仲良くなっていた。手話を少し教えてもらったり、じつはとても近所に住んでいたアキちゃん家でカノジョのお姉さんの帰りを待ちながらアニメを観たり。ただそばにいるだけでココロが通じてる気がしたし、穏やかな時間が過ぎて、いつもいっしょにニコニコしていた気がする。

そんなアキちゃんは時々周りに困っているのが伝わらなくて大変そうだったけれど、カノジョは笑顔の時間の方が多かった。すごいなっていつも思ってた。

ワタシは本当にアキちゃんがだいすきだった。強くて優しいアキちゃん。

でも転勤族の子だったワタシには突然の引っ越しがまたやってきた。まだ幼いワタシ達には連絡を取り合うこともできなかった。それっきりアキちゃんには会ってない。

引っ越し先で、いちどだけアキちゃんのお姉ちゃんから電話がかかってきたことがあった。じつは、アキちゃんがお世話になっていた聾学校がワタシの新しい社宅から近く、アキちゃんがワタシに会いたがっているから来れないかというものだった。その日たぶん母に相談したが、近いとはいえ車を運転しない母に突然連れて行ってもらえるはずもなく、会えないままになったことを今でも悔やんでいる。ワタシが引っ越したあとのアキちゃんのことをワタシは全く想像していなかったし、新しい学校で今度こそ生まれ変わるくらいの気持ちで必死に過ごし、ツライこともありながら前を向くのがやっとだったのだ。アキちゃんのお姉ちゃんからの電話を切ったあと、アキちゃんがどんなにワタシに会いたいと思ってくれていたかに気づいた。考えると今でも胸がイタイ。あの時なぜ、もっとワタシたちの縁が続いていけるような選択をしなかったのかと今でも思う。

いつかアキちゃんに会えたなら、またいっしょにてをつないで笑顔でただ穏やかにぼーっとしたり、お互いのコトをたくさん話したい。アキちゃんがおなじ空の下で穏やかに健やかに毎日を送っていますように。はなれてしまってごめんね。会いたいよ。アキちゃん。会ってありがとうを伝えたい。いっしょに居てくれてありがとう。出会えてありがとう。勇気をくれてありがとう。だいすき。

ワタシのアキちゃんへのラブレターを読んでくださって、ありがとうございました。みなさんが会いたい人にも思いが届きますように…。

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