独裁者にはチビが多い訳
飛行機で映画「J・エドガー」を観た。FBI長官として50年近く君臨したフーバー長官をレオナルド・ディカプリオが演じた。映画として成功作ではないが、監督のクリント・イーストウッドが、盗聴によって得た情報でこの特殊警察を作り上げていった男の人格形成に焦点を当てていたのが興味深かった。
生涯独身で母親と住み続けたフーバーが、副長官トルソンと同性愛の関係にあったことは、いまや周知の事実と言ってよいが、映画では、ジュディ・ディンチ演じる強烈な母親の指導によって、ダンスの踊り方まで教えられた究極のマザコンであること、背が低く学歴の高い人間に強いコンプレックスを持っていたことが描かれていた。権力志向の人にチビが多いのはよく指摘されることである(完全なマザコンだったヒトラーもそう低いわけではないが、身長の高さにこだわった)。
こうしたフーバーの最初の標的が、リトアニア生まれのアナキスト、エマ・ゴールドマンであることも描かれていた。フーバーが思想活動によって最初に国外退去した人物であり、自由恋愛の闘士でもあり、幸徳事件にクレームをして日本政府を慌てさせ、大杉栄の愛人で一緒に惨殺された伊藤野枝らが憧れた人物でもある。思想戦と「性」は親和性が高い(つづく)
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