僕とアクセル
アクセルっていうのは
保健所からもらってきた白い雑種犬なんだ
錆びた檻の中に詰め込まれている犬たちに驚いた
彼らは皆んな助けを求めていた
吠えて吠えてとびついてくるのだから
でも
アクセルは
ちっこくて汚れていて
いちばん奥の隅っこでびくびく震えていた
そんな彼に
僕は一目惚れしたんだ
*
僕の日課は海で泳ぐことだ
けれど
今日はアクセルも一緒に泳いでいる
初泳ぎ
懸命な
犬かき
ここは潮の流れが速いから流されるアクセル
僕の顔を引っ掻きやがったけど
なんでか? うれしかった
アクセル
これが海だよ
まあるい空があるよ
*
土砂降りの日
足が棒になったウェイターのアルバイトが終わって
おんぼろのスクーターで家の前に着くと
放し飼いのアクセルが尻尾を振って
とびついてきた
ズボンからシャツから靴まで泥まみれになってしまった
午前零時をとっくに過ぎてて
ちょうど雨も上がり
堕ちてきそうな星だらけだ
家の前の原っぱで
アクセルと遊んでたら
もう僕に疲れなんかまったくなかった
*
もう
アクセルはいないけれど
あの島での
いちばん
かけがいのない
思い出
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