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4年制薬学部:学生は資格も取れなければ、創薬研究者にもなれない

私は医学部と薬学部の両方を卒業し、医師と薬剤師の両方の免許を持っている。

そして、医学部は入試も教育もクソゲーだが、いちおう、建前と中身は一貫しているのに対して、薬学部は建前と中身がネジレていて、しかし、関係者全員がその事実を隠している、あるいは気づかないふりをしていることに強い不満を持っている。

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昭和薬科大学教授だった林一氏の上記の本を読んでもらえば、ほぼ私の言わんとするところはわかるのだが、20年も前の本をいまさら買って読む人もいないだろうから、要約しよう。

  1. 薬学部は薬剤師を養成する学科だと世間では思われているが、それは建前なのであり、実態は理学部を相似縮小したような基礎科学学科である。物理学、化学、生物学などがゴチャゴチャ混ざっている。決して、薬志向ではない。

  2. ところが、薬学部では薬に関係する教育や研究をしていることにしないと、研究費の配分でも、学生募集でも不利益を受けるから、シラバスにも論文にも、薬に関係したことをやっているという無理筋のアピールがされている。
    例:
    教室紹介|東京大学大学院 薬学系研究科・薬学部 (u-tokyo.ac.jp)
    タンパク質の三次元構造を解明するX線解析による構造生物学
    X線結晶構造解析によるタンパク質,核酸などの構造と機能
    核内タンパク質の構造生物学
    相同組換えに関わるタンパク質の構造生物学的解析
    自然免疫に関与する蛋白質の構造生物学的研究

  3. 薬剤師教育は存在しない。専門技能も知識もない人たちに、免許だけ与えて、病院や薬局で、医療に貢献しろというのはクソゲーである。

  4. ハサミで薬のシートを切ることが薬剤師業務「調剤」となっていて、大学教育はスポイルされている。

ところが、2006年から、薬学部が、4年制(研究系)と6年制(薬剤師系)とに分離されたために、この問題がさらに悪化している。

6年制薬学部は薬剤師資格を独占しているから、医学部のような体裁を取れるのだが、4年制薬学部は、意味不明の学科になってしまった。

免許が取れない4年制薬学部では、理学部と同様、研究者養成をするしかないのだが、ほとんど誰も創薬研究者になんてなれないのだ。


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