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地域分析の基礎 第5回 とにかくいろいろデータを見たい! RESASの便利機能を使いこなす

 これまで、地域分析をする前の準備について説明をしてきました。もちろん分析の前に問題意識を持っていた方が、分析のターゲット絞り結果も明確になりやすいので望ましいです。ですが、逆に、ふとしたことでデータを見ると思いがけない実態が見えた、ということもあるかもしれません。これも、分析の楽しさ言えるでしょう。そこで、今回は趣向を変えて、特段の準備なしに、とにかく分析してみる方法について紹介したいと思います。

 国は2015年から「RESAS(地域経済分析システム)」と呼ばれる情報サービスを提供しています。「リーサス」と呼び、「Regional Economy Society Analyzing System」の頭文字をとったものです。地方創生を進めるため、国が「3本の矢」として支援するものの1つとして位置づけられています。

 これまでの分析では、国や自治体のホームページから該当するデータをダウンロードし、Excelなどの表に必要なデータを転記して表を作る、あるいはグラフを作るといった作業が必要でした。さらに、それ以前は図書館や行政機関に出向いて、統計書の冊子をコピーしなければなりませんでしたから、ホームページからデータを入手できることも確かに楽ではあります。しかしそれでも一定の手間はかかります。
 RESASは、こうした手間さえなくしてくれる、画期的なシステムです。メニューや自治体を選び、ボタンを押すだけで、美しいグラフを作成までしてくれるのです。メニューも人口や産業構造といった基本的なデータだけでなく、RESASにしかないビッグデータも豊富に収録されています。また、自治体も都道府県や市町村単位で選ぶことができるので、全国どこでも調べることが可能です。
 せっかくのシステムを使わない手はありません。この連載では今後、RESASの使い方を中心にこれから説明をしていきますが、今回はとにかくいろいろと分析をしてみる方法を紹介したいと思います。かつては、こうした方法は手間がかかるだけで、何も得られるものがなかった場合は虚しい気持ちだけが残っていたでしょう。しかし、RESASを使えばこれらシンプルな操作だけでできるので、非常に楽です。そして何か気づいたものがあれば、大きな収穫を得ることもできるわけです。

 その方法とは、「サマリー」という機能を使うものです。通常のRESAS操作では調べたいメニューを選ぶことからスタートしますが、実はサマリー機能を使えばあらゆるメニューのグラフを自動的に作ってくれます。しかもExcelのファイル形式になっているので、グラフをそのまま使うことも可能です(通常の操作では作成されたグラフを画面キャプチャ―して使います)。
 サマリーの使い方は、RESASのトップページの上部にある黒い帯の右側に「サマリー」と書かれているボタンを押し、次のページで都道府県や市町村を選択した上で「一括サマリーデータ作成」のボタンを押すだけです(下図参照、RESASページを一部加工、グラフは福井県敦賀市の人口-私の地元です)。サマリー機能でもメニューを選ぶことはできますが、せっかくなので全部のメニューを一度に作成すれば、メニューを選ぶことすら不要になります。

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 作成されたグラフはExcelのマクロ機能を利用する形になるのでパソコンで確認した方が良いでしょう。そしてメニューごとにExcelファイルが作成されるので、全部のメニューを一度に選ぶと多くのExcelファイルが作成されます。ただしメニューごとにファイル名も分かりやすくなっているので、大きな問題はないでしょう。

せっかくなので、もう1つ簡単な方法を紹介したいと思います。それはRESASではなく環境省の地域経済循環分析というサービスです。これは、環境省が進めている「地域循環共生圏」の具体化を目指すに当たって、地域内の資金の流れがどのようになっているか、環境施策等の実施によりそれがどう変化するかを把握することが重要であり、「地域経済循環分析」はそのためのツールとしての活用が期待されるものです(環境省ホームページより、一部修正)。
 そこで、環境省では地域経済循環分析自動作成ツールというものを提供しています。こちらは、Excelのツールをダウンロードして自分で自治体を選ぶ作業が必要になりますが、作成されるデータはPowerPoint形式で、そのまま発表に使うこともできるほど見た目も美しく、また一定の分析も文章で示されています。しかも地域経済の循環に着目し、地域がどの部分で経済の循環を構築しているのか、逆に言えばどの部分で稼ぎどの部分で稼げていないのかなどが明確にわかる内容になっています。RESASにもありますが、こちらの方がより詳しく紹介されています(下図参照、環境省ホームページを一部加工、スライドは福井県敦賀市の人口)。もちろん環境省の取り組みなので二酸化炭素の排出など環境面の分析も示されています。このように、環境省の地域経済循環分析自動作成ツールはRESASと同等の使い勝手の良さと、RESASとも異なる特徴的な分析結果が表示されることが大きなメリットになります。

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 私が各地域の分析をする際は印刷のサマリーと環境省の地域経済循環分析自動作成ツールの両方を活用し、面白そうなデータをピックアップしています。皆さんも、まずどこから分析して良いのかわからないと感じる方は、まずこのツールを使ってさまざまなデータを見渡してみると良いでしょう。




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