熊本の連携中枢都市圏について

    先週末に開催された自治体学会の分科会にて、熊本連携中枢都市圏を取り上げたので、ここで紹介することにしたい。

    総務省のホームページによると、連携中枢都市圏とは、次のような取り組みである。

    「連携中枢都市圏構想」とは、人口減少・少子高齢社会にあっても、地域を活性化し経済を持続可能なものとし、国民が安心して快適な暮らしを営んでいけるようにするために、地域において、相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化により「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」及び「生活関連機能サービスの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点を形成する政策です。本構想は、第30次地方制度調査会「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」を踏まえて制度化したものであり、平成26年度から全国展開を行っています。

    平成の大合併によって市町村の数は3300から1700程度に減った。つまり、市町村の規模が拡大し財政力もある程度高まったことになる。しかし、我々の行動範囲は通勤通学や買い物など日常生活においても容易に市町村の区域を超える。また、人口減少も止まらず、インフラの老朽化なども進んでいる。こうしたなかで、複数の市町村で公共施設や行政サービスを共有・連携することでコスト縮減やサービス水準の維持・向上を図ることは合理的である。これまでのように、市町村単独であらゆることを行う「フルセット主義」からの脱却という要素もある。

    熊本連携中枢都市圏の特徴は、まず、その圏域が非常に広域に及ぶことだ。構成する市町村の数は19で、全国3番目の数だという。また、人口は120万人を超え、これも全国6位。面積も県全体の4割に達するという。県の中に小さな県があるような感覚だ。これほど規模が大きいことで、連携の効果も難しさも他の連携中枢都市圏よりも大きくなるのではないだろうか。時間や調整など大変なこともあると思われるが、着実に連携の幅を広げ効果が高まることを期待したい。

    もう1つの特徴は、全国でも話題になった台湾TSMCの進出先が含まれることである。政府が多額の補助金を支出して誘致した結果、1000~2000人規模の雇用が生まれる。しかも、待遇もかなり良さそうだ。連携中枢都市圏は、立地する自治体だけでなく広域で効果を共有できる受け皿となる。これだけ多くの市町村で構成されているということは、多様な特徴を持っているとも言える。働く人やその家族が住みたいと思える場所が、それぞれのニーズに応じて連携中枢都市圏のどこかにあるに違いない。連携中枢都市圏として、それぞれの自治体が持つ幅広い特性を発揮することが期待される。

    全国では37の連携中枢都市圏があり、延べ市町村数は362となる。それぞれ特徴や取り組みは異なると思われるが、特に地方圏は市町村間の競争よりも連携が大切だと考えてきた。その基盤として、連携中枢都市圏がさらに大きな役割を果たすことを望みたい。

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