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地域分析の基礎 最終回 目的を持った分析が必要、だが目的のない分析は面白い

 このマガジンも今回をもって最後となります。もともと、この時期に区切りとする予定はしていたのですが、当初はもっと分析マニュアルのような内容を想定していました。しかし、RESASの使い方はすでにRESASのホームページで詳しく紹介されていますので、特に私が別の方法でする必要はどこにもありません。もちろんホームページのマニュアルはあらゆるメニューを紹介しているので、「どこに絞り込んだら良いのかわからない」という人へのマニュアルは私が作っても面白いのかな、とは思いました。しかし、それでも絞り込み方も人それぞれなので、結局、私が絞り込んだとしても、すべての人にピッタリ当てはまるわけではありません。
 そこで、このマガジンでは分析をする際の考え方を主に紹介することで、その考え方を適宜取り入れて分析の絞り込みに役立つ、というプロセスを重視しました。実際、このマガジンで紹介したことは分析そのものではありませんが、結果的に皆様ご自身の分析につながる内容を紹介できたと思います。
 このようなプロセスを重視したのは、分析をする前に目的を明確することが必要だと考えているからです。データの種類も豊富で、それを分析する方法もたくさんあります。それらを掛け合わせると、おそらく無限大の分析方法があることになります。では、これを手当たりしだいに行えば完璧な分析が行えるかと言えば、むしろ逆です。そのような分析はボリュームはあるものの「何をしているか分からない」といった状態になってしまい、労力をかけても成果はほとんどありません。そこで、まず目的をまず明確にしてから、その目的を達成するために必要な分析に限定して行う、という手順がやはり重要になるのです。このマガジンは、その目的を間違えないよう注意点をいくつか述べたという位置づけになります。

 しかし、逆のプロセスも実はあるのではないかと思っています。つまり、目的を明確にせず手当たりしだいに分析してみると、面白い、意外な結果が出てくる可能性がある、ということです。そして、そうしたことができるようになった、ということです。

 RESASが出てくる前は、分析は非常に手間がかかりました。図書館に行って統計書を借り、必要な部分をコピーしてデータをエクセルに入力する、そして計算式を入れてグラフを作成するという流れで、ようやく1つの分析ができます。さらに、エクセルがなかったアナログの時代は、計算式やグラフも手書きで作る必要があったでしょう。それが、最近ではホームページに統計書が収録されているので、図書館に行かなくてもダウンロードすればデータは手に入りますし、エクセルへの入力も簡単にできます。しかし、それでもやはり1つの分析にはそれなりの手間がかかり、目的を明確にしてから分析の数を限定しなければまともな分析は困難、という状態には変わりないと思います。

 しかし、RESASはこの状況を一変させる可能性があります。簡単なボタンやクリック操作だけで数字も図表も手に入れることができますし、データ分析支援機能やサマリー機能を使えば複数のや図表がまとめて表示され、しかも、そのままプレゼンテーションにも使えそうなレイアウトになっているからです。そのため、今までのように、目的を明確にして分析を限定しなくても手間がかからなくなったことになります。
 ただし、図表がたくさん出てくるので、目的を明確にした方が「そこから何を見るべきか」が絞り込まれて良い、ということは変わらないと思います。しかし、それ以外のメリットとして、「何気なく見ていた図表から、大きなヒントが得られる」ということがあるように思います。例えば人口の分析をする時に、少子・高齢化といった大まかな特徴を把握できますが、実は30代は増えていたとか、定年時のUターンも意外に多い、といったことが分かるかもしれません。目的を明確にしていたら着目することはなかったかもしれないものが、たまたま表示されたグラフから見えてきて驚いた、とういうことが起こりうるわけです。そうすると、少子・高齢化への対応として30代や定年時のUターンをもっと増やすといった、より明確な政策へと結びつくでしょう。

 このように、かつては目的を明確にして分析することが非常に重要だったのですが、もちろんそれはこれからも重要であるとしても、目的が明確でなくても分析することのメリットも出てきたと思います。むしろ、それを活かすことがこれまでの分析プロセスでは得られなかった新たな発見につながるだけでなく、次の分析へのステップアップにもなり、実は分析の目的も明確にしてくれる効果も生まれるのではないかと考えています。
 私たちはさまざまな分析結果を見る機会がたくさんありますが、どのようなプロセスでそのような分析を行ったのかまでは結果だけを見ても分かりません。おそらく、さまざまな試行錯誤があり、結果に掲載されなかった分析も多いのではないでしょうか。私自身も、論文や書籍で分析を紹介していますが、ボツになった分析も実に多くあります。このように分析のプロセスには試行錯誤があるわけですが、今回紹介した目的を明確にせず分析する方法は、この試行錯誤のプロセスにも広がりをもたらしてくれるのではないかと考えます。
 目的が明確な状態でも試行錯誤があるわけですが、その範囲は目的に沿ったものに限られます。そして、分析が増えれば手間もかかります。しかし、目的を明確にせずに分析をすることが容易にできるようになり、それによって目的にとらわれることなく広い視野から試行錯誤をすることができるため、新たな発見や本質的な分析の目的を明確にしやすくなるというメリットも出てくると思います。

 最後に、このマガジンでは「地域分析の基礎」と題して、地域分析に必要な視点をいくつかのトピックに分けて紹介してきました。もちろん少ない回数で、体系的な詳しい内容まで紹介することはできませんでしたが、noteという便利な媒体で日頃考えていることをとにかく発信する、という目的は一応達成できたと感じています。もちろん読んでくださった皆様には物足りない点や不正確な点、同意できない点などもあったと思いますが、私自身の精進はもちろん、皆様のご反応やRESASの進化などを踏まえて今後新しい企画として再スタートすることもきっとあると思います。
 その時は、「またか」と思わずに、「どれだけレベルアップしているか見てやろう」くらいの目線で、また御覧いただけると幸いです。
 短い期間でしたが、本マガジンをお読みいただき、ありがとうございました。他のマガジンはもうしばらく続けてまりいますので、引き続きよろしくお願いします。

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