見出し画像

地方公務員が考えるべきこと 第6回 地方公務員の副業について一言

 昨日、自分のホームページでは公務員が病気休暇中な副業で小説を執筆して印税等を受け取ったというニュースを紹介し、私見を述べた。
 ニュースの事例は副業になってルールに抵触してしまうのだが、稼ぎがなければ小説を書くことは公務員でも問題ない。いや、むしろその稀な能力を仕事に活かせることもできたのではないかと思う。また、自治体も職員の力を幅広く活用してほしいと考える。昨日の意見はそのような趣旨であった。

 これに関連して、別のニュースも取りあげてみたい。神奈川県では「職員タレントブック」なるものを作成するそうだ。既にあったものをリニューアルするという。これは大変素晴らしいことではないだろうか。

 公務員は、辞令1枚で所属部署が一方的に決められる立場だ。もちろん本人の適性は考慮され、適材適所で配置される。しかし、職員に対する評価は仕事で発揮する能力と実績で決まるから、従事する仕事の内容と求められる能力・実績の範囲内でしか評価されない。しかし、職員は1人ひとりが多彩な能力を持っている。それが所属部署で発揮されない場合、職員本人に責任を帰すのは酷な面もある。適材適所の配置の問題でもあるからだ。
 もちろん、人事権者である首長や人事担当の部署が職員の特徴をすべて把握することは不可能である。しかし、せっかくの能力を活かす方法がないのも、やはりもったいない。公共サービスを提供するうえで実は役に立つ能力も、広がりつつあるのではないか。神奈川県は、普段の仕事では埋もれてしまう能力を活かす機会を与える取り組みとして、とても興味深い。

 例えば、私の職場でも習字の上手な先輩がいらした。所属部署で発揮する機会は少ないかもしれないが、いろいろな部署から「表彰状を書いてほしい」という依頼がひっきりなしに来ていた。自治体が表彰状を発行する機会は多いが、それにふさわしい文字を書ける人は少ない。プロに頼めばお金もかかる。そうした時に、頼りになる存在であった。自分が書くと心を整えるために深呼吸して…と準備がいろいろあって、それでも結果は惨憺たるものだが、その先輩は筆をとると淀みなくスラスラと書かれていたので、尊敬の対象でもある。頼まれる側も嬉しいのではないか。また、バドミントンの上手な先輩はスポーツに関連する所属でなかった時も、地元の競技力向上に大きく貢献された。

 こうした力は、なかなか他の人にはないものだ。だから、たまたま所属している部署で求められていない可能性は高いが、他方で地域や職場全体で求められる機会は多いだろう。本人も好きなことなので、とても生き生きとされている。それは、所属先の仕事にも良い影響を与えるはずだ。

 現在、公務員の副業が注目されている。現在は大きな制約を受けていて、徐々に緩和されているようだ。もちろん、公務員の副業は働き方改革の1つとしても徐々に広がってくるだろうが、一朝一夕に進むものではない。それならば、公務員の仕事の範囲で、本人しか持てないような稀少な能力を、さまざまな場面で活用する仕組みの方が、本人にも良いことであるし、副業の問題もないから、すぐに始められるのではないだろうか。

 「得意を売りたいココナラ♪」というCMをよく見るようになったが、上記で述べたことは、自治体の内部で職員の得意をシェアするのである。それこそ、発揮された能力を売る、つまり少額でも特別な手当を支給することはできるのではないか。そうすれば、制度上は副業でなくても収入上は副業になる。尊敬の念も集まって、大きなやりがいにもなる。似たような得意分野を持った職員がサークルのような形で社内ベンチャーを立ち上げ、普段の仕事とは異なるアプローチで収入を増やす方法も面白いだろう。職員の経営感覚も養えるかもしれない。

 このアイデアを突き詰めていけば、採用方法の見直しにも発展する可能性があるだろう。公務員試験を受ける学生をたくさん見てきた立場として、あまりにも一律の能力、定型化された能力を求めすぎているようにも思える。予備校が発行している問題集などを一生懸命解いている学生を見て、「頑張っているな」と頼もしく思う一方で、「これからの公務員に求められていることなのだろうか」とも感じる時もある。大学入試にも「一芸入試」と呼ばれるものがあるが、公務員もそうした採用方法がもっと増えて良いのではないか。

 今回は、最近のニュースをいくつか踏まえて、これからの公務員に求められる資質やその活かし方について取り留めもなく考えてみた。何かの参考になれば、幸いである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?