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待ち時間すら愛おしくなるホットケーキを食べた

「ホットケーキが食べたい。」

連れがそう言うので、130件を超えるわたしの喫茶リストから選び抜き、ピノキオ(大山駅)へ。

池袋から東武東上線でたったの3駅。
なのに、駅周辺にチェーンのスーパーや飲食店があるだけで、あとは住宅街が広がる静かな街だった。

「こんなところに、喫茶店なんかあるんかいな?」
ひねくれ者のわたしは、迷わず疑ってかかった。
上京してきて、既に30軒は喫茶巡りをしているが、大抵はオフィス群や商店街の中に身を置く店ばかり。

ところが今回のお目当てがあるのは、東京のイメージとは程遠い街。
その上、駅から9分も歩くなんて、どんな喫茶か想像つかない。

急激に冬支度を始めた東京の気温に肩をすくめながら、目的地へと足を進める。

住宅街、公園、チャリをかっとばすちびっこ達。
都会離れした穏やかな風景を横目に歩き、店の前についたらびっくり。

10組近く並んでいた。
ポツリと一軒家、ならぬ、ボツリと大行列じゃん。

「こんなとこにあるんかいな」が不適切すぎる繁盛っぷり。ごめんなさい。
覚悟決めて列にジョイン。

「東京で並ぶ店は間違いなくおいしい」
半年住んで確信している。
だからピノキオも間違いないんだろう。ワクワク。
そう思いつつ並び始めたけど、なかなか順番がこない。

無理はない。ご夫婦二人で切り盛りしているんだから。
それにメニューは、名物ホットケーキの他に、ナポリタンやピザトーストなど作り置きできなさそうなものばかり。 
なんだか少し心配にもなる。彼らはちゃんと休めているんだろうか。
ピノキオに限らずだが、喫茶店のオーナーさんは、ご年配の方が多い。
忙しそうに店を回す様子を度々目の当たりする。
昨今の喫茶店ブームに乗っかっている身として、少し申し訳なさもある。
けれど、彼らがお店を続ける限りは、ありがたく楽しむのが一番の貢献だと考えよう。
わたしにできることは、節度を持ってお店を利用すること。
そして、帰り際にはお礼を伝えることだ。

待つこと一時間半ほど。ようやく順番がやってきた。
入店すると、店名にちなんだピノキオがお出迎え。

ログハウスみたいな木の壁に、オレンジ色の照明が、待ち時間で冷えた体を優しく温めてくれる。
入り口付近の席は、ゲームできるテーブルなのが老舗だなあ。

さっそく注文。
今日の主役ホットケーキの他、何を頼むか。
並びながら迷った末、エビピラフに決めた。
せっかくだから、よその店にあんまないやつ食べたい。
もちろんブレンドコーヒーも忘れずに。

「ホットケーキは時間かかっちゃうので、エビピラフはすぐお持ちしますね〜」と奥様。
手際がよい。マルチタスクうまい。見習いたい。

5分ほどでエビピラフが到着。
喫茶店のラインひかれたお皿、レトロなのに垢抜けてて大好き。
自宅に一個ほしいんだよね。

エビピラフ ¥650 ちなむとスープ付き

エビピラフ食べるの、4年ぶりくらい。
バター効いてるけど、重くなくて食べやすい。
お腹空いてたこともあり、あっという間に完食。

食べ終わるの見計らって、コーヒーをもってきてくれた。
......いよいよ、主役のあの子がやってくる。

ホットケーキ ¥550
ブレンドコーヒー ¥350


来た......!

食べれるか心配だったけど、思ってたよりコンパクトサイズ。かわいい。

ドキがムネムネ。それでは実食。

切った瞬間に、こりゃ家でおやつに焼くやつとは別の料理だと悟った。
外はカリカリ、中はフワッと。完璧なまでに。
生地もシロップも優しめの甘さなので、どんどん食べ進められる。

人生で一番おいしいホットケーキだった…。

帰り際、お会計してお店出るとき「長らくおまたせしてすみません」って申し訳なさそうなオーナーさん。
いや、あのおいしさなら全く問題ないです!
むしろ、外カリ中フワを焼き上げるための時間と思うと、
並ぶのすら愛おしくなっちゃう。
オーナーさんの人柄も相まって、帰るころにはあったかい気持ちで満たされていた。

ピノキオさん、これからも愛され続けてほしい。


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