留学体験記(21) in USA

inohana・留学概要
期間:2019/12/2~2019/12/20
場所:UCI Medical Center
参加者:井原紫逸(当時医学部4年)、他2名
内容:Observerとして現地の先生の指導のもと移植外科(腎臓)・心臓血管外科・脳神経外科で手術や診察を見学しました。

<留学で学んだこと/印象に残ったこと>

・みんな友だち
 初めの1週間は腎移植科を見学しました。移植前後の患者さんの管理が非常に複雑で特殊であるため、腎泌尿器科とは別に存在しています。そこで働く外科医・内科医・看護師・栄養士・ソーシャルワーカーなど全員が腎移植科の専属で、他科で働くことはないそうです。各科がそれぞれ専属の医療チームを抱えているのだとか。チーム内での役割や年齢、キャリアなどは異なりますが全員が対等なメンバーとして互いを尊重している姿が見れました。仲間への敬意がなければどんな医者でも絶対にやっていけない、と先生がおっしゃっていたのがとても印象的でした。

・私の腎臓を誰かに
研修初日に生体腎移植を見学することができました。驚いたのは、ドナーと患者の間に血縁関係がなかったことです。後で知ったのですが、友人に腎臓を提供することは稀ではないそう。更に驚いたのは、nondirected living donorというシステム、すなわち「誰でもいいから私の腎臓を差し上げます」という制度があることです。脳死移植ではなく、生体移植でです。病院の隣に大きな教会があるのですが、昔その教会の代表の人もその制度を使って臓器提供をしたとのこと。宗教的な影響もあるのでしょうか、誰かの役に立つためにレシピエントを指定することなく臓器提供をすることが時々あるそうです。
米国でも医療費の増大が財政を圧迫しており、中でも透析による負担がかなり大きなものとなっています。トランプ大統領の意向もあり腎移植の件数をもっと増やそうという政治的な動きがあるとのこと。そういった政治的な後押しもあるのか、生体腎移植の適用範囲が日本と比べてかなり広いなと感じました。(毎年100,000人登録されるのに対して移植件数は年に17,000件だからまだまだ足りてはいないらしい。。。)
余談ですが、アメリカの脳死移植で多いのは薬物中毒と交通事故の犠牲者。バイクに乗る人のことを走るドナーと呼ぶことも。移植医療に触れるかたわらで、社会が抱える問題も垣間見たような気がします。

・BMI 70の悲劇
 今回で5回目のアメリカになりますが、毎回思うのはみなさん体格がかなり立派。もちろん全員がというわけではありませんが、日本人と比べて肥満の方はかなり多いと思います。BMI 40とかそんなに珍しくないよ、という先生の話も驚きでしたが、体重250kg、BMIにして70前後の患者さんがCTに入らなかったという話にはさすがに耳を疑いました。
 肥満対策。一皿あたりの食事の提供量を半分にする。車を使わずに公共交通機関の利用を促す。この2つが進めばみんなもっと健康的になるのではないかと、ついつい思ってしまいました。アメリカで過ごしたことのある方はもうご存知かもしれませんが、こちらの食事はかなり脂っこくて量も多いです。滞在中は外食が多かったのですが、気をつけないと2,3日連続でバーガーとポテトだけで過ごしてしまうことも。移動は基本車なのであまり歩く機会がありません。

・Be Niceの文化
 文化面で1つ印象的だったのがBe Niceの文化です。特にアメリカではヨーロッパとも違い、学校教育でも常にNiceな人になるよう教育されると伺いました。うまく説明するのは難しいですが、Polite や Elegant とも少し異なり、形式にこだわらずに誰にでもおおらかに楽しく接する雰囲気がどこに行ってもずっと感じられました。
 手術室に入った際も、皆さん初対面にもかかわらず気さくに話しかけてくださいました。邪魔にならないようにと壁際によって見てたのですが、機械出しの方がどこからか踏み台を人数分持ってきてくださったり、術中に麻酔科の先生がわざわざ手招きして私たちに頭側のよく見える位置を譲ってくださったりと大変よくしていただきました。

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