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私が着物を着る理由

着物を日常的に着て街歩きをするようなって15年位かな。

日常的に着るには、もっと仕事として着物を生かせないだろうかと着物屋さんで働いてみたり、着物と仕事を結び付けようと模索してあげく、着物のアドバイザーとして資格を数年前に取得した。

お客様に似合う着物がどんなであるかをお伝えし、ご自身を発見してもらう事に喜びを感じて、個人サロンを始めると同時にアメブロを開始。
そのアメブロも、個人サロンの形態にモヤモヤと悩んで、この数年放置状態にしてあった。

着物や帯をお客様が輝くように選ぶ事は、今でも大好き。だから、お仕事として求められれば、実際の店舗での商品選びを喜んで力を尽くします。

ただ、個人サロンでの着物の診断アドバイスという形式は今後とらないだろうと思うので、アメブロではなく新たにnoteを始める事に。

子供の頃から着物が身近だった。母方の祖母が生涯着物だけで過ごした人だった事もあるが、私の母世代は子供の入学や卒業時に、黒の絵羽織を着て出席する人がまだ残っていたように記憶している。

家には、子供用のウールのアンサンブルなどもあったので、お正月にはそれを着てこたつでゴロゴロしたり、そのウールのアンサンブルで氏神様に初詣に出かけた。
夏に花火大会や盆踊りにゆかたを着るのは当たり前だと思っていたし、中学や高校の家庭科の授業でゆかたを縫った記憶もある。田舎だからか、まだ浴衣程度なら、家の誰かが普通に縫えた時代だった。

そんな中でも、姉や妹は着物に興味を示さず、家にある着物を喜んで着ていたのは私だけで、友達も、『着物は可愛いけど、よくそんな動きにくいものを着るね』と着物を着たいと思う心境が理解しがたいようだった。

今考えると、着物を着たいと言っているような小中学生の同級生はいなかったけど、他の子がしない事をする事を、今のように特別視したりするような空気はなかった。
そのお陰で、思う存分着物好きでいられたし、小学生くらいの頃は、日常的に着物を着て働いている、梨園の奥方や、旅館の女将さん、舞妓さんに憧れる子供だった。

そして、おばあちゃんになったら着物を着て日常生活を過ごそうと、青年期や中年期の事はすっとばし、人生の折り返し以降の時期には、凛と着物を纏った人でありたいと子供心に思った。

その位、まわりと違う装いの着物姿の祖母の姿は、威厳のようなものを感じさせ、私のには素敵に見えた。着物には人を素敵にみせる何かがあると子供の頃から思っていた。

さて、私が着物を本格的に日常に着だしたのは、40代手前の頃。
それ以前も、子供の式典行事や、夏の花火大会の浴衣を着たりはしていたが、もっと本格的に日常の中に着物を取り入れだしたのは、東北から関西に住居を移してからになる。

会社員の頃は洋服が大好きで、お給料は東京の高い家賃と、DCブランドの洋服に消えた。小さな身体と童顔がコンプレックスだった私は、身に纏うものでいくらでも自分の思うようにみせれる服選びを楽しんだ。

けれど、結婚し、子育てし、40代に突入しようという頃に服選びがしっくりこない感じで、若い頃ほど楽しくはなくなった。
目まぐるしく変わりゆく流行のスタイルが、私の好みにピンとこなくなってきたのだ。

この頃の私は、子育てしている中で、普通に生活していれば、日常的に染み込んで育つものだと思っていた日本的な倫理観や、道徳心や他者への感謝が、自分の子供達にですら、うまく染み込んでいっていない事実に愕然としている頃でもあった。

何か私たちは子供達に大事な事を伝えずに消えていくのかもしれない。

倫理観のようなもの、自分以外のすべてのものへの感謝の心というものは、言葉で説明して育つものではないと思っている。日々当たり前のように降り注がれて心に染み込んでいくものだと思う。そして、それは日本で暮らしている以上当たり前にあるものだと思っていた私は、消えてゆきそうな私の好きな日本というものに焦りを感じはじめた頃でもあった。

そんな時幼い頃の祖母の姿を思い出した。
日本人であるのに、事あるごとに他国と比べ、日本人を貶める空気や風潮が私世代でもあったはずだが、
日本人である事に喜びと誇りさえ感じてこの年齢までこれたのは、着物好きだったからのように思う。日本独自の衣服に集約された感性や価値観に触れ、考える事が多かったからだと思う。

そうだ、着物を着よう。

服選びがなんとなく億劫になっていた時期と、日本的な感覚や価値観が消えていきそうな事に焦燥感のような想いがあった時期が重なり、着物を纏ってみた。
とても自分らしいと思えたし、小さな頃から着物が大好きで、着ているだけで嬉しくなるし、着物というだけで褒められる。

なにより、自分の輪郭がはっきりしてくるような気にさえなるし、年を重ねるほど着姿が魅力的に見える。そんな力を着物に感じる。




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