ヨルシカ 『逃亡』 考察
こんにちは!普段は自分の受験体験談などを執筆していますが、今回はヨルシカの(個人的)知られざる名曲、『逃亡』について素人ながら解説・考察していこうと思います!「なぜ唐突に?」と疑問を抱く方もいるかもしれませんが、理由は後ほど説明します。
『逃亡』 概要
まず、『逃亡』の基本情報について説明します。
『逃亡』は2020年にリリースされたヨルシカの最新アルバム『盗作』に収録されている、11番目の曲です。順番的には『盗作』の後に来ます。
公式YouTubeチャンネルでは公開されていないので、音楽サイトなどでヨルシカをフォローされていない方は聞き慣れていないタイトルかもしれませんね。(名曲だから是非!聞いてください!)
歌詞 解説
それでは、これから歌詞を少しずつ、自分なりの解釈を含めながら解説していこうと思います。
また、現時点では歌詞以外の側面(例えばアルバムの背景設定など)は考慮せずに詩の意味を考えていきますので、悪しからず。
曲調
洋画などで指名手配犯が「逃亡」するシーンはアクション性が高く、クライマックスに選ばれやすい部分です。
しかしヨルシカの『逃亡』は、どこか落ち着いていて、タイトルから連想されるイメージとはかけ離れた曲調が特徴的です。
果たして、主人公は本当に逃亡の最中なのか。歌詞をパート毎に分析していきます。
パート1A、1B
アコースティックギター、ドラム、ピアノ、suisさんの鼻歌から構成される音が少なめのイントロ。やはり「逃亡」の印象は持ちづらい曲調ですね。
「夏の匂いがしてた」が過去形で書かれていることから、これは昔の夏の思い出を語っている事がうかがえます。
「あぜ道」とは、田んぼの間に土を盛り上げて作った道のことを指すので、夏の田舎の思い出でしょうが。
『温い夜』『誘蛾灯』『風鈴』など、より田舎の夏のイメージが連想されます。
『祭り屋台の憧憬』は、先ほど出てきた『隣の町の夜祭り』に対する憧れを述べています。つまり主人公はこの想いから、隣の町に「逃亡」したのだと考えられます。
『夜が近づくまで今日「は」歩いてみようよ』と呼び掛けている事から、普段は夜に出かけることはなく、初めて長時間歩いたことがわかります。
『花が夜空に咲いてる』の部分は現在形で書かれており、『夜が近づくまで』との時系列と矛盾するので、やはり今まで詠っていたのは過去の事だということが再確認できます。
パート2A、2B
『誰一人人の居ない街を探す』のは、前述べていた『隣の町の夜祭に行く』ことと対比しています。つまり、これは主人公が昔『隣の町の夜祭り』に逃亡していた事を思い出しながら、現在は『誰一人人の居ない街』に逃亡することが語られていることが連想されます。
『こんな生活はごめんだ』とは、かつての田舎から出たい気持ちなのか、人の居ない街を探しているこの現状が嫌になっているのか、あまりはっきりsていません。
ここで、田舎から逃亡していた当時、『手を振る影一つ』、つまり見送っていた人物がいたことがわかります。
そして、主人公は思い出の中の田舎の澄んだ景色を『つまらぬほど綺麗』と表現しています。何もないが自然豊かな情景は美しいが、同時に何か物足りなさを感じる、ということでしょうか。
『夜が近付くまで今日も歩いていたんだ』今日「も」と表現している通り、あれから夜遅くまで歩くことが多くなり、大人になった現在の自分もまた昔のように逃亡している事が歌われています。
サビ
三度も「さぁ」と呼び掛けるこのサビは、一見、主人公が自分に語りかけ、逃亡を諦めないよう鼓舞している様子がうかがえます。
しかし、サビに入って初めて、『僕ら』と書いてある通り、この逃亡劇の登場人物が「僕」だけではないことが発覚します。この記事ではもう一人のキャラクターを、「君」とします。
ここで、少し自分なりの解釈で歌詞を若干改変してみます。
自分が思うに、これは「君」が発した言葉なのではないかと考えています。かつて、『隣の町の夜祭り』へ「君」が「僕」に逃亡を促した時のセリフなのです。
ここでいう『つまらないこと』は、先ほどの『つまらぬほど綺麗』な風景のことを指しているのではないでしょうか。よって、田舎に何も面白味を感じなくなった「君」は「僕」を『隣の町』へ共に逃亡するように促したのかもしれません。
パート3A、3B
パート1Aと同じ歌詞が反復し、過去の思い出を強調するのかと思いきや、衝撃的な事実が発覚します。『誰一人人の居ない街』への逃亡劇に、「君」はいなかったのです。
前半はまた、パート1Bの歌詞が反復しています。やはり、田舎の風景が「僕」の脳裏に強く焼き付いているのでしょうか。
『大人になってもずっと憶えてるから』と歌っている通り、復唱している田舎の思い出は子供の頃のものだということがわかります。
『ねぇ遠くへ行こうよ』という呼びかけは、やはり「君」からの催促なのでしょうか。
ラスサビ
さて、遂にラスサビの解説に入ります。
歌詞だけ見るとサビと何も変わらないラスサビですが、よく聞いてみてください。一つだけ違いがあります。
サビの直前にあったドアノックのような音が、ラスサビの前には出てこないのです。これは「君」が居なくなったことをより強調しており、『誰一人人も居ない街』の孤独さを表現しているのだと思われます。
考察
人物、場所、時間の整理
歌詞の解説、いかがだったでしょうか。説明はしてみたものの、物語の全体像がいまいち掴めないですし、一体どういった曲なのかもはっきりしません。
ここで一回、『逃亡』に出てくる人物や場所などを整理してみます。
まず、曲中に登場する人物は先ほど述べた通り、「僕」と「僕」の逃亡仲間(「君」)です。『手を振る影一つ』は「君」と仮定できるでしょう。
場所に関しては、『隣の町』と『誰一人人の居ない街』が出てきます。また、間接的ですが「僕」が子供の頃に住んでいたと思われる『つまらぬほど綺麗』な田舎の故郷も登場します。個人的に、『誰一人人の居ない街』と『つまらぬほど綺麗』な田舎は同じ場所なのではないかと考えています。
物語を時系列的に並べると主人公は、子供の頃「君」と『夜が近づくまで』故郷(田舎)から『あぜ道のずっと向こう』の『隣の町』へ逃亡していました。
そして『大人になった』現在、『目蓋を閉じ』てかつての逃亡を思い出し、『夜が近づくまで今日も』『誰一人人の居ない街』を探して、『君も居ないことにやっと』気づくのです。
公式の世界観
ここで一つ、曲そのものとは別に、公式が発表している設定と世界観を考慮してみます。
上記は、ヨルシカ公式サイトに書かれているアルバム『盗作』の公式設定です。
自分の考察
最後に、公式の世界観を考慮して、自分なりの考察をしていきます。
主人公の「僕」、「音楽の盗作をする男」は、後の逃亡仲間となる「君」と共に音楽を作っていた。最初は、誰かに披露するわけでもなく(『誰一人人の居ない街』)純粋に音楽を作る事に喜びを感じていた。更に「君」を喜ばせたかった「僕」は、密かに高品質な音楽を盗み、「君」に披露した。
「君」はそれを「僕」が作った音楽だと純粋に信じ、このクオリティなら人前で活動をし、業界で売れると見込んだ。「君」は沢山の人の前で音楽を披露する事に憧れて(『祭り屋台の憧憬』)、世に発しない曲を作る事をつまらなく思い(『つまらないことは全部放っておいて』)、「僕」に公共で公開する音楽を作曲することを提案する。(『夜が近づくまで今日は歩いてみようよ 隣の町の夜祭りに行くんだ』『さぁもっと遠く行こうよ』)。
『逃亡』の本当の意味
業界デビューした「君」と「僕」だったが、盗作により成り立っていた「僕」の音楽は売れるはずもなく、撃沈。盗作が発覚し、彼らの音楽活動の幕が閉じ、「君」の憧憬を潰し見捨てられた「僕」は、かつて一緒に音楽を作っていたあの場所へ戻る(『誰一人人の居ない街』)。
帰る道中、昔のことを思い出すと、何もかもが懐かしく思えてきた(『大人になってもずっと憶えてるから』)。しかし、一番大事な「君」の存在はそこには無かった(『君も居ないことにやっと』)。
そして彼は「君」に対する責任から逃げ、自殺を決意する。これは生に縋りつき、死(亡)から逃げる逃亡劇ではなく、死ぬために逃げた彼の『逃亡』なのだ。
最後に
素人のガバガバな考察を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。「自分はこう解釈した」などの意見、お待ちしております!
次回はちゃんと受験の事について発信します、多分笑。
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