見出し画像

『このままでは飢える! 食料危機への処方箋「野田モデル」が日本を救う』渥美俊一氏に反逆した野田忠氏のイノベーション(環境研究)

 日本の野菜の自給率は80%と言われているが、そのために必要な種の90%が海外からの輸入、化学肥料のほとんどが輸入という脆弱な状態だ。さたに、農家は赤字と借金返済に苦しみ、買い叩かれ、生産資材の高騰に苦しんでいる。

 そんな状況を打破するユニークな方法が生まれた。
 それは和歌山県を中心に展開する直販所「よってって」だ。創業者は1936年(昭和11年)生まれの87歳の野田忠氏。会社の沿革には、第1号店の「紀州の産直広場よってっていなり店」を2002年にオープンしたとあるので、66歳のときに創業したビジネスということになる。

 その方法は、生産者がまず「母店」と呼ぶ店舗を決める。たいていの場合は生産地に一番近い店舗が選ばれる。生産者は収穫した作物をビニール袋に入れて、表には生産者名と値段を書いたラベルを貼る。それを自分で母店に持ち込む。ここまでは通常の産地直売所と同じ流れだ。
 「よってって」は多店舗展開しているので、生産者が多数の店舗に収穫した農産物を並べれるのだ。店舗のバックヤードの集配所(最近は配送センター)にある店舗別のカートに作物を載せたパレットを詰め込むと、各店の巡回トラックが転送してくれるシステムが販売拡大を可能としている。
 母店のほかどんな店で販売するかを決めるのは生産者自身になり、母店だけでそこそこ稼げればいい人と、他店舗に転送して稼ぎたい人など、販売戦略はそれぞれ違う。生産者の中には、年間販売学が1億円を超える人や1000万円を超える人が何百人もでてきているという。

 創業者の野田氏は、現在の日本の流通業を築き上げたチェーンストア理論をペガサスクラブで学んだ。ダイエーのフランチャイジーの経験もある。しかし、野田氏の頭の中にあったのは製造小売業SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)の方法論だ。
 しかし、生産者そのものが各地に店舗をもつのは現実的ではない。そこで、農家が製造から販売までを自分で責任をもてるプラットホームを用意しようと考えたのだ。これは渥美俊一氏のペガサスクラブのチェーンストア理論とは違う、まさにイノベーターの発想だ。

 「よってって」には魚の漁師も委託販売を行う。輸入でなく、近隣の精肉も並ぶ。醤油味噌などの加工品もすべてが地産地消のものだ。なんと、イオンにもテナントとして出店しているという。既存の小売業とは競合しないのだ。

 アメリカ中西部の農業地帯にあるウィスコンシン大学では、大規模農家の師弟向けの講義で、次のことが教えられていたという。

 食料は武器であり、標的は日本だ。直接食べる食材だけでなく、日本の畜産の餌である穀物をアメリカが全部供給できるように仕向ければ、アメリカは日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、同じことを世界中に広げるのがアメリカの食料戦略となる。

 世界でもっとも肥沃とされている土は大穀物地帯であるウクライナの「チェルノーゼム」だ。次によいのが日本の「黒ぼく土」で、その農地に占める割合が世界で一番高いのが日本なのである。この強みとイノベーター野田氏の考えたプラットホームが結合すれば、アメリカにコントロールされることなく、日本の農業は稼げるビジネスとなり、種子の自給、肥料の自給にもつながるのである。国としても食料安全保証が確保できる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。