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『トヨタのイノベーションと糸川英夫のイノベーション』(5−6)パーマネント組織とアドホックチーム

 シーズン5ではトヨタのイノベーションとしてトヨタ製品開発システム(TPDS)と糸川さんのイノベーションであるCreative Organized Technologyを比較するという前代未聞の試みを行ってきた。TPDSはトヨタのコア・コンピタンスであるためベールに包まれているが、幸いにも最近は、数名のチーフエンジニア(CE)が退職後に主査制度の方法論を出版しているので、参考文献も示しておく。

 長谷川龍雄氏が提案することではじまったトヨタの主査制度は、1953年に豊田英二氏により、パーマネントな社内制度として確立している。ならば、糸川さんのAVSAプロジェクトを東京大学の生産技術研究所の所長に提案し、トヨタの主査室のようなAVSA室というパーマネントな組織にしなかったのはなぜだろう。

 国立大学の組織はそんなに簡単に新しいパーマネントな組織は作れないこともあるのだろうが、当時の東京大学生産技術研究所は、1部から5部(基礎研究、自動車や精密機器、電気、化学・冶金、建築・土木)までいろいろな分野の専門家がいた。同じようにトヨタにも、販売サービス部門、品質管理部門、技術部門、検査部門、生産技術部門、生産部門、生産管理部門が縦割り組織としてある。長谷川龍雄氏の主査制度も、糸川さんのAVSAプロジェクトも縦割り組織を横断しながら、ニードに合致した製品を作ることに変わりがない。

 違いはパーマネントな組織か、アドホックな組織かの違いである。糸川さんの作ったアドホックな組織は、現在はJAXAというパーマネントな組織になっているが、スタートアップのときはアドホックな組織でマネジメントしていたのである。


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