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『生命 最初の30億年 地球に刻まれた進化の足跡』シアノバクテリア以前の歴史(地球の歴史)

 生命の誕生というと地球のどこかにスープのようなものがあり、そこで生命の種になるアミノ酸が生まれ、単細胞から多細胞生物になっていくというイメージが一般的だろう。本書はカンブリア紀以前(地球の生命の40億年の歴史から多くの生物が生まれた5億年前)の生命の起源の歴史にフォーカスしたものだ。

 生命の系統樹は生命史がたどった道筋を示し、その枝分かれの順序は生物が多様化した様子を反映している。この系統樹は、初期の生態環境が主に熱水噴射出口や温泉で、後に光合成が登場して生命が地球上に広まったことを示唆している。それらを明らかにするためには、カンブリア紀以前の岩石に注目する必要があるとしている。

 そこに出現してくるのは、シアノバクテリアの微化石だ。筆者は地球上に酸素を生み出したシアノバクテリアは微生物のヒーローだと言っている。

 さらにシアノバクテリアのような微生物はどうやって生まれたのか。ダーウィンは次のような仮説をもっていた。

生物が最初に生み出される条件は現在すべて存在し、これまでもずっと存在していたのではないかとよく言われています。しかしもし、どこかの温かい水たまりにさまざまなアンモニアやリン酸があり、光や熱や電気などが加わってタンパク質が化学的に生成し、もっと複雑な変化が起きる準備ができるとすれば、現在ならそうした物質は即座に食べられたり吸収されたりしまうでしょうが、生物が誕生する前はそうではなかったはずです。

チャールズ・ダーウィンのベンジャミン・フッカーへの手紙より

 1953年にスタンリー・ミラーはシカゴ大学で、フラスコにメタンとアンモニアと水素と水蒸気の混合気体(水素原子と炭素原子の割合が4対1以上に限られる)を詰め、フラスコ内で繰り返し火花を散らした。数日でフラスコは色を変え、内壁にできた膜のせいで赤茶色を帯びたのだ。ミラーはこのどろどろの物体が沈殿した流体を分析してさまざまな有機化合物を見つけた。なんとその中にタンパク質の構成要素となるアミノ酸もあったのだ。ミラーのフラスコ内で起きた現象は、実験室のみの特殊な反応ではなく、われわれの太陽系やその外でも普遍的にみつかる化学作用なのだ。

 RNAはDNAの情報をタンパク質に翻訳する役割をもつが、これがどうやって太古の地球でできたかはよくわかっていないという。袋状の膜を作り上げるもっとも単純な分子は、原初の海に存在していたとしてもおかしくない。最初の膜組織にRNAの分子が詰め込まれたときに、代謝と複製の機能が生まれたときにはじまったのかもしれないとある。

 タンパク質とRNAと膜組織の3つがそろうと、生命は自然選択と遺伝子の水平移動に促され、生命の樹の幹を駆けのぼっていく。つまり、この3つの誕生プロセスがわかれば、地球上の生命のはじまりがわかるのである。本書には現在までの仮説が紹介されている。

 筆者は最後に宇宙生命探査にも触れている。現在の物理法則の範囲内であれば、直接的に分析できるのは太陽系の中に限定される。しかし、観測技術の進化で、太陽系以外の惑星にDNAやタンパク質を合成するのか、単細胞なのか、多細胞なのかなどがわかるときが来るという。

 しかし、宇宙生物学のもっとも基本的な問題として、地球の生命のどの特徴が生命の普遍的な特徴で、どれがわれわれ固有の歴史がもたらした特徴なのか。これらは他と比較品ことには答えを知りようがない。
 地球上の生命の最初の誕生の歴史を紐解くことと、それに普遍性があるかないかがわかれば、人間はこの宇宙に唯一の存在なのか、そうでないかがわかることになる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。