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『残菊物語』戦前の溝口健二監督作品

 残菊とは、秋の終わりから冬の初めに咲いている菊の花で、晩秋を表す季語でもある。

 5代目、尾上菊五郎の養子として周囲からもてはやされて育った菊之助は、歌舞伎の家柄を背景に評価されている自分がいることを知っている。そんな未熟な芸を率直に指摘してくれる弟の乳母・お徳に恋心を抱くことからこの物語ははじまる。

 二人は結ばれていくが、家柄の違いから反対され、家を出て大阪で旅芸人を行うことになってしまう。落ちるところまで落ちた菊之助をはげまし続けた。そのおかげか、5年間のドン底時代に芸は磨かれていった。

 その後、お菊の直言で菊之助は歌舞伎に復活できるが、不幸な運命が待ち受ける、というストーリーだ。溝口健二監督の作品はヨーロッパで評価が高いというが、この物語はロミオとジュリエットだと言ってもいい。

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