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『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』利益は人が生み出すもの

 2021年の日本でもっとも稼いだ会社はトヨタ自動車、2位はONE(Ocean Network Express)、3位はNTT、4位は三菱UFJということはほとんど知られていない。ONEは赤字部門だった川崎汽船、商船三井、日本郵船の3社で定期コンテナ船事業を統合し設立された企業だ。売上高4兆円、経常利益2兆円という驚異の業績だ。資本は日本だが、本社はシンガポールにある。

 「ONEはなぜ成功したのか?」というタイトルに関する答えがまとめられた本だが、川崎汽船、商船三井、日本郵船は旧態歴然とした歴史的な会社からスピンアウトしたことが一番大きな要因だというのは皮肉だ。ONEでは出島経営と呼ばれているが、本社が東京になく、本社と本社機能をシンガポールに置いたことが大きいという。要するに階層型の縦割りとなってしまった組織から切り離したことと、3社の人材をワンフロアーに集め横断的に組織化したことが大きい。つまり、日本企業は、縦割り組織を横断でき、別のミッションを持つことができ、しがらみから離れることができれば、成功する可能性があるということだ。1位のトヨタ自動車も主査制度(CE)により、縦割りの部門を横串に横断することで、商品の利益を生み出す。2位のONEも理屈は同じだ。

 本書でもっとも感動したのは、日本郵船の宮岡公夫氏(社長、会長、相談役)が、海外で苦労している海外赴任者に毎年クリスマスカードを送っていたことだ(ONEの岩井泰樹氏によると)。宮岡氏は戦艦大和の沖縄特攻作戦に配属され生き延びた経験がある。島国である日本が生き残るには海運しかない。海運を復権すれば、戦艦大和で死んだ仲間を慰めることに通じる、と。こういうリーダーの存在は部下を育てる。企業の利益は人が生み出すものだという意味でも、このエピソードが最後にあるのが本書の特徴だ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。