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『プロフェッショナルマネジャー』重要な視点が欠けている(他社の歴史)

 ユニクロの柳井氏が師と仰ぐ、ハロルド・ジェニーン氏の経営論をまとめたもの。Creative Organized Technology(創造性組織工学)の新商品、新ビジネスを推進する役割の人を、書題と同じ「プロフェッショナルマネージャー」と呼んでいるので、役割の違いを確認するため読んでみた。

 参考になったのは、ビジネス理論で経営できるものはない、という考え方だ。たとえば、ボストンコンサルティンググループが開発したキャッシュ・カウ&スター(PPM理論)についての考察だ。

 スターは成長性、収益性がともに高い事業部、キャッシュ・カウとは高収益を上げているが成長ポテンシャルが低い事業部、そしてドッグとは、成長性も収益性も低い事業部を指す。ハロルド・ジェニーン氏は、このような発想は、58四半期連続増収(14.5年)を果たす上で築き上げたものを台なしにするという。

 つまり、合意された一連の目的に向かって社員一同が全力で前進していくための経営者への信頼の土台を崩しかねないのだ。ドッグについても単に切り捨てるのではなく、ドッグはドックでも優秀なグレイハウンドに仕立て上げるためにできる限りのことをするのが経営者の責任だ、と。彼は肌感覚で、現場は理論では動かないことを知っているのだ。

 米国の経営理論は米国のシステム工学と同じように情緒を無視する。日本で活用するならば情緒的な側面をビルトインしておかないとうまくはいかない。 

 また、彼の部下の失敗に対し、失敗はビジネスにつきもので、そこから学び、自己のなすべきことをすることが重要なのだ。アメリカの経営者の最大かつ基本的な間違いがはチャレンジ精神を失ったことだ。これは自分のやることに革新を持ち、職業的な過ちを犯さないのがプロフェッショナルマネージャー、という誤った考えが、経営者の間に育ってしまったと指摘している。

 ハロルド・ジェニーン氏のこの本には、大きく欠けている経営者の重要な仕事がある。取締役会はCEOの選任に関わる重要なプロセスの一部を担うという欧米の経営構造から、後継者を養成する仕事は経営者の仕事ではない、という前提からなのだろうか。彼を師とする柳井氏の最大課題は後継者なのだろう。リーダーはそのイスに座ったらすぐに後継者の養成をはじめる必要がある。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。