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『民族の政治学』本書は外国人労働者問題と民族問題を俯瞰し整理するには最適なテキストだ(環境研究)

 外国人労働者問題を考える上で、この本は非常に参考になる。例えばマックス・ウェーバーは、「種族」と「民族」と「国民」の3つに分けて民族論を考察したことや、その後の文化人類学の分類の変遷などが整理されている。

 さらにイスラームでは帰属意識を、血縁・民族的概念の「カウム」、地縁的概念である「ワタン」、宗教的概念である「ウンマ」、政治組織的単位である「ダウラ」、心理的所著的概念である「バドラ」とアラビア語で分類していること。現在の国民国家の概念では、バラド意識をもつ国民を構成するダウラということになるが、それは彼らにとり、自らを帰属させる多くの枠組みのひとつに過ぎないなど、イスラームの帰属意識が、現代国家の形成とともに分かりやすく解説されている。

 世界を西欧、中・東欧と中東、アジアとアフリカに分けで民族問題を考察。例えばヨーロッパでは、ドイツでは外国人労働者を「ガスト」、フランスは「ナシオン」と呼んでいるが、その違いなどから民族問題を考察。イギリスの社会学者A・ギデンズは民族問題は、①地理的分離、②脱出、③対話、④力の使用の4つの解決方法があるが、①②はグローバル社会では難しく、④は内乱のリスクがあるので、結局民族問題は、③による解決しかなく、共生の共存の道を探るしかなく、政策科学的思考を必要する、と結論付けている。

 本書は外国人労働者問題と民族問題を俯瞰し整理するには最適な書物だ。こういう仕事こそ学者ならではの仕事で、私たちのような素人は非常に助かる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。