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『ドキュメント トヨタの製品開発: トヨタ主査制度の戦略,開発,制覇の記録』機密漏洩の手段(プロフェッショナルマネージャー)

MarkIIの双子車種だった「チェイサー」の名前はもともと「シグナス」で、次に「セイバー」となり、そして「チェイサー」になったというくだりが気になる。発売1年前に決定していた「シグナス」はマスコミに漏れ、次に決定した「セイバー」も漏れたとのこと。社内からの情報漏洩で製品企画室の責任問題になるのだろうが、本書では犯人は特定されていない。
 トップシークレットが漏れるケースはスパイ映画などではベットの上と相場が決まっているが、「シグナス」「セイバー」ではどうだろう。

 1980年代は書類を電子保管するのでなく、紙にして持ち歩いていた訳だから、製品企画室の主査、あるいは主査付がそれらの書類を自宅のテーブルに置き、それを家族の誰かが見て、

「リークすれば金なる」

と判断したとしたら...今の時代ならアメリカ映画ではハッキングが常套手段だが、紙の時代は「自宅」という場所が危ないこともある。

 これが車名でなく、会社のコアコンピタンス(TPD)であったらどうなるだろう。国内では流出が難しくても、海外なら流出することでビジネスにしやすいものだ(トヨタの成長のコアコンピタスを知りたい人は海外にたくさんいる)。
 コアコンピタンスが流出し犯人が特定できたとしても、定年した後は社内リーガルのペナルティーはなく、三河には住みにくくなるかもしれないが、海外移住するばそれも問題ない。

 本書は社内機密をうまく避けながらドキュメントという手段で現場の体験と臨場感を伝えているが、読者はさらに、ユーザーニーズと原価企画から部品へのつながりなどを具体的に知りたくなってくるのだろう。しかし、それらが日本で書籍になる可能性は薄いのではないだろうか。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。