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『現実化する宇宙戦: 「宇宙小国」日本はどうする?!』ガザ戦争が人類初の宇宙戦(世界の歴史)

 宇宙空間が軍事的に利用されたのは、第2次世界大戦末期、ナチス・ドイツが同空間を経由してイギリスなどを攻撃したV2ロケット(ミサイル)にまで遡る。そして、このミサイル技術が、弾道ミサイルや人工衛星の打ち上げを後押しし新たな宇宙利用の道を拓いた。

 宇宙空間は「宇宙条約」(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)によって国家による領有が禁止され、すべての国が自由に利用できるとなっている。また、宇宙空間は国境の概念がないため、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の観測や通信、測位などが可能となる。そのため軍が宇宙空間に積極的に関与している。

 2022年2月24日にはじまったロシアによるウクライナへの軍事侵攻では、国連憲章第51条における自衛戦争ではなく、侵略戦争であることは明らかだ。しかし、ロシアはこれを「特別軍事作戦」と称し、自衛戦争だと主張している。同じように、自衛戦争の範囲内で認められている宇宙空間の軍事利用は、侵略戦争とも自衛戦争とも主張できるため、国際連合と国連憲章では限界だ。

 また、中国における自国気象衛星(風雲1号C)の中距離弾道ミサイルによる破壊実験では、600個以上のデブリを推測されている。中国はこれを「科学実験」としているが、宇宙条約第9条「有害な汚染、干渉の防止」に違反することは明らかだ。

 人類初の宇宙戦は、2023年10月31日のイエメンフーシー派によるエイラット攻撃ミサイルをイスラエルの「アロー3」が大気圏外で撃墜したケースだ。フーシー派のミサイルは弾道ミサイル「ブルカン3」(イランによって設計され、シリア軍第4師団の工場で生産)は射程距離が1200キロなので、イスラエル領内に到達可能だ。一方、イスラエルのミサイル迎撃システム「アロー」は、次のような種類がある。

1 )アロー2:大気圏内
2)アロー3:大気圏外

 ここで少し本書から離れるが、アローが生まれた経緯をまとめておく。1992年、アメリカのSDI(戦略防衛構想:Strategic Defense Initiative)をアローシステムに肩代わりされた。経緯はこうだ。

 1990年の湾岸戦争ではイラクからイスラエルにスカッドミサイルが打ち込まれ、アメリカの「パトリオット」により迎撃された。スカッドミサイルの原型は、フォン・ブラウンの開発史たドイツのV2ロケットだ。しかし彼は、液体酸素と液体水素しか使えない人だった。したがって、スカッドミサイルは液体燃料だ。
 液体酸素も液体水素も保存が難しく、非常に冷たい状態でボンベに入れてパイプに移す。ちなみに、LPGはマイナス40℃、LLGでマイナス160℃、液体窒素ではマイナス270℃まで下げる。低温で保存したタンクから慎重にパイプ(少しでも不純物が混入すると大爆発になる)で移したスカッドミサイルを発射するまでは相当な時間がかかる。
 これに対し、アメリカのパトリオットミサイルは燃料にプラスチックを使う固体燃料なので、保存も運搬も容易で、速射が可能だ。だから、パトリオットがスカッドに対抗すれば間違いなくパトリオットが勝つ。実際、イスラエルに打ち込まれたスカッドミサイルはパトリオットで迎撃された。
 しかし、イスラエルではパトリオットは歓迎されなかった。なぜならパトリオットが迎撃するのが自国上空だからだ。イラク側が発射したスカッドをパトリオットが迎撃した破片はすべてイスラエルに落ちてくる。そこで、SDI予算の70%をアロー迎撃システム(矢)の開発費に充当することになったのである。

復活の超発想』(糸川英夫、徳間書店)

 イーロン・マスクのSpaceXは、政府機関に堅牢な衛星ネットワークを提供するStarlinkの軍事バージョンであるStarshieldを発表した。Starshieldは衛星通信およびその他の軍事システムにさらなる回復力を与えるバックアップシステムだ。日本のベンチャーであるスペースワンは防衛省と提携していることからも、防衛に準ずる衛星システムが民間とともに構築されるのだろう。



Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。