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『メタファー思考は科学の母』メタファー思考は自分の思考を拡大できる(メタファー)

 メタファーに関する本を数冊読んだが、この本が一番スムースに理解できた。人間の思考はまずはメタファー(暗喩)によって発達し、そのあと論理による思考へと移行し、そこから科学という理知の世界が生まれる、と大嶋仁さんは語る。つまりメタファーという文学的思考がないと科学の発展がない、と。

 科学だけでなく、マーケティング的にキリスト教がなぜ世界宗教になったか。イエス贖罪論を「十字架(ロザリオ)」というメタファーで説明したパウロのマーティングセンスだ。ユダヤ教にある原罪を、磔になったイエスに結びつけ、さらにメタファーとして「十字架」を位置づけるという大胆不敵なパウロの戦略には驚かざるを得ない。

 科学や工学の理知を正確に理解するためにはそのまま伝える必要があると考えがちだが、まずはメタファーから入り、そのあと論理展開し、理知に落とし込む逆のプロセスの方が、閉鎖された一部の人にしか理解されなかったものを、遥かに広く拡大展開していくものになる。メタファー思考は科学的アプローチにつながるだけでなく、マーケティングにもつながる。つまり、「モノ」しか売れない、「モノ」しか作れない世界から、「コト」や「システム」を創造する世界に進化できるということだ。

 「メタファー思考は科学の母」という本書のテーマそのものが、本書で語られるメタファーの例としての神話、文化人類学、精神分析、文学などよりさらに空想を広げてしまう、という良い意味での思考応用可能な内容だった。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。