見出し画像

『発想の法則 物事はなぜうまくいかないか』システムは、システム人間を引きつける(システム工学)

 この本は、今のDXブームや某銀行のシステムの問題など、大規模なシステムがうまくいなかい法則として有名な「ゴールの法則」を作り出したジョン・ゴールが著者で、ペンシルロケットという単純な「計測システム」を作り出した糸川英夫氏が監訳となっている。

 正常に動作する複雑なシステムは、例外なく正常に動作する単純なシステムから発展したものである。逆もまた真であり、ゼロから作り出された複雑なシステムが正常に動作することはなく、またそれを修正して動作させるようにもできない。正常に動作する単純なシステムから構築を始めなければならない。

 上記のゴールの法則を含めた「物事はなぜうまくいかないのか」という難題に取り組んだ思考プロセスがまとめられている。この本にあるゴールの法則を含めた数々の公理を彼は「シスマンティックス」と命名した。これは、SystemとSemanticsとAnticsを合成した造語だ。以下はシマンテックスの公理のほんの一部。

1)システムは一般に不完全にしか働かないか、あるいはまったく働かないかのいずれかである。
2)ゼロから設計された複雑なシステムは、決して働かないし、それに継ぎ足しても働くようにはつくれない。まず、働いている単純なシステムから取りかからなければならない。
3)複雑なシステムが失敗する仕方は、数限りない。
4)システムは、システム人間を引きつける。

 これらの公理は、全部で「32」あり、それぞれに解説が施され、なるほどと唸ってしまう公理もある。例えば、「4)システムは、システム人間を引きつける」では、システムを作ると、寄生人間がくっついて、システムが生き残る限りただ乗りしたり、ただ飯を食い続けようとする。そして、審査委員会とか、査察委員会、競争試験などで寄生的「システム人間」を排除しようとしても、寄生人間のために新たな職を儲けるだけだ、と。

 しかし、古代エジプトではニ重官僚制度でこれを回避しているとある。そうやって書かれると、古代エジプトの官僚制度を勉強してみたくなってしまう。なぜなら、役人のルーツはエジプトの記録係を指すことも含め、人間に対する洞察からの組織が作られていたと推察できるからだ。

 ジョン・ゴールの経歴にはこう書かれている。

 ミシガン大学教授で、小児科を専門とする医学博士、彼は小さくまとめるものを好む主義で、仕事場でも、看護婦でもあるベス婦人の他、受付と看護婦見習いがそれぞれ1人いるだけで、これがゴール氏の官僚機構のすべて。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。