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『アイデアのつくり方』創造的知識労働者の必読書(異なる要素のコンバイン)

 この本が、何冊売れているのかは分からないが、初版が1998年で、2001年に31刷となっているので、10万冊以上は売れていると思われる。ドラッカーがいう知識労働者のレベルではなく、「創造的知識労働者」になりたい人は、必ず読むべき本だ。

 著者は、知識はすぐれた創造的思考の基礎ではあるが、それだけでは十分ではない。知識は、よく消化されて、最終的に、新鮮な組み合わせと関連性をもった姿となって心に浮かび出てこなければ意味がないと言う。しかも、アイデアの作成は、フォード車の製造と同じように、一定の明確な過程がある。アイデア製造過程も一つの流れ作業であり、道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修練することが、これを有効に使う秘訣なんだと。

 この技術を説明するのは簡単だ。しかし、実際にこれを実行するとなると、最も困難な種類の知能労働が必要になる。したがって、この技術の公式を大いに吹聴したとしても、創造的知識労働者は供給過多にはならない。どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第一に原理であり、第二に方法である。

 原理1)アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
 原理2)新しい組み合わせを作り出す才能は、事物の関連性をみつけだす才能によって高められる

 この2つの原理に対する方法は、以下の5つ。

 方法1)資料を集める
 方法2)資料に手を加える(分類など)
 方法3)孵化段階(問題を完全に放棄して、別のことに心を移す)
 方法4)ユーレカ!(アイデアが降りてくる)
 方法5)アイデアを有用性に合致させる(オープンにし、アイデアを独り歩きさせる)

 創造的知識労働者の人は、上記の2つの原理と5つの方法を自分の体験から真実だと実感できるが、定型業務を行っている人にとって、こんな簡単な方法で創造性は生まれるのか、という疑問が浮かぶこともあるだろう。しかしこれは、事実である。

 システム工学では、2つの原理のことをフランスの数学者ポアンカレの『科学と方法』から「ポアンカレの法則」と名付けている。また、5つの方法はさらに強化され、強制的にアイデアを生み出す方法として、「システム合成/分析」という手段を持っている。これは、アメリカのシンクタンクであるランド研究所の思考の武器でもあるが、日本には数式ばかりの学術書(『システム分析』1983、丸善、近藤次郎)でしか紹介がされていない。つまり、システム工学では、創造的知識労働者の武器を以下の2つに集約することができるのである。

原理)ポアンカレの法則
方法)システム合成/分析(強制的にアイデアを生み出す方法)

 本書のおかげで、システム工学の手法は、本書の原理と方法をベースにすると、よりわかりやすく伝えられることを発見した。この本は実質62ページだが、不易流行な本として、永遠に読まれ続けるだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。