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6.21みちのくプロレス後楽園ホール大会雑感

獅龍引退と、みちのく新章を見に行ってきた。
今回の雑感はセミファイナルとメインイベントだけです。

セミファイナル
獅龍引退試合

獅龍、ディック東郷
vs
ザ・グレート・サスケ 、新崎人生


カズ•ハヤシが7/1のGLEAT TDCホール大会で引退するのを前に、古巣のみちのくプロレスで組まれた獅龍引退試合。
1993年から1997年くらいのみちのくを見ていた人のためのようなタッグマッチ。

獅龍を見るのはいつ以来だろう。
一時期(10年くらい前)、みちのくやK-DOJOが90年代メンバーを集結させたメモリアル試合を連発してた時期があって、そこで海援隊DXとして出てたのを見たのが最後だったと思うが、それですらかなり前の話だ。

久しぶりに見た獅龍は「よくコスチューム残ってたな」という感慨と、かつてよくやってた動きをダイジェストで再現しようとするが、身体重そうだなーという中の人のリアルな事情が同時に伝わってきた。
かつて鉄仮面のような顔で絶対に欽ちゃんジャンプに付き合わなかった人生がこの日はハメられて一人だけ飛んでて、笑いを生んでいた。
時間が経ったんだなあ、と思った。

見てるうちに初めてみちのくプロレスを見に行った、1994年3月の福島県の船引町民体育館で見た獅龍とTAKAみちのくの試合を思い出した。
その日は特にテーマのない巡業の一大会で、全4試合。
第一試合がウイリー・ウイルキンス・ジュニアという外国人選手と練習生のエキシビションマッチ、第二試合が若手の星川と薬師寺が入ったタッグマッチだったかで、第三試合、実質的なセミファイナルが獅龍とTAKAみちのくのシングルマッチだった。
二人は最初の15分間お笑い要素の強いコミカルな試合をして、後半はシリアスなルチャをする、二部構成みたいな試合で28分戦った。
メインはサスケ率いる正規軍とデルフィン軍の6人タッグで、それは15分くらいでデルフィン軍が勝って終わったが、「お笑い」と「シリアス」を一つの試合で両方やる獅龍とTAKAの器用さが印象に残った。

獅龍はユニバにいたケンドーやタケダのような選手を求められていたと思う。
基本は楽しいルチャで、けど真面目にやればスイスイ動ける。
実際、それに近いことはできていた。
ただそれは獅龍の中の人、のちにカズ・ハヤシという人格を持つ人がやりたいことでは決してなかったのだろう。
「欽ちゃんジャンプ」に象徴されるコミカルな動きとスピード感ある動きができて、週プロに「みちのく・ザ・ベスト」と名付けられたハイレベルな多人数試合に必ず入り、SATO、のちのディック東郷とタッグリーグに優勝したり、海外のよくわからないベルトを獲ったりしてもなお、獅龍という選手は脇役イメージが強い。
当時のみちのくプロレスはザ•グレート•サスケという絶対的なスターがいて、その敵役にスペル•デルフィンと新崎人生がいて、あとはどのレスラーもすべて「脇役」でしかなかった。
当時はその構図がもうずっと永遠に続いてくような雰囲気すらあったし、それを思えば海援隊としてヒールに回ったあとに団体を抜けて海外に行った獅龍、カズ•ハヤシの選択は正しかったように思う。

獅龍の引退試合は15分時間切れ引き分けで終わり(この短さがコンディションを伺わせる)、マイクを持った獅龍は
「サスケさん、僕長年ウソついてました。僕、カズ・ハヤシなんです」
と自らマスクを取った。

1997年にみちのくを退団して獅龍というレスラーは消え、メキシコやWCWで戦っているカズ・ハヤシという選手がときどきメディアに出てくるようになった。
2000年のスーパーJ-CUPにエントリーされたカズは1回戦でサスケと対戦、追い込みながら敗れるとサスケから「カズハヤシ?そんなレスラー知らねえ。けど、いい選手だ」ということを言われていた。
サスケはずっと「カズ・ハヤシと獅龍は別人」という主張を20年以上していて、マスクを脱いだのはそれに対してカズなりの「会長、もう終わりだからいいでしょう?」というアンサーだったように見えた。
カズが「最高のプロレス人生でした!ありがとうございました!」と締めてしまったのでサスケはそれ以上何も言うことなく退場。

サスケ、余計なことをしゃべらなくなったなあ、と思った。
昔だったらこういうときに主役を差し置いて過剰にしゃべってたのに、今は言わないんだなあ、と。
ムーの太陽がどうしたとか、映画のなんとかがどうしたみたいなことはよく言ってるけど、昔みたいに相手をダメ出ししていくアピールはもうしない。
サスケも年齢を重ねたんだな、と思った。

本部席には2009年に亡くなったテッド・タナベの写真が飾られていた。
TAKA、デルフィン、MEN'Sテイオー、中島半蔵、船木勝一、星川に薬師寺。
みんな来てほしかったけど、今日はいない。
大人はなかなか集まれない。 
時間が経ったんだなあ、と思った。



メインイベント 「みちのく・ザ・ベスト 未来」

日向寺塁、郡司歩、大瀬良泰貴、OSO11、ストロングマシーンJ 
vs 
義経、ラッセ、山谷林檎、ARASHI、ガイア・ホックス

獅龍引退試合をセミにして、メインで「みちのく・ザ・ベスト 未来」と謳ってるのだから「ここから次の中心選手が出てきます」ということだと思ってた。
折しも試合前に挨拶したフジタJr.ハヤトが東北ジュニアのベルトを返上したので、この試合の中で次の決定戦に出る人間が決まるのだろう…と思ってたら、なんもなかった。
形としては日向寺が山谷林檎から取ったのだけど、特にベルトとかそういうのをアピールするわけでもなく、そのまま終わってしまった。

みちのくプロレスって過渡期のはずなんですよね。
エースでチャンピオンのハヤトが病気欠場になって、代わって団体の中心になったMUSASHIは退団して全日本プロレスに行ってしまった。
誰が団体の中心になってやっていくのか、はっきり打ち出さないといけないのに、せっかく後楽園大会のメインでそれを出せる場だったのに誰もその主張をしないで終わったのは本当にもったいなかった。

ストロングマシーンJが「覆面ワールドリーグ」への参戦をアピールしてたけど、あれはちょっと別枠の話だろうし。
(人生社長が「スケジュール確認して返事します」という、本当に何も聞いてなかったと思われる返答をしていた)

本当なら日向寺が中心にならないといけないんだろうけど、いまだにそうなっていないのを見ると本人にも周りにもその気がないのかもしれない。
生え抜きの大瀬良、メキシコデビューの逆輸入ルチャドールのARASHI(覆面MANIA所属)、山谷林檎あたりは中心に据えるのにもう少し時間がかかる。
一時だけでも義経にやってもらえればいいのにな、と思った。
一番納得いく気がするんだけど、他団体との兼ね合いが難しいのかな。

あと郡司はどういう選手になりたいんだろう、と思った。
キャリア的にはもう中心でやらないといけないだろうに、なんか前座の呑兵衛キャラでお茶を濁してる感じがある。
呑兵衛でも真面目な試合ができる、って風に思わせないといけないと思うんだよね。
大日本のストロングJとか、NOAHジュニアあたり修行いって揉まれてきてほしい。

自分は1990年代からいろんな団体を追っかけて見てたけど、今にいたるまで一番長いスパンで見てるのがみちのくプロレスなわけで。
頑張ってほしいし、活気づいてほしい。
「覆面ワールドリーグ」は10月に開催されるというので、そのときはまた見に行こうと思う。


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