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2023日本シリーズと2012オリックスをつなぐ一瞬

日本シリーズ、盛り上がってまいりました。
第七戦に行くのは10年ぶりとか。
そんな久しぶりなんですね。

由伸魂の完投でタイに持ち込んだオリックス優位、みたいな見られ方してますがそうでもないと思ってます。
だってオリックスはリリーフ陣がかなり疲弊してるし。
山崎颯一郎は第三戦、第四戦でベンチ外れるくらい本調子でないし、宇田川は疲れてるし、阿部とワゲスパックは去年より悪いし。
そして宮城はシーズン終わりからCS、日本シリーズにかけてずっと抜群の内容なので、逆に「崩れるとしたら」そろそろなんですよ。
第二戦ほぼ完璧に抑えてるのが嫌なフラグになってますよね。

一方の阪神、最終戦で投げるのがCS投げなかった青柳というのが不安視されてますが、どのみち早い回から継投してくんだろうし、そうすると阪神のリリーフ陣の方が安定してるように見えるので、そうやって考えると五分五分くらいではないでしょうか。
最終決戦にふさわしい試合が見られるような気がします。

で、今日私がグッときたのが岡田監督が五回で1-4になったところで先発の村上を下げたあとに第二戦で負け投手になった西勇輝を使ったことなんですね。
西は第二戦で打たれたけど、とはいえ一年間ローテーションを守ったピッチャーです。
その投手を三点ビハインドの6.7.8回に投げさせた。

ようはここで試合を捨てたんです。
今日の山本由伸で三点差はほぼ絶望的で、それだったらリリーフ投手を休ませよう、そしたら第二戦で打たれて明日の先発に使うには不安のある西で、という判断に岡田監督は早い段階で舵を切った。
優秀な判断です。
普通はなかなかそこまでスパっと割りきれない。感心しました。

一方で私は西のことを考えてしまうんです。
オリックスは泥のような低迷期が長くありました。
というか、イチローがいなくなってからは20年くらいずっと低迷期だった。
途中、近鉄バファローズとの球団合併があって、それまでとは別の形態に変わってしまったけど低迷は変わらなかった。

西はそんな低迷期のオリックスで数年間エースを張っていたピッチャーです。
2012年の最終戦で西はノーヒットノーランをやってます。
ちなみにその年のオリックスの監督は岡田彰布です。
(ノーヒットノーランの時期は岡田が「休養」で外されていて、森脇浩司が監督代行になってた)
泥の中の希望みたいな選手でしたが、そんな西がフリーエージェント資格を取ると阪神に行ってしまいます。
しょうがないです。
当時のオリックスは泥だし、西が好投しても打線の援護がないまま負け投手、なんてこともよくありました。
そんな西が出ていって、同じく泥時代を支えたもう一人のエース・金子千尋も日本ハムに出ていって、ペンペン草も生えない荒野みたいになったオリックス投手陣で一人奮闘したのが山岡泰輔で、そして急成長したのが前年リリーフをやってた山本由伸でした。

なのでそこから四年経ち、今や日本を代表するエースとなり、このオフにもメジャーリーグへの移籍が確実視されてる山本由伸が投げてる裏で、かつてのエース西がイニングイーターをさせられてる。
なんて歴史のコントラストだろう、と思ったら代打でT-岡田が出てくるじゃないですか。
そう、かつて泥だったオリックスの四番を張ってた選手です。
 
10年前のオリックスは叩かれるとかそれ以前の「視界にも入らない」チームでした。
ガラガラの京セラドームで、夏場にはもう消化試合をやってるチーム。

そんな時代にエースと四番だった不遇の二人が超満員の京セラドームで、全国テレビ中継されながら対戦してるんです。
テレビを見ながら私はクラクラしました。
こんなことがあるのか、と。

見てますか森脇さん。
見てますか金子千尋に伊藤光、後藤光尊。
どこいったんだバルディリスとカラバイヨ。
おいディクソン元気か。テレビつけろ。大変なことになってるぞ。
一塁側ベンチにいるメンバーの中で唯一、泥時代を知る安達了一はこの対戦に何を思うんだろう。

思ってるうちにあっさりT-岡田がポップフライを打ち上げた。
そうだった。あんたは期待してると打たない人だった。

試合後の勝利監督インタビューで今や「名将」の地位もつかみつつある中嶋監督が「明日も応援してください!」と言うと京セラドームが「うおおおー!」みたいな大声援に包まれた。
すげえなあ。

俺はいま西勇輝に会って聞いてみたい。
ねえ、どう思う?
オリックスが、京セラがこんなになると思った?
思わないよね。 
だからといって、あんたが残るべきだった、とも思わない。
あんたがいなくなったから、由伸が出てきたわけで。
あんたはあんたで阪神で頑張ったわけで。
よかったんじゃないかな。
まさかあんたがその由伸の刺身のツマになるとは思わなかったけど。
でも、みんなどこかでそうなってくんじゃないかな。
いつかは由伸だって、引退するころには新進気鋭の選手のツマになるのかもしれないし。
 

少し語りすぎました。

明日はみんな野球見ましょう。


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