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3.17DDT後楽園ホール大会雑感Judgement2024〜旗揚げ27周年記念大会5時間スペシャル〜

DDT旗揚げ27周年記念大会は去年に引き続いて、後楽園ホールを昼夜貸し切っての5時間大会。
14時から始まって終わったのが19時40分くらいだったので結果的には5時間40分興行だったんですけど、休憩が2回あって、デスマッチの準備とかいろいろ隙間休憩みたいなのもあったのでそこまで「長いなー」という体感はありませんでした。
あ、7月の両国大会にエル・デスペラードが出るそうです。対戦カードは追って発表。
仲のいいクリスと組みそうな予感。

○オープニングマッチ “インターンレスラー”鈴木翼デビュー戦 30分一本勝負

高尾蒼馬 vs 鈴木翼

“インターンレスラー”ってどこにインターンしてるのかがよくわからないんだけど、株式会社サイバーファイトなのかな。
「インターンだからギャランティありません」という意味なのかな。そんな某人気書店の…なんでもないです。

鈴木翼、飯伏さんが好きなんだなーという格好と技。
今はコピーでしょうけど、これからオリジナルになってくんでしょうね。
CIMAが好きだけど一つ足らないBIMAだった高尾は何を思うんだろう。

○第二試合 高鹿佑也復帰戦 30分一本勝負

To-y&イルシオン&瑠希也 vs 夢虹&高鹿佑也&須見和馬

高鹿復帰おめでとう。
須見がKUDOみたいな見た目になってた。君が追いかけてるのはMIKAMIだったんじゃなかったっけ。

DDT32周年大会はこの中の誰かがメインなんだろうなあ。

○第三試合 30分一本勝負

大鷲透&ゴージャス松野 vs 石井慧介&川松真一朗

石井の入場曲をめちゃめちゃ久しぶりに聞いて10年位前のDDTを思い出す。当時はいつも石井が第一試合でした。
石井なあ。
これで終わっちゃうのかなあ。何かあるだろう。あってほしい。

先日、都議会だよりを読んでたら川松先生が都民税を減税させてはどうか的な質問を小池都知事(小池袋都知事ではない方)にしていたが、詳細忘れた。
なんか「そうねえ」みたいな質問内容で、プロレスも議員活動ももうちょっとインパクト欲しい。

○第四試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

スーパー・ササダンゴ・マシン vs 彰人

せっかく休みの日に楽しくプロレスを見に来ているのに出てくる話が「経営者として労働者の生産性を上げる」とかで、いったい俺は何を見せられてるんだろうと思ったがいつものマッスル坂井だった。
坂井さんはだんだん真面目な方にシフトしてきてよくない気がする。
もっと2000年くらいにタイムリープした不適切な人でいてほしい。

○第五試合 SCHADENFREUDE InternationalvsDAMNATION T.A! 30分一本勝負

クリス・ブルックス&高梨将弘&アントーニオ本多 vs 佐々木大輔&KANON&MJポー

ダムネーションはヒールなのに創作昔話「猫ミーム」を立ち止まって聞いてくれるんだ!
ハッピーハッピーハッピー♪

○第六試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

高木三四郎 vs 大家健

ガンバレ☆プロレスが3月いっぱいでサイバーファイトグループから離れ独立することになり、その前に大家が「この業界の親みたいな存在である、高木三四郎とどうしてもやりたい!」と訴えて組まれた試合。

プロレスに限らず、ある資本の下に入ってグループ会社でやった方が経営的には楽だけど、当然そのグループの意向に従わざるをえなくなる。
そうすると自分たちがやりたいこと、やろうとしていることの正反対を提示されることも出てきて、葛藤が生まれる。
そのときに自分たちが折れるか、そこから抜けて自分たちで食っていこうとするのか、大きな選択を迫られる。
大家健は独立という道を選んだ。
たぶん、誰もが「がんばってほしい」と思うだろう。

けど、「がんばる」だけじゃやっていけないよ、もっとしゃにむに、時には厳しくやっていけよおまえ。
高木三四郎はそういうメッセージを大家健に託したかったんだと思う。
インタビューで独立する大家に「何か欲をもってやってってほしいですね」と言ったことが印象に残る。
エネルギーとか欲望がないと小さな組織は進まないよ、と言っているように聞こえ、同じく小さな組織を束ねる自分もハッとさせられる言葉だった。

試合は一方的に大社長が大家を攻める。大家はやられるままだ。
セコンドについて、ガンプロの仲間たちが声を枯らして大家に声援を送る。観客も大家に送る。

ああ、やっぱり大家は最後の最後までこうなんだな、と思った。
団体の長になってこれから引っ張っていかないといけない人が、7月で休養すると宣言している54歳のレスラーに試合を作ってもらっている。
そう見えてしまった。
もっと大家がどっしりかまえて、そこにセミリタイアに向かっている高木さんが奮起して当たっていく、ちょうど一年前に竹下幸之介と当たったシングルマッチのような試合が2024年の今ならあるのかなと思ったら、そうじゃなかった。
今までどおりの高木三四郎vs大家健だった。
まあ、この形が一番収まりいいのかな、と思ってたところで仲間たちの声援を受けて奮起した大家がスピアーで3カウント奪って勝利。やっぱり収まりがいい。
もうすぐ休養に入るのに、こうやって悪役に回れる高木さんがすごいなと思った。

大家健と高木さんの話で私が好きなのは、ガンバレ☆プロレスを旗揚げする記者会見か何かで、黒いスーツを来てきた大家が会見に出ようとする前に高木さんが「おい大家、ちょっと待て」と呼び止めて、じーっと見てからシャツのボタンを上から2つはずして「これで行ってこい」と送り出したエピソードで。 
これ以降しばらくの間、大家は客前やメディアにスーツ姿で出るときは必ずシャツのボタンを二つはずして出るようになった。

大家本人が言うように、「大家健」というレスラーは高木三四郎あって生まれて、作り上げられた。
これから大家は自分も、ガンバレ☆プロレスという自分の団体も、高木三四郎のいないところで作り上げていかなければならない。
試合後、高木さんは大家に『卒業証書』を読み上げて手渡した。
DDTからの巣立ちをこうやって見届けるのは何人目だろう。
飯伏さん、入江、木高イサミ、古くはGENTAROや佐々木貴。
いろんな人が高木さんから巣立っていく。
高木さんはそれを20年以上、ずっと見ている。
その寂しさは足を止めたときやってくるだろう。
足を動かしてるあいだは、寂しさを感じる余裕がない。

○第七試合 スペシャルタッグマッチ 30分一本勝負

樋口和貞&納谷幸男 vs 石川修司&ヨシ・タツ

石川修司DDTおかえりマッチ。
ヨシタツと組むと全日本臭がするようになりました。

4人とも上背があり、ぶつかると迫力があるスーパーヘビー級のタッグマッチ。
最後は石川が樋口を力で圧倒。強い!全然衰えてない!
これは石川が本格参戦するとまた面白くなるかも。

○第八試合 KO-D6人タッグ選手権試合~ベルトコントラ解散 60分一本勝負

<王者組>秋山準&男色ディーノ&大石真翔 vs 平田一喜&土井成樹&青木真也<挑戦者組>

※第53代王者組4度目の防衛戦。
※挑戦者組・ずんちゃ♪マッスルサバイバーが敗れた場合、ユニット解散となる。

10年前にタイムスリップして、2014年のプロレスファンに「10年後DDTではこんな試合が真ん中くらいで組まれます」と言っても「はい???」しか返ってこなかったと思う。
歴史ってすごいよねえ。
偶然の産物が異次元を生み出すというか。

先月から始まった平田一喜&土井成樹&青木の新チーム「ずんちゃ♪マッスルサバイバー」が負けてあっさり解散。でしょうね…。
土井がここ一年くらいですっかりお笑いプロレスの才能を開花させるようになりました。
こんなに適性あるとは思わなかった。
でも大鷲もシリアスぽく見えてお笑いの適性あったし、ドラゲーの人はみんなそういうのできるのかな。

○第九試合 DDT EXTREME選手権試合~痛みを呼ぶジャングルデスマッチ 60分一本勝負

<王者>勝俣瞬馬 vs 岡谷英樹<挑戦者>

※第59代王者の初防衛戦。
※ロープエスケープ、場外カウント無し。デスマッチアイテムの使用が認められるとともに、4つのコーナーが“刺さる”コーナーとなり、リングが“痛みを呼ぶジャングル化”される。

勝俣が試合中の怪我で欠場することになったきっかけが岡谷とのデスマッチ戦で、それがあったから「復帰したら必ずお前(岡谷)とやる」と言ってて、それがようやく実現した試合。
デスマッチも時代の流れで使うアイテムのトレンドが変わっていくんだけど、2020年代は画鋲と竹串がスタンダードなのか、と実感する。
痛いけど、遠目にはわかりにくいよね。
つくづく球場のような遠目でも見てわかる「電流爆破」って一大発明だったな。

ササダンゴさんの言う「短い試合時間で高い試合満足度=プロレスの労働生産性を上げる」って、デスマッチのことじゃないかなと見てて思った。
まあ大日本のデスマッチも結局メインになると長い時間やらざるをえなくて、労働生産性は下がるんだけど。
これからデスマッチってどういう流れになっていくんだろう。

○第十試合 KO-Dタッグ選手権試合 60分一本勝負

<王者組>遠藤哲哉&飯野雄貴 vs 本田竜輝&安齊勇馬<挑戦者組>

※第82代王者組の初防衛戦。

一応「DDTvs全日本」の対抗戦なんだけど、全日本勢にブーイングが飛ぶわけでもなく、むしろ「アンザイー!」とか声援も多くて、ギスギスした対抗戦というより「コラボ試合」みたいな感じだった。
もう双方のファンが相手のディスり合いとかやらないんだな。

両チームのリズムがすばらしく噛み合って、めちゃめちゃ盛り上がった好試合。
考えたらどちらの団体もコーチングの半分は秋山準の教えが入ってるわけで、試合スタイルとしては親戚みたいな感じなのかもしれない。

となると、そろそろ満を持して宮原健斗DDT初参戦が出てくるだろうか、
誰とやらせるといいのかなあ。
樋口とか納谷あたりいいかも。それか平田一喜。

○第十一試合 DDT UNIVERSAL選手権試合 60分一本勝負

<王者>MAO vs 正田壮史<挑戦者>

※第12代王者6度目の防衛戦

MAOが正田に「おまえにUNIVERSAL背負う資格あるのか?」みたいに突っかかってたのだが、試合も5分弱で打撃でKOするのはびっくりした。
正田にはこのあたりで一回挫折を味わせるタイミングだな、って考えたのかもしれない。
それは長い目で見れば買っている、ということなんだけど。

正田は悔しいと思う。
その悔しさは成長して晴らすしかない。がんばれ。

○セミファイナル スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

KONOSUKE TAKESHITA vs 青柳優馬

唐突に組まれた感のあるDDTvs全日本プロレスの若手エース対決。
なぜこれが組まれたかというと竹下が去年の秋にnoteの有料投稿で書いた「いつか戦ってみたい選手」の中に青柳が入ってたから。
ってそういうのを雑誌とか公開型のメディアでなく、有料noteという半ばソーシャルなコミュニティで発しちゃうのが2020年代のプロレスよね。
もちろん、書く段階ではその先どう転がるかわからないから内向きのところでポソッと言うのだろうけど、やっぱりそこから発してると今一つ盛り上がらない。

竹下が青柳と戦いたい理由としては、

・受けを中心とした伝統的な「全日本」のプロレスをしている。見ていて試合のリズムがよい
・自分と同い年、キャリアも近い中で、現状の格、構図といったものを「何くそ!」とひっくり返そうとしている

あたりに共感を覚えていつか戦ってみたい。そんな話でした。

で、指名された方の青柳がどうかというと、これがまた見事に竹下に興味を持ってない。
なんだったら興味あるのは高木三四郎の経営術の方らしく。

青柳…そういうところだよ!
あのね、君が気にしてる宮原とか諏訪魔とか勝彦とか、みんないいレスラーだよ?いいレスラーだけど、2024年時点での世界的なランキングは圧倒的にKONOSUKE TAKESHITAの方が上なの!
世界で名を挙げるチャンスなんだから、なんでもいいから因縁ふっかけて上手く転がせよ!
受け身なのは試合だけでいいの!

けどこれは青柳に限らず、2020年代の選手の特徴かもしれない。
興味が自団体の中だけで完結してて、外にはないという。
そんなことを感じさせた試合までのやりとり。

先に入場の青柳、なんとドラマチックドリーム号(ランブル戦で高木三四郎がよく乗ってくる装飾のゴテゴテした自転車)に載って入場。
いや面白いけど…君は全日本の人なんだから、もっとそういう相手のスタイルを否定してよ!
前にサイバーファイトフェスで当たった拳王もそうだけど、プロレスファンに戻るな!
つくづく、コラボの時代だなあ。

一方のTAKESHITA、雰囲気あるなあ。ほんと、「DDTの人」というより「強豪外国人選手」みたいな感じになってきた。

で、試合はTAKESHITAが押しつつ、完全に青柳の試合だった。
受けて、回して、主導権を握るという。
これはTAKESHITAがそうやった方が盛り上がると思って合わせたんだろうか。
見事すぎるくらい青柳が試合をコントロールしていた。
この試合の中継解説は秋山準、青柳のかつての師匠筋で、TAKESHITAのかつての壁になった先輩だ。秋山がそこで何を話したのか気になった。

最後はTAKESHITAが力で完勝。
面白かったけど、想像の外には出ていない。
TAKESHITAのこの試合への評価も、青柳の感想も、両方が気になった。
令和のコラボ試合、簡単そうで難しい。

○メインイベント KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負

<王者>上野勇希 vs HARASHIMA<挑戦者>

※第82代王者3度目の防衛戦。

去年11月にクリス・ブルックスに勝ってKO-D無差別を戴冠してから、この4か月間の上野はすばらしかった。
シングルリーグ戦・D王グランプリを力で勝ち上がってきた納谷にタイトルマッチで完勝。
会社の反対された男色ディーノとのタイトルマッチを社長を説得して実現させ、そこで過去一番レベルで奮起して向かってきたディーノのプロレスをすべて受け止めた上で勝利。
THE RAMPAGE武知海青のプロレスデビューを上手くサポートして、会場に来たTHE RAMPAGEのファンにプロレスの楽しさを伝える役割を全う。
そして今回の旗揚げ27周年記念大会のメインイベントの相手に、DDTで長くエースの座にいたHARASHIMAを挑戦者として迎え撃つ。

試合のクオリティ、発言、歴史を尊重する態度。すべてがこちらの想像以上。
正直、ここまで上野が短期間で「エース」になるとは思わなかった。
竹下が習得するのに5年かかったものを上野は1~2年で習得してしまったように思える。横で見ていたとはいえ。

一方のHARASHIMAはここのところ「後進に譲る」ポジションを務めていた。
タッグでは吉村直巳を育てる役回りに務め、前座に回る機会も多くなった。
リーグ戦ではかつてのように勝てなくなった。

それでもHARASHIMAは常にベストコンディションを保ってきた。
今年2月、同世代の盟友だった坂口征夫が引退を表明したとき、最後の相手に指名したのがHARASHIMAだった。
HARASHIMAは坂口と最後までバチバチ張り合い、そして坂口は「HARASHIMAさん、あとはたのみます」と告げて、DDTのリングから去った。
HARASHIMAが上野の持つKO-D無差別に挑戦を表明したのは、その直後のことだ。
上野にマイクを向けられたHARASHIMAが口にしたのはいつもの「鍛えているから」ではなく、「殺ってやるよ」─坂口征夫の決め台詞だった。

試合はすばらしかった。
49歳とは思えない速さで動けて、強い攻撃を繰り返したHARASHIMA。
上野はそれに耐え、逆にHARASHIMAを追い詰めていく。
「DDT新旧エース対決」と評された今回のタイトルマッチは、蓋を開ければ「二人のエース」のタイトルマッチだった。

終盤、HARASHIMAが動けなくなっていく。
ここまでか…というところでコーナーから走ったHARASHIMAが坂口征夫の得意技である『神の右ヒザ』を出して、直後に蒼魔刀を出したとき、声が出た。
勝て、勝ってくれ…!と思ったが上野はカウント2で返し、最後はWRでカウント3。
HARASHIMAのいいところをすべて受け止めた末での上野の完勝だった。

上野が終盤、突進してくるHARASHIMAの背後に飛びついて回転式のスリーパーホールドを決めた。
あれは以前、上野とUNIVERSAL選手権試合を戦い、現在は足の重篤な怪我で長期療養中のカーラ・ノワールのブラックアウト・スリーパーではないか。
上野も、HARASHIMAも、いろんな人の思いを背負いながら戦っていた。

興行の最後、マイクを持った上野は先日がん腫瘍が見つかり、治療のため長期欠場が決まった岡田佑介のことを話した。
プロレスは、一人じゃできない。
多くの人間とともに、できるもの、やっていくもの。
そんなことを上野は訴えた。

そうだよな。
いろんな人がいて、支えられて。
それはプロレスだけじゃなく、人生自体がそういうものだから。

上野のセコンドにはいつものサウナカミーナのメンバーがいたが、HARASHIMAのセコンドには今日試合の組まれていなかったヤス・ウラノと、直接的にはHARASHIMAとチームを組んでるわけでない同世代のササダンゴマシンがついていた。
誰でも、誰か、支える人がいる。
プロレスは普段見落としてるものを気づかせてくれる。
MISIAの「INTO THE LIGHT」をBGMに、心地よい気持ちで後楽園を出る。
外の気温はもう春だ。

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