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3.21DDT後楽園史上最長5時間スペシャル雑感

DDT春のビッグマッチ。
今年は両国国技館でも大田区総合体育館でもなく、後楽園ホールを昼夜ぶっ通しで行うロング興業という新しい形。
実際には14時開始で終わったのが20時近いという、6時間興業でした。
楽しかったし超ボリュームあったけど、背もたれのない北側客席で見たので若干疲れたかな…。
休憩2回入る大会なんて初めてでした。

インフルエンサーのちいたんがプロレスデビューするそうです。
って、ちいたん知らなかった…いろんなインフルエンサーがいらっしゃいます。
結構自己啓発ぽいこと言うのね。

ちいたんがリングでいろいろしゃべってると、いったい何が気に食わなかったのか途中でクリス・ブルックスが出てきて襲撃。
日本語で「コロシマス」と恐ろしいことを言ってました。
デビュー戦は5/3の横浜大会だそうです。
ところでポコたんは試合しないの?

○ダークマッチ イルシオン&エル・ユニコーンDDTeeen!!卒業試合 15分一本勝負
イルシオン&中村宗達 vs エル・ユニコーン&今井礼夢

ユニコーンはこの春に中学卒業、中村は21歳の現役大学生だそう。
若い…!
あとプロレスの形がだいぶ昔とは変わってきたね。
馬場と猪木の時代には、そんな高校生や大学生が学校通いながらリングに上がるなんてあり得なかったわけで。

ユニコーンは今後マスクを取って素顔でやってくそうです。
 

○オープニングマッチ 30分一本勝負
高鹿佑也&石田有輝 vs 小嶋斗偉&須見和馬

そろそろ高鹿と小嶋は2人でタッグ組んで上の人たちと戦っていいんじゃないかな。
もしくは武者修行とか。

○第二試合 平田一喜デビュー13周年記念試合 30分一本勝負
平田一喜&ヨシヒコ vs 石井慧介&高尾蒼馬

2008年~2010年ごろデビューの、かつて若手通信と呼ばれていた世代の3人にヨシヒコ先輩が入る記念試合。
平田&ヨシヒコ組でKO-Dタッグ挑戦とかすればいいのに。

○第三試合 第4代O-40王座決定3WAYマッチ 60分一本勝負
大石真翔 vs ゴージャス松野 vs 川松真一朗

大石さんがいなかったら成立しないような試合。
なんだかんだでDDTには松野さんがずっと残っている。

○第四試合 フェロモンズvsフェロモンズ討伐軍全面対抗戦 30分一本勝負
飯野“セクシー”雄貴&男色“ダンディ”ディーノ&今成“ファンタスティック”夢人&竹田“シャイニングボール”光珠 vs 彰人&大鷲透&大和ヒロシ&岡田佑介

フェロモンズの試合が先日YouTubeでバンされた影響でか、今林GMから「脱いだら反則負け」というプロレス史上聞いたこともないルールが課せられる。
が、それで脱ぐのは大和ヒロシという斜め上のオチ。

声出しOKになって観客がみんなで両腕突き上げながら「セクシー!セクシー!」とコールするの楽しい。

○第五試合 スペシャルタッグマッチ 30分一本勝負
スーパー・ササダンゴ・マシン&アントーニオ本多 vs マックス・ジ・インペイラー&ハイディ・ハウイツァ

当初未定だったササダンゴ&アントンの相手は、
先日東京女子プロレスに参戦したウェイストランド・ウォー・パーティの2人。
こんな方たちです。

いやいや、東京女子ってアイドルみたいな細い体型の人たちが多いのに、どうやってこの2人と対戦したの…!とそっちが気になりました。

ダンゴさんのパワーポイントは「ウェイストランド・ウォー・パーティ仲間割れ大作戦」。

「仲の良い2人を仲悪くさせるには、どちらか1人にだけ優しくする」という悪魔的なアプローチで、マックスにだけ好物のツナマヨおにぎりや、ササダンゴプラモデルをあげたりして(秋葉原巡りが趣味らしい)、それを見たハイディが「what?私には!」みたいになることは成功しつつも、試合自体はきれいに負けていた。
さしあたって試合中、指についたごはん粒をしゃぶるように食べていたマックスが愛らしかったです。

○第六試合 赤井沙希デビュー10周年記念試合vol.1 30分一本勝負
高梨将弘 vs 赤井沙希

赤井さんのデビュー10周年記念試合第一弾はかつて酒吞童子で同じチームだった高梨とのシングル。

そっか、赤井さんってデビューしてもう10年なんだ…と時の流れの早さに感慨深くなりました。
どこまで本気でプロレスやるの?という当初の空気を思えば、ここまで続いたのは本人の努力と、献身的な姿勢と、団体が「いていいんだよ」という環境を作ったことが大きかったんじゃないでしょうか。

女子一人の時は控室も用意できないから会場によってはトイレで着替えたとかそういう話を聞くと、赤井さんも気持ちを前向きにもっていくのが大変だった時期があるような気がするんだよね。
わかりやすくプッシュされてたわけでもないし、手に余るような時期もあったし。

そんなこちらの思惑をよそに、試合は高梨が試合の大半をコントロールしながら最後に赤井さんの得意技ケツァル・コアトル一発で逆転負け。
高梨は女子選手でも、小学生でも、ろくにプロレスのできない外国人選手でも、どんな相手でもプロレスを成立させられて、本当に素晴らしいなと思う。
高梨vsホウキとか実際にできそうな気がする。

○第七試合 30分一本勝負
HARASHIMA&中村圭吾 vs 坂口征夫&岡谷英樹

HARASHIMAが岡谷に勝ったのに中村がタッグ挑戦をアピールする、不思議な流れ。
中村のこの空気の読まなさは才能だと思う。

○第八試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負
町田光 vs 正田壮史

正田、買われてるなあ。
キックボクサーの町田光が準レギュラーくらいになってきた。

○第九試合 スペシャル6人タッグマッチ〜CHARISMA RETURNS! 30分一本勝負
佐々木大輔&MJポー&KANON vs クリス・ブルックス&ドリュー・パーカー&新納刃

欠場を続けていたカリスマの復帰戦。
欠場理由がいまいちよくわからなかった。
新納刃さんa.k.a.円華さん、久しぶりに見ました。見た目年取らないね。

試合後、「俺はこれを決めるために休んでいたんだ!」とカリスマが発表したのは7/23両国国技館でのvsエル・デスペラード戦!
会場が悲鳴のような絶叫で包まれました。

これは楽しみだなあ!


○第十試合 DDT EXTREME選手権試合 60分一本勝負
<王者>秋山準 vs 鈴木鼓太郎<挑戦者>
※第56代王者4度目の防衛戦。
※通常のプロレスルール。

ここまでスーパーササダンゴマシン、アントーニオ本多、彰人らと変則的な試合をずっとやってきた秋山が「たまには普通の試合がしたい」という理由で組まれた、NOAHの後輩である鈴木鼓太郎とのタイトルマッチ。

鈴木鼓太郎と秋山って近いところにいたようなイメージあるんですが、直接の師弟関係ではないそうで。
鼓太郎に対して「受け身取ってから起き上がるまでの動きが、あいつは三沢さんによく似てるんですよね」という秋山のコメントが印象的だった。

試合は「正しいNOAH」って感じがした。
今のNOAHというより、ディファ有明でやってた頃のNOAHセミ前くらいでやってそうな試合。
グラウンドを長くやって、最後ちょっと意外な技。
(リストクラッチ式のエクスプロイダーの態勢から後方回転して3カウント取る抑え込み技)

こういう試合をDDTでやってるのが不思議。

○第十一試合 DDT旗揚げ26周年記念スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負
高木三四郎 vs 竹下幸之介

「竹下が入ってきた2012年くらいに、DDTの25周年(=2022年)は東京ドームで大会やって、そこのメインは飯伏vs竹下ってのが僕の中のイメージであったんですよ。
それが終わったら、現役終わってもいいかなって。
そうなったら引退試合を竹下とやろうと思ってたんです。
けど実際は、そうならなかった。
ちょっと違った形で、武藤さんの引退興行を(サイバーファイトが)やって、気持ちがプツッと切れた部分があって。
そんな時に竹下から対戦を要求された。
これはそういう気持ちを断ち切って、フィジカルをベストに戻して、勝ちにいかないとなって」

高木さんにとっての竹下幸之介は単なる一相手でなく、「理由」を持った試合でないとやる意味がない相手だったのだろう。
そしてその「理由」に思い描いたのが自身の引退試合という冠で。

一方の竹下は「高木さんはプロレスの世界のお父さんであって、これは一度きりの親子喧嘩」と語った。
竹下は竹下で自身がレスラーとして成長していく曲線と、高木さんの加齢によるコンディションの曲線が交わるタイミングがここしかない、と思ったのだろう。

53歳の高木さんは28歳の竹下に正面からぶつかっていった。
鋼のような肉体を持つ竹下を、場面場面で押し込んでいく。

しかし時間が過ぎていくと、竹下が徐々に圧倒していく。
高木さんは反撃しようとスタナーを打つ。
竹下は倒れない。
またスタナー打つ。
竹下倒れない。

高木さんは何回も何回もスタナーを打つ。
かつてフィニッシュを取った技も、今の竹下には通じない。
それでも打ち続けるのを見て、だんだん胸が熱くなってくる。

自分はこういうことができるだろうか。
自分よりはるか年下の人間に「弱い」と思われることから逃げず、、今の等身大の自分を見せられてるだろうか。

中年になるともう痛い思いをしたくないし、年下の人間に弱いところを見られまいとしてしまうし、今の自分を直視する場からは逃げ出したくなる。
けど、誠実ってそういうことじゃないよな。
現実に向き合って、時の流れを受け入れながら、それでも戦うことだよな。

高木さんの動きが止まる。
竹下の強烈なヒザが入る。
カバーするがカウント2で返す。
起き上がるとまた強烈なヒザが飛んでくる。
それもまた返す。

だんだん、竹下がつらそうな表情になってくる。
顔に「もうこれ以上やりたくない」と書いてある。
「来い竹下ー!」と高木さんが叫ぶと、意を決した竹下がこれまでで一番強烈なヒザを叩きこむ。
うわあ!とつい叫んでしまった矢先、高木さんは起き上がってスタナーを放つ。今回は竹下が倒れた!
両者ダウン。
満員の後楽園ホールが地鳴りのような歓声に包まれる!


カウント6ぐらいで竹下は立ち上がるが、高木さんは起き上がれない。
カウント9で少し起き上がろうとするが立ち上がれず、そのままカウント10。
KO決着だった。


こんな試合を、やるんだ。やってしまうんだ。高木さんという人は。
びっくりした。
今のトップである選手にこんな正面からぶち当たって、倒れていく試合をやるとは思わなかった。

竹下がマイクを持つ。
「ものすごく可能性の低いこともかもしれないですけど」とわざわざ前置きしてから、こう言った。

私はこの試合が組まれた時、これが竹下のDDT卒業になるのかと思っていた。
けど竹下は別れの言葉を言うことなく、むしろ未来を提示していった。
これが「高木三四郎の引退試合」にならないよう、“次”の可能性を具体的に示して。

竹下は優しいな、と思った。
高木さんが老け込まないよう、具体的な目標を提示して、リングを降りた。

その様子を会場北側のテレビ解説席にいた男色ディーノがなんとも言えない表情で見つめていた。
遠くの海を見つめるような、澄んだ表情でリングの二人のやり取りを見ている。
それは「男色ディーノ」というキャラクターが抜けている、一人の人間の顔だった。

○第十二試合 インターナショナルスペシャルシングルマッチ 30分一本勝負
サムライ・デル・ソル vs 上野勇希

カリストの名前で長くWWEに出ていたサムライ・デル・ソル、初のDDT参戦。
こういう人の相手はだいたい上野が務めるようになりました。

サムライ・デル・ソル、よく知らなかったけど素晴らしい動き。これは本物だわ。
スピードもあるけど動きのキレがいい。
けどそれに圧倒されなかった上野もまた素晴らしかった。

サムライ・デル・ソル、また見たいな。


○第十三試合 DDT UNIVERSAL選手権試合 60分一本勝負
<王者>土井成樹 vs 遠藤哲哉<挑戦者>
※第9代王者2度目の防衛戦。

土井の指名で決まったユニバーサル戦。
土井もまた動きが素晴らしい。
動きのメリハリをつけながら、ほどよく観客を煽る。
ずっと土井がコントロールする試合で、最後に遠藤が逆転する内容。

遠藤、もうそろそろこのあたりが相手でも「遠藤の試合」にしてほしいなあ。
試合をリードする土井の方にどうしても目が行ってしまう。

ともあれ遠藤、昨年6月の失神事件から軌道修正してようやくここにたどり着いた。
ユニバーサルでKO-Dとは違う価値感の試合をやって、ポジションあげてくれるといいんだけど。

○セミファイナル KO-Dタッグ選手権試合~エニウェアフォールルール 60分一本勝負
<王者組>MAO&勝俣瞬馬 vs 樋口和貞&中津良太<挑戦者組>
※第76代王者組4度目の防衛戦。

エニウェアフォールって久しぶりだな、と思ったら想像以上にハチャメチャで、想像の3倍面白かった。
しゅんまお、いい感じに「爽やか破天荒」タッグになりましたね。
もう説明より動画見てほしい。
場外に敷いた板の上に向かって合体技やったのは声出た。

これ以外にも何回も「ええー!」と叫んでしまった。
勝俣の階段落ちは目の前で見ました。痛かったと思う…。
毎回ずっとこういうタイトルマッチやってほしい。大変だと思うけど。

あと久しぶりに見た中津がすっかり悪い先輩顔になってました。
MAOや上野が入団した時に練習や生活指導をしてたのが中津先輩だったそうで、新人時代の先輩ハラスメントなエピソードを紹介されると半笑いで「ああ、そういうこともあったかもしれないですね」と言うのが恐ろしかったです。
MAOは一応先輩越え、ってことになるのかな。
中津には変な迫力があるのでぜひまた見てみたい。

○メインイベント KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負
<王者>火野裕士 vs 納谷幸男<挑戦者>
※第80代王者の初防衛戦。

プロレスは本当にずっと見てないとわからないもので、半年前には前座でくすぶってた納谷がメインイベンターになってて、アルバイト的にたまーにDDT出て6人タッグとかでちょっとだけ試合して帰ってた火野がDDTのチャンピオンになって団体を引っ張るような発言しているとは想像もつかなかった。

どうして納谷がこんな急成長したのか、火野裕士や秋山準の教え方がよかったとかあるんだろうけど、結局は昨年秋のD王グランプリで「頑張ればシングルでチャンスを与えられる」というのを納谷が実感したのが大きいのではないだろうか。
やっぱり前座の6人タッグで頑張れ、といってもモチベーションは高くできないだろうし。

納谷はD王グランプリで樋口を破って、上野には負けたものの2月の挑戦者決定戦でHARASHIMAを破って挑戦者になった。
半年前であれば「納谷のチャレンジマッチ」と見られてただろう組み合わせは、始まればスーパーヘビー級同志の迫力ある肉弾戦になった。
いや、とにかく納谷が強い!
こんなフィジカル強いんだ、という攻撃を連発して、あの火野裕士が正面から押されている。
火野が勝負所で見せる、手を腰の後ろで組んで「どこからでも打ってきなさい」ムーブを出すも本当に圧倒されてて、「ちょっとやめといた方が…」と思ってしまった。
私が火野の試合見ててそう思ったのは関本大介戦だけですよ。

終盤には蹴りを放った納谷に火野も蹴りで対抗。
火野の蹴りって初めて見たけど、すげえ迫力!
試合後に「蹴りは出しても壊れない相手にしか出せない(から普段やらない)」と話してるのが納得の打撃だった。

なんですかね、昔全日本で見たベイダーvsオブライトとか、石川修司と関本大介の試合とかと並ぶ、ただ「すげえ!」しか言えない迫力あるプロレス。
場所が後楽園だったのもよかったですね。

想像以上に火野が押されてて、これは納谷初戴冠だな…!と思ったら最後は火野が怒涛のラッシュ。
勝つ時は圧勝、負ける時は嘘のように淡白に負ける火野が執念を見せる試合。
いやー、それだけここで納谷には負けたくなかったんだなあ。

これは中継よりも会場で見ると堪能できるタイトルマッチでした。二人ともすげえ。

火野は助っ人みたいな形でDDTに参戦してるんですけど、タイトルマッチが名勝負ばかり。
ぜひ火野チャンピオン時代に見てほしい。

ってところで次期挑戦者に出てきたのが飯野“セクシー”雄貴!
これは予想外!
火野のセコンドの大石さんが「絶対に認めない!」と拒絶したりして保留のような状態で大会終わりましたが、これはこれで面白いんじゃないかなあ。
飯野が真面目に戦ったら結構いい試合になるんじゃないかと思う。

そんな旗揚げ26周年記念大会。
内容としては非常に濃くて面白かったけど、6時間はさすがに長いかな…。
できたらいつもの休憩込み4時間くらいでお願いしたいです。
けど春のビッグマッチっていいですね。
LiLiCoさんが引退して、遠藤が竹下に勝った両国国技館からもう一年。
帰り道、水道橋の桜が満開だった。

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