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5.29全日本プロレス後楽園大会雑感

久しぶりの全日本プロレス。
しばらく見ないうちに闘魂スタイルの人はいなくなっており、#ゼンニチ新時代 がやってきてました。

後楽園ホール、平日でもぎっしり超満員。
さらに観客が最初から出来上がってて、ちょっとしたことで沸く!すぐ沸く!
全日本、いつのまにこんなんなったの?
ちょっと前までタイトルマッチの大会でも空席あったのに…。
進化がすごいなあ。

第1試合 タッグマッチ 30分1本勝負

芦野祥太郎
綾部蓮
vs
大森北斗
羆嵐

綾部が全日本に入団したのは聞いてたが、久しぶりに見たらえらい華がある選手になってた。
見た人は全員思っただろうけど、完全に「岡田かずちか」が「オカダ・カズチカ」になった時と同じ雰囲気だよね。
全日本プロレスはいい人材集まるなあ。

大森北斗は鈴木みのるや中嶋勝彦と組んでた時はいいキャラクターになったなーと思ったのだけど、彼らがいなくなったらワンオブゼムに戻ってしまった。よくないね。
もっとやさぐれて、会社から怒られるようなことをたくさんやりなさい。

久しぶりに全日本で土井羆が見たいぞ。

第2試合 全日本プロレスTV認定6人タッグ選手権試合 60分1本勝負

【第7代王者組】
諏訪魔
尾崎魔弓
雪妃魔矢
vs
【挑戦者組】
鈴木秀樹
ZONES
ChiChi

しばらく見ないうちに諏訪魔がこんな上がりみたいなポジションになってた。
よかったですね女子に囲まれて。
雪妃さんは見るたびに露出が増えてくが、いろいろ大丈夫なんだろうか。
尾崎魔弓がすっかりスナックで「私も一杯ご馳走してもらっていい?」と言ってこちらの返事を待たずにハイボールを飲み出し、女一人で店を続ける苦労を矢継ぎ早に語りつつ、カラオケで中島みゆきの「ファイト!」を入れて歌い始めそうな感じの女性になっていた。堺屋太一さんはお元気ですか。
試合の流れに関係なくずっと持ってきたチェーンで対戦相手のEvo女の2人を殴っていく、いわゆるダンプ松本スタイルの試合をしていて、ちょっとEvo女の二人が気の毒になった。
 
Evo女の二人(ZONESとChiChi)は体格いいなーというのと、入場曲がAquaの“Barbie Girl” なのが素晴らしい。
フジテレビの「BEAT UK」という深夜番組を見ていた二十歳くらいの頃を思い出してしまう。

◆第3試合 シングルマッチ 30分1本勝負
青柳優馬
vs
黒潮TOKYOジャパン

先のチャンピオンカーニバルで青柳がイケメン(でいいよね)のジャケットを着用したことを皮切りになんだかんだ揉めだし、イケメンの実家の鍋屋黒潮(竹ノ塚の居酒屋)に行ってお父さんと記念写真撮ったりしたのを見たイケメンがまた怒ったりして、よくわからないが因縁が深まっていた。
この試合もいつもの明るく楽しいイケメンは入場までで、試合になったらイスを使ったダーティーファイト。珍しい。
イケメンにブーイングなんて初めて聞いたよ。
最後もレフェリーのブラインドをつく形でイス攻撃から3カウント。
「こんなんじゃやり足りねえ。来月の後楽園でノーDQ(反則無し)だ!」
と再戦アピール。

でしょうね、と思った。

だって普通にこの二人ならセミファイナルとかでいいわけじゃん。
それを第三試合ってのは、「汚い試合でもいいですよ。なんなら壊しちゃっても」という団体のメッセージだと思うんですよ。
つまりイケメンに荒らすだけ荒らしてもらい、なんなら流血させたり、欠場中の弟の亮生を襲ったりして観客を炎上させて、それを来月の決着戦の導火線にする、という。

けど、やっぱイケメンはそこまでやらないよね。
単純にそういうのが不得意なんじゃないかと思う。
だから荒らすとしたら青柳がやるべきじゃないかという気もするけど、これ基本的には青柳を再びランクアップさせるための抗争だと思うので、そうもいかないんだろうなあ。
イケメンにヒールをやらせるのが無理があるよ。


第4試合 アジアタッグ選手権試合前哨戦8人タッグマッチ 30分1本勝負

ライジングHAYATO
立花誠吾
MUSASHI
吉岡世起
vs
田村男児
佐藤光留
土井成樹
阿部史典

こうして見ると全日ジュニアも気がつけば多士済々になったなーと。
よかったです。
てかMUSASHI、おまえ妙に落ち着いてしまってないか。
異物感は残さないと埋没するぞ。
みちのくのファンはずっと気にしてるからな。

一番特徴のない田村男児が「真面目そうに見えて、よくわからないことでキレて言うことを聞かなくなる」面倒くさいキャラクターで、もうZ-generationXとか適当な名前つけちゃえばいいのに。

いつでもどこでも高いクオリティの試合をしている阿部史典がジュニアチャンピオンのライジングHAYATOにギブアップ勝ち。うれしい。
近く世界ジュニアのタイトルマッチやるそうです。
阿部はいつも頑張ってるから、少しはいい目を見てほしいなあ。


第5試合 NWA世界ヘビー級選手権試合 60分1本勝負

【王者】
EC3
vs
【挑戦者】
本田竜輝

あのハーリー・レイス、リック・フレアーが巻いていたプロレス界伝統のタイトル・NWA世界ヘビー級選手権。
全日本プロレスで開催されるのは1989年3月のリッキー・スティムボードvsタイガーマスク(2代目)以来、実に35年ぶりだそう。
ってちょっと待って、俺その35年前のタイトルマッチ、会場の日本武道館で見てたよ。35年も同じことやってるのか…。

その後なぜか新日本でときたま防衛戦やるようになり、10年ぐらい前もやってましたよね。
「コンニチワー、ニッポンジン!」という礼儀正しいようなそうでもないような煽りを毎回していたブルース・サープ社長はお元気でしょうか。

そんなNWA世界選手権、現在のチャンピオンはEC3。
世界的なゲーム博覧会か端末機種名みたいな無機質なリングネームですが、筋骨隆々のパワーファイターでした。
ほんとに君がチャンピオン?騙ってない?と調べてみましたが本当にチャンピオンでした。

※注:プロレスファンがこのサイト見始めると平気で30分くらい経過するので注意

試合前にはかのNWA世界チャンピオンが使っていた入場曲「ギャラクシー・エクスプレス」がちゃんと流れたが、会場で反応してた人はごく少数でした。しゃーない。
そんなリック・フレアー、ハーリー・レイスとかに興奮するような50代以上はもうあんま会場来てないんだろうなあ。
そもそも対戦相手の本田からして「NWAだか知らねえけどな!」と言ってて、
(本田…おまえの年齢だったら無理もないんだけど、一応は権威あるタイトルってことでこの試合やるんだから、今言うな…)
と下を向きました。

試合前にはわざわざ「NWAルールでは反則やリングアウト決着は王座が移動しません」と場内アナウンス。
そうだね、大事なことだから言っておかないとね。余分な混乱起こるし。
でも俺らリアルタイムで見てたときはそんな説明なかったけどね。
「世界のプロレス」で毎回リック・フレアーがニキタ・コロフとかに負けるんだけど「今のはレフェリー見てないところで反則攻撃あったなら無効」みたいに後から取り消しになって。
もうああいう毎回チャンピオンがヒートを買って、誰かこいつを倒してほしい!みたいなプロモーションできないんだろうなあ。

昔話が過ぎました。

EC3、まあまあ力強くて、勝手のわからない初参戦にしてはよかったんじゃないでしょうか。
ちょっとまだわからなかったな。
本田も上で使われるようになったけど、まだなんかモタモタするところも見受けられるし。
出かかりの田上か森嶋を思い出す。
このあと成長してくといいんだけど。

第6試合
世界タッグ選手権試合

【王者】
斉藤ブラザーズ 斉藤ジュン&斉藤レイ
vs
【挑戦者】
TheEnd パロウ&オディンソン


数年前の世界最強タッグに来て、中世ヨーロッパのグラジエーター感あるビジュアルと、破天荒な合体技で一躍外国人プロレスマニアの心をつかんだTheEnd、待望の再来日。
しばらくご無沙汰してるうちに暴走大巨人は解散してるし、ノムヤギも解散してるし、当時いなかった相撲上がりの兄弟レスラーコンビがやたら人気になってるし、まあまあ浦島太郎だったんじゃないでしょうか。

久しぶりの登場も破天荒ぶりは健在。
技の名前はわからんけど、両方のコーナーでそれぞれが対戦相手をパワーボムの要領で担ぎ上げ、それを空中に放り出してぶつけ合う謎の合体攻撃を巨漢の斉藤ブラザーズにも炸裂させて見事でした。むちゃくちゃやるよ!
試合は斉藤ブラザーズのダブルインパクトに敗れましたが、でかい4人がガッチャンガッチャンぶつかり合うのを見るのは「プロレス見てるなー」という感じで楽しかったです。

斉藤ブラザーズはこのあと6人タッグも狙うそうで、呼び込んだのは土井成樹。
母親の旧姓がサイトウだそうて(本当に!?)、3人で「サイトウブラザーズ」だそうです。
待て待て、ごまかされてるが決して「ブラザーズ」ではないだろう…いいのかもう。
兄弟対決で敗戦して以降、弟のレイに好物の甘いものを禁止されていた兄のジュンがこの勝利で解禁されて、饅頭とどら焼をリング上で食べてました。
そのうち「饅頭コントラ酒マッチ」とかやる気がする。


第7試合 メインイベント 三冠ヘビー級選手権試合

【第72代王者】
安齊勇馬
vs
【挑戦者】
宮原健斗(チャンピオン・カーニバル2024優勝者)

 

昨年秋以降、全日本は突然「闘魂スタイル」を名乗り出した中嶋勝彦に席巻され、よくも悪くも話題になったがハレーションも多く、これはどこに着地するんだろうと思ってたら3月の安齊勇馬との防衛戦で中嶋は敗れ、そのまま全日本からフェードアウトした。
正直、これが最初から予定してたものなのか、急遽そうなったのかまるでわからないが、とにかく安齊はキャリア1年6ヶ月、24歳にしてプロレス界メジャー三大タイトルの一つ・三冠ヘビー級チャンピオンになった。

ただ、勝ったとはいえ中嶋との試合は試合の90%くらい安齊がやられていて、中嶋が余裕を見せたところを一瞬の逆転で勝つ、意地悪な言い方をすれば安齊が勝つにはこれしかないパターンだった。 
なのでチャンピオンではあるが、まだそこまで「強い」というイメージは与えられていない。

そんなタイミングでシングル総当たりリーグ戦「チャンピオン・カーニバル」が開催され、優勝したのはここ7~8年、団体を引っ張ってきた宮原健斗だった。
宮原は優勝者当然の権利として、安齊の三冠に挑戦表明する。

こうして若きスターと、長く団体を牽引してきたエースがぶつかる節目のタイトルマッチが組まれた。
しかしこれは負けた方に明確に傷がつくマッチメイクだ。
安齊が負ければ「ほらね」という謗りを免れないだろうし、ここのところ大事な試合で勝てなかった宮原がここまで整った"復活の舞台”に上がった上で負ければ、これはもう明確に「時代の移行」になってしまう。
宮原はまだ35歳だ。
プロレス界のこれまでの常識でいえば、むしろここから団体エースとして花開くのもままある年齢だ。
にも関わらず、宮原は剣ヶ峯に立たされいて、自分より年齢が10歳下、キャリア14年下の後輩に挑むことになる。

試合は熱戦になった。
五分と五分。お互いが100%のフィジカルをぶつけ合う、全日本プロレスの三冠戦だ。
私はびっくりした。
まだキャリア1年8ヶ月である安齊が、もう「三冠戦」の試合をできていたからだ。  
デビュー1年半だと、普通ならアンダーカードで多人数試合に出たり、ベテラン選手にこてんぱんにやられたあと、次の試合に出る先輩選手のセコンドにつかないといけないキャリアだ。
なのに安齊はそのキャリアでメインのタイトルマッチを、メインの試合を「できて」しまってる。

私はプロレスのタイトルマッチで行われるようなロングマッチは、ある程度のキャリアを経ないとできないものだと思っていた。
けど、そういうものではないのかもしれない。
もちろん安齊に天分の才能があり、非常に努力もしたのだと思うが、もしかしたらロングマッチにもやり方のようなものがあって、ある程度教えられるのだろうか、と考えてしまった。

安齊の方が仕掛けは早かった。
相手の攻撃を受け止めて、その上で最後は自分のフィニッシュで仕留める。
宮原はチャンピオン時代と同じ試合展開を作っていた。
ところが最後の最後でシャットダウンスープレックスが決まらない。
中嶋からベルトを奪った安齊のジャーマンスープレックスを宮原はカウント2で返す。
しかし安齊はそこでひるまず、チャンピオンカーニバル中に作った、持ち上げて叩きつける新技を持っていた。
(「ギムレット」というそう)

どちらも負けられない試合は安齊が勝った。
そして宮原健斗は敗れた。
三冠のベルトを50代の永田に奪われ、後輩の青柳には勝てず、かつての先輩だった中嶋には2連敗した。
敗戦続きだった2023年を払拭するかのようにチャンピオンカーニバルで猛進し、再びポジションを上げて挑んだタイトルマッチで、「ゼンニチ新時代」を体現する若きチャンピオンに敗戦─。

あんまりだ、と思った。
宮原健斗は全日本プロレスここ十年の最大の功労者だ。
武藤敬司たちが去り、潮崎たちが去ったリングで、ガラガラの会場であっても精一杯戦い、試合後にはマイクで観客を楽しませる。
コロナ禍で観客が声援を送れないときでも、宮原は観客の手拍子だけでも盛り上がる方法を必死に考えいた。
彼は荒地のスターだった。

今、そのスターが、元いた場所まであと一歩のところまで登ってきて頂上に手をかけながら、彼に代わって頂上に立つ若き新しいスターに蹴落とされる場面を、私たちは目撃した。

キャリア2年弱で団体の柱を任される安齊は本当にすごいなという気持ちと、全日本プロレスは残酷なことをするなという気持ちが合わさった、一言で表せない気分で後楽園ホールを後にする。
けれど、この残酷さが、今後の宮原健斗の物語を作ってく上で、大きなレバレッジになる気もする。
屈辱は次章へのフックになる。
宮原健斗のここからのビッグカムバックを、心の底から期待している。

試合後、リング上で「この1勝だけで宮原健斗を超えたとは思っていない」とマイクで話す安齊のもとに、タッグパートナーの本田が祝福に訪れる。
そこにジュニアチャンピオンのライジングHAYATOが駆けつける。さらには綾部蓮も加わり、4人で新しいユニットの結成を宣言する。
みんな20代だ。
新しい時代の切り替わりの節目を実感する。
けど、それ以上に、新しい人に譲って退場する、こごまで背負ってきた人の方を目で追ってしまう。
全日本プロレスの何世代目かの移り変わりに立ち会いながら、自分はこういう節目をあとどれくらい見られるんだろうと考えて後楽園ホールをあとにする。


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