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7.10ガンバレプロレス大田区総合体育館大会「WRESTLE SEKIGAHARA」雑感

不穏な事件が起こる世の中ですがなるべく自分の半径5メートルの世界だけを見て生きていこうと思います。

というわけで日曜日にガンバレプロレス初のビッグマッチ「WRESTLE SEKIGAHARA」@大田区総合体育館に行ってきました。

2013年に大家健が1万5000円で設立したガンバレ☆プロレスも今年で9年目。
これまで1800人収容の後楽園ホールが一番大きい会場でしたが今回4000人収容の大田区総合体育館に進出。

30人も入ればいっぱいだった、市ヶ谷の南海診療所から始まった団体がここまで大きくなったことに、赤ちゃんの時から知ってる友達の子供が大学に入ったくらいの感慨があります。

今日は不織布マスク着用条件のもとに声出し可能。
ようやく声援が出せる!

久しぶりで感動にうち震えるかと思いましたが、最初は「あ、そうか声出していいんだ」という違和感があって、しばらくすると何も思わなくなる、という感じでした。
このまま前みたいに戻っていくといいなあ。

ガンプロというと前はオープニングで鈴木あみの『BE TOGETHER』にあわせて選手入場式をやってたものですが、今日はありませんでした。
ビッグマッチ仕様だったのだろうか。

○第一試合 因縁の四獣集いし関ヶ原~スペシャルタッグマッチ~ 30分一本勝負

石井慧介&入江茂弘 vs 木髙イサミ&石川修司

第一試合から俺のためのようなタッグマッチ。
もうこれがメインでもいいよ。
第一試合とは思えない激戦。

イサミと石川が組むのってユニオン以来ではなかろうか。
考えてみると石川とイサミと大家健がいたユニオンプロレスを知らない世代も増えてきている気がする。
あのころどうしようもなかった(今はそうじゃないのか、と言われるとわからないけど)大家がビッグマッチのメイン出て、そこの第一試合に自分たちが出る…ということについてイサミと石川はどんな感じなんだろう。

石井と入江は今もちょいちょい組んでるようだけど、直接二人のタッグを見るのは本当に久しぶりだ。
DDTでチームドリフをやってた頃が遠い昔に思えてしまう。
「ドリームフューチャーズ」だった二人も入江は34歳、石井は37歳になった。
入江は全日本でGAORATVチャンピオンシップを取ったりまだちょっと頑張ってる感あるけど、石井なー。
もうこれで終わりなのかな。
石井にはもう10年くらい歯がゆさだけを感じてしまう。

私がDDTを見始めた2009年頃にちょうど石井、安部行洋、平田一喜といったあたりが次々デビューして、そこに同世代の佐々木大輔、入江、翔太、彰人あたりも加えて「若手通信」という若い選手だけの興行を数か月に1度程度、小さい会場で行っていた。
あのころは石井が一番輝いてたんだけどね…。
ちなみに「若手通信」にはまだ若かりし頃の髙橋ヒロムやエル・デスペラード(の中の人と思われる人)とかも出てました。

試合後のイサミと石川のコメントが滋味あふれててよかったです。
「石井、いい選手だよ。でもいい選手だと、“いい選手”で終わっちゃうんだよ」っていう。

○第二試合 ガンバレ☆プロレスvs高岩軍団 30分一本勝負

岩崎孝樹&前口太尊 vs 高岩竜一&5代目ブラックタイガー

「本屋でキックボクシングがやりたい!」というどこかで聞いたことあるようなことを実際にやっていた

前口太尊さんがいつの間にかキックボクシングからプロレスに転向してガンバレプロレスに上がってるのは知ってたんですが、試合を見るのはこれが初めてです。
飯伏プロレス研究所所属。
まだあったんだ!
というか所長はいろいろ大丈夫なんでしょうか。

格闘技から移行した選手はだいたい格闘技な動きしかしないのが定番ですが、前口はちゃんとプロレスの技をやろうとしていて好感が持てました。
フィニッシュは旋回式ダイビングボディプレス。
とてもキックボクサーがやる技とは思えないが、所長に教わったそうです。
もう所長もガンバレプロレスに出たらいいのに。

1年前にガンプロを見に行ったときは岩崎孝樹がメインで、メインぽい試合をしてたので安心してたんだけど今日は第二試合のタッグマッチで、なんでこんな扱いなんだろう…?と疑問だった。
岩崎はDDTの樋口や上野と同じDNA世代で、彼らがもうDDTの中心なんだからガンプロも岩崎中心で回さないといけないと思うんですが。
第二試合に出ていい人じゃないよ。

高岩は元気そうだったけどブレーンバスターがちょっとあぶなっかしかった。
パワーファイター系な試合は年齢を重ねていくといろいろ難しくなってくるような気がする。
5代目ブラックタイガーは誰かわからない。
つーか浪口出してくれよ浪口。
ガンプロといったら浪口修だろうが!(机を叩く音)

○第三試合 ガンプロ名物3vs2ハンディキャップマッチ 30分一本勝負
ガンバレ玉川&島谷常寛&HARUKAZE vs 怨霊&YuuRI with 一般人 澤宗紀

ガンプロ旗揚げメンバーのばってん玉川改めガンバレ玉川、めっちゃ久しぶりに見たが相変わらず滑ってて、あーそうだこの人めんどくさいんだった…と別れた恋人に再会して「やっぱ会わなきゃよかった」みたいなことを思いました。

一般人澤宗紀は欠場して急遽ランジェリー武藤さんが呼ばれてました。こちらも懐かしいなー。
声が出せる客席から「今日の武藤は動きがいい!」という気の利いた野次が飛んでました。

○第四試合 ガンバレ☆プロレスvsEruption 30分一本勝負
渡瀬瑞基&春日萌花&冨永真一郎 vs 坂口征夫&赤井沙希&岡谷英樹

サイバーファイトフェスでイラプションに敗れた渡瀬が「もう一回!」と坂口に訴えて退けられると「俺の覚悟を見ろ!」と自ら髪を切り出して再戦を訴える、令和の飛龍革命みたいな展開で組まれた再戦。
いや渡瀬の飛龍革命オマージュは昨年の「まっする」が影響してるよね…ネタでやったことがネタじゃなくなるプロレス的展開。
今日は金髪坊主&後頭部だけ赤のラインを入れるという、「東京リベンジャーズ」とかでしか見ないような髪型で出てきました。

渡瀬は天龍プロでやった佐藤光留戦が評判よかったり、キャプチャーで元全日本プロレスの野村直矢と始めたユニット「REAL BLOOD」で呼ばれるようになったり、少し出てきた感じするね。
この人も岩崎同様、DNA世代でそろそろ一線に出てこないといけないキャリアになってきたのだが。

今日も坂口に劣勢になり、ダメかな…というところから反攻して、エルボー→抑え込み→カウント2→即エルボー&抑え込み→またカウント2→またエルボー&抑え込み…というエンドレスな攻撃を続けて3回目にカウント3奪取。
昔入江茂弘がやってたやつだ。
それで飯伏さんに勝ったんだよね。
渡瀬は入江と「RENEGADES」というチームをやってたことがあって、入江に心酔してた様子があったんだけどそれがこんなところに繋がるとは。
歴史がちゃんとつながっている。

渡瀬もそろそろメインでシングルとかやらないといけないよな。

○第五試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

まなせゆうな vs ウナギ・サヤカ

ウナギ・サヤカは2019年に東京女子プロレスでデビュー、その後スターダムに移籍している。
2ヶ月ほど前のガンプロ新木場大会に突如現れ、
「デビュー直後にまなせゆうなに負けたことだけが私の汚点。まなせを潰すことで黒歴史を塗り換えたい」
と主張、「WRESTLE SEKIGAHARA」での対戦が決まった。

ウナギの所属するスターダムは新日本プロレスと同じブシロードグループであり、東京女子やガンプロのサイバーファイトグループとは業界1位を争うライバル関係にある。
通常は交流しない関係性だ。
なので今回、ウナギがガンプロに出ることはそんな簡単ではなかったのではないかと思う。

にもかかわらずウナギはやって来た。
試合前の記者会見では胸元の空いた服を着ていたまなせを襲い、胸に噛みついた。
案の定、その様子は「女子レスラー巨乳を噛む」みたいなタイトルでSNSで拡散され、動画は視聴された。
その方法がいいかどうかはともかく、スターダム所属のウナギはガンバレプロレスの大会を一生懸命世間に届くようプロモーションした。
その根底には「多くの人に自分とまなせの試合を見てほしい」という思いがあったはずだ。

まなせゆうなは入団以来、献身的な姿勢でガンプロを支えてきた。
リング上で年下の選手を励まし、リング下では興業の進行やファンサービスに明け暮れる。
だから今回の「WRESTLE SEKIGAHARA」でもウナギが参戦してなければ第2試合の6人タッグとかであったような気がする。
ウナギが“禁断の扉”を開けてやって来たことで、まなせはガンプロ初のビッグマッチで後半戦に据えられる、大会の柱の一つである試合を任されることになった。

ということを考えていくと、いくらウナギが「黒歴史」とか「ガンバレガンバレ言ってるけど、頑張るのは当たり前だろ?」と毒づいても、根底には愛しか感じない。
そしてそれはまなせも感じていたのではないだろうか。

試合は白熱した。
スターダムで花形選手の一人になったウナギには華があり、それに対してまなせは力と激情で魅せる。
二人にしかわからないライバル心と、二人にしかわからない愛情が技の攻防から見え隠れする。
最後はジェイ・ホワイトのスウィッチブレードと同じ形の技でウナギが勝利した。

マイクを持ったウナギが
「(まなせが)ラストランって言うから、こうして来てやったんでしょ。そんな簡単にやめさせない。(通算成績が)1勝1敗になったんだから、私がスターダムでトップ取ったらそのとき決着戦やろう」
と言う。

それに対してまなせは
「ウナギがこんなに輝けてるのは、ウナギがたくさん頑張ったからだ。それはすなわち、ウナギも私と一緒でガンバレ☆プロレスってことだ!」
と勝手に仲間にしてしまい、「え、それ聞いてない…」みたいな顔のウナギを引き連れて二人で退場していった。
まなせが「ラストラン」と言ったことは曖昧になっててひっかかるが、いいエンディングだった。

なんかいいものを見た。
このあとメイン後のセレモニーに2人は並んで登場した。
先にリングを降りたまなせを後からウナギが「待って!」みたいな感じで小走りで追いかける。
ああ、本当にウナギはまなせのことが好きなんだな…と伝わってきた。


○第六試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負
鈴木みのる vs 勝村周一朗

勝村が格闘技を始めるきっかけになったのは中学3年生の時に藤原組の後楽園大会を見に行ったことだった。
そこで20代前半だった鈴木みのるを見て「かっこいい」と思ったらしい。
その後鈴木はパンクラスに移り、日本でも総合格闘技が始まる。
勝村は修斗に入り、そこで宇野薫とかと切磋琢磨しながらチャンピオンになったりする。
修斗を引退した勝村がプロレスをやるようになり、これも経験みたいに思って出たガンプロに継続して上がるようになり、だんだんとプロレスに慣れてくると「実は自分がこの団体で一番年上」という事実に気づく。
プロレスはまだ数年しかしてないのに、40代という年齢でなんとなく選手を束ねたり教えるようなポジションになると、「あれ?俺何がしたくてここに出てるんだっけ?」と迷うことが出てきた。
そんなときにガンプロがビッグマッチをやることになり、誰か戦いたい相手はいる?と聞かれたとき、頭に浮かんだのはあの中学3年からずっと憧れだったあの人しかいなかった──という煽りV。素晴らしい映像。

一方の鈴木、「いつも一緒だよ。東京ドームであろうと新木場ファーストリングであろうと、俺は目の前の相手をぶっ潰す。団体の差なんかねえよ」。相変わらずかっこいい。

今日は声出し可の大会だったので、鈴木の入場で観客が「か・ぜ・に・なれー!」と叫ぶのを3年ぶりくらいに聞いた。やっぱ歓声はいいなあ。

プロレスのキャリアではえらい差があるが、格闘技のキャリアは勝村にも長がある。
グラウンドになるとほぼ互角か、むしろ勝村が押してるように見えた。
あれ?これどっかでスパッと入ったりしない?みたいに期待してしまったが後半はもう鈴木のペースになってて、流れるように攻め込まれてゴッチ式パイルドライバー。
勝村、がんばったんじゃないでしょうか。

そして鈴木も50歳を超えてなお「俺の方が上だろ」というのを年下のレスラー相手に出すのは容易じゃないわけで、実のところ必死でやってるんだと思う。
まったく外に見せないけど。
そこがすごいよね。
試合終わったらやたらさわやかに握手してたんで、格闘技からプロレスに来た勝村には何か共感できるものがあったのかもしれない。

○セミファイナル スペシャルタッグマッチ~CDKvsROMANCE DAWN 30分一本勝負
クリス・ブルックス&高梨将弘 vs 翔太&高尾蒼馬

この試合がセミファイナルというのはやはり長年ガンプロを支えてきた翔太へのご褒美なのかな、とちょっと思った。
「ROMANCE DAWN」って名前はかっこいいけどチームとしては地味な感じ。
高尾はどこに向かってるんだろう…。

CDKが意図的にヒールぽいことして盛り上がる。上手いなあ。
最後は劣勢だった翔太が一瞬の雁之助クラッチで逆転勝ち。
あちこちに残るFMWの遺伝子。


○メインイベント スピリット・オブ・ガンバレ世界無差別級選手権試合 60分一本勝負
<王者>今成夢人 vs 大家健<挑戦者>
※第2代王者は初防衛戦。

ガンバレプロレス9年間の歴史を考えると初のビッグマッチのメインはこの二人、というのは理屈では納得するけど、いざ目にすると「大丈夫かな…大家」という不安がいっぱいあった。

旗揚げ直後に見に行ってた頃、ガンプロは「今成夢人が大家健を超えていく」団体なんだと思ってた。
プレ旗揚げ戦で浪口修に襲われたころの今成は映像カメラマンがメインで身体はヒョロヒョロで、ずっと浪口に罵倒されるがままで、そこに大家が「今成!おまえ、悔しくないのか!」と叫び、今成が泣きながら「悔しいです!」と答える、『スクール・ウォーズ』みたいな熱血さが団体の売りだった。

けど大家がメインイベンターとして成立してたのは旗揚げ3年目に初めて後楽園に進出した頃くらいまでで、そこからだんだん迷走が始まる。
しばらく団体の柱が定まらない時期や石井にメインを任せる時期を経て、ここ数年は肉体改造でたくましくなり、大谷晋二郎に見出だされた今成が中心になった。
対戦しなくても今成が上になってしまった。

なので今回の対戦が「大家と今成、最終章」とされてたのは納得いくと同時にもうライバルとか、師弟とか、そういう関係じゃないんだろうな…と試合前にわかってしまい、区切りのための試合なんだろうなと思った。

大家はがんばってたと思う。
が、もう今成は大家のはるか上に行ってて、先輩でありながらどこか大家のチャレンジマッチみたいな様相があった。

今成は立派なレスラーになった。
映像の仕事をやめないでずっと続けながらチャンピオンでエースになったのは本当に立派だと思う。
阿部史典との試合でZERO1後楽園のメインを張ったのが転機になったんじゃないでしょうか。

9年経って、ガンプロは名実ともに今成が中心の団体になった。
またここから変わるんだろうし、その変わり様をまた見て行きたい。
ガンバレプロレス、なんだかんだ、いい団体になったな。

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