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助産学生が思うこと#010

理解しているか~優秀優秀~
 じゃあお前ら 今から 内診台上がってみるか


『コウノドリ』第17巻で、産科医の四宮先生が言っている。

男性女性,年齢,職業にかかわらず
「妊婦さんの気持ち、理解している」と言う方を見かける。
それは実体験によるもの,かもしれないし
本を読んだから、かもしれない。

先生から「理解はできないけど、共感はできる」と言われたことがある。
それは、例えば
「痛い」と言う人の"痛み"を理解する(実感する)ことはできないが
「痛い」という気持ちを、「それは痛いですよね」「そのようなことがあれば痛いよな」と共感することは できる
ということだ。

例え妊婦さんでも、ある経験が、全ての人にあてはまる訳ではないので
その人の気持ちを《理解する》ことは難しいと思う。

勉強をしていると、その人の訴えが
単なる,症状の照らし合わせのように、感じることがある。
例えば
「痛い」という訴えに対し
「このような理由があるから、痛いんだ」と、
原因追及だけで、おわらしてしまうことがある。
つまり
その人の「痛い」という訴えを聞いて、
原因を追及しただけで、《理解した》という錯覚に陥りやすい
ということだ。

《理解する》にはどうしたらいいか。
とりわけ、人の気持ちを《理解する》のは難しい。
自分が、体験をしていたとしても、難しい。
ここでは
「その人の気持ち(ここでは、妊婦さんの気持ち)を理解することは難しいことなんだ。だから、簡単に理解できた,と思うのは、少し違うのかもしれない」
という認識があればいいな
ということを言いたい。

だからといって、「じゃあ、何も知らなくていい」ということでは全くない。
知っていれば、その人の気持ちに《共感》することはできる。

例えば
いつも夕食時には、お酒を飲む人が妊娠したとする。
その人は、妊婦だから,とお酒を飲むことを控えるだろう。
そこで、周囲のパートナーや同僚が
その人の前で「うまい、うまい」と言いながらお酒を飲んだらどうだろう。
これが、夫だったらどうだろう。
「疲れてるんだから、お酒を飲むのぐらい好きにさせてくれよ」と言うかもしれない。
でも、そしたら、お母さん(奥さん)は「私は我慢しているのに、なんで貴方は飲んでるの」と思うかもしれない。
もしかしたら、「自分だけ飲むのを辞めるのは、バカバカしい。私も飲んでもいいんじゃないか」と思うかもしれない。
それは、お酒を飲んだ,お母さんが悪いのではない。
お母さんが、今どんな状況なのか,知ろうとしなかったその夫が、いけないと思う。
"妊婦さんは、お酒が飲めない"
この事実を知っていれば
これによって、「普段からお酒を飲んでいる女性だったら…」とちょっとでも考えていれば
お母さんの気持ちに、共感できたかもしれない。

「妊婦さんの気持ちは理解している」という言葉は、本来違くて
「妊婦さんが、どんな状態なのか、知っている」という言葉の方が正しいのかな、と思ってる。

単なる言葉狩りかもしれないけれど
《理解》したつもりになっている ことは
その人の気持ちを傷つけている  ことと同じだとも思う。

「理解しているか~優秀優秀~
 じゃあお前ら 今から 内診台上がってみるか」

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