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こんなブログを書いてるのがバレたら吊し上げられるかもしれない

2023年9月18日、敬老の日。

御堂筋は工事中で歩道が狭くなっており、祝日スピードで歩く人達が、数分後にリハーサルの差し迫った僕を焦らせる。

でも大丈夫だ。

学生時代の体育の授業、特に球技で鍛え上げたドリブルテクニックで、群衆の隙間を縫い歩く。

サッカーだろうがバスケだろうが、一切パスを出さず、シュートも打たず、ボールをキープし続けた男だから成せる技だ。

ONE FOR BALL, BALL FOR ONE

一人はボールの為に、ボールは一人の為に

体育の授業で魂に刻んだ言葉を反芻する。

肉体を液体に見立てた極限の脱力からのダッシュ。

恐らくは僕を肉眼で捉えられた者はいないだろう。

そうして、BARキネマトスの扉を開けた。

キネマトスでは音楽のLIVEイベントの他にもSMショーをやっていると話には聞いていたが、壁にはロープ、幾重にも連なったカラビナがぶら下がっている。

その下には、アンティーク調の鞄。

あの中にはきっと壁にぶら下げておいてはいけない、とんでもない物が入っているのだろうと、妄想を膨らます。

この日オープニングアクトで出演されるあゆさんは(というのは後から知るのだが)、音響スタッフさんでもあり、軽い挨拶を交わしてリハーサルがはじまった。

SMショーが行われる店で働いてるという事は、あゆさんもSM関係の人なのだろうか。

しかし、わざわざ確認はしない。

「SMされるんですか?」

「いえ、私は音楽担当のスタッフでして〜」

という何の面白味も無い展開になる事を考えれば、脳内であゆさんを亀甲縛りしておいた方が良いに決まっている。

しかし、縛られる側では無く、女王様かもしれない。

普段、音響についてあまり口を出さない僕が、時間も結構ありそうだったので、音域や音量、リバーブについて色々と注文してしまった。

音響の世界では、ミキサーについているツマミの上げ下げ具合を、よく時計の針に例える。

丸いツマミを左に回せばマイナス、右に回せばプラス、ツマミの印が丁度上を向いてる状態を12時と表現する。

これによってミキサーを見ていないステージ上の人に、大体のメモリの位置を想定してもらえるし、ステージ上の人も音響スタッフさんに注文し易いのだ。

それを僕は靴下の長さでお伝えする。

ゼロが生足で、MAXがパンストだ。

「すいません、ボーカルのHighをニーハイで、Lowはくるぶし丈でお願いします」

と言った具合だ。

意思疎通に困難を極めた為、リハーサルを終えた今、女王あゆ様のご機嫌を取らなければならないのだが

壁にかかった拷問器具らしきものが目についた。

このままここにいては、女王あゆ様に

「テメー!訳わかんねー事言ってんじゃねーよ!」

と、荒縄のローズウィップ(※幽☆遊☆白書参照)、カラビナのネビラチェーン(※聖闘士星矢参照)を両手に、しばきまわされてしまうかもしれない。

想像しただけでガタガタと震え出してしまい、このままでは歌声にトレモロがかかってしまうと、心を落ち着かせる為に店を出た。

御堂筋を10分ほどドリブルすると、幾分呼吸も落ち着いてきた。

店に戻るとすぐ、僕をこのイベントに誘ってくれた銀ちょびさんが店の扉を開けた。

銀ちょびさんは、青く染めた髪が編み込んである。

縄っぽい。

きっと縛られる側の人に違いない。

もちろん例によって確認はしない。

それから、ナカジマキキさん、岡村雄大さん、フナフナさん、続々と出演者が集まりお店はオープンを迎える。

演奏後、銀ちょびさんが

「井野はん、ごっつ大きいステージのイベントで呼びたいですわー」

と言ってくれた。

お客さん動員生足にも関わらず、ありがたいお言葉だ。

しかし、こんなブログを書いているのがバレた日には、今後イベントに呼んでもらえないどころか、吊し上げられ、バチバチに痛めつけられるかもしれない。

どうか拡散は控えて頂くようお願いしたい。

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