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「世界に自慢できる学校給食」に 福島県喜多方市

子どもたちに自信を持って提供できる学校給食は、生産者と消費者の距離を縮め、食や農の大切さを知る役割も担っています。
福島県熱塩加納村(現・喜多方市)では、40数年前から地域住民が主体になって、子どもたちが「食」への楽しみや関心を高める学校給食の実現に取り組んでいます。


「世界に自慢できる」学校給食の実現へ

福島県喜多方市では、合併前の市町村時代からそれぞれの地域で特色を生かした学校給食の取り組みが行われています。
市では、子どもたちが食への楽しみや関心を高める給食の提供を進めるべく、2023年1月に「喜多方市学校給食基本方針」を定め、「世界に自慢できる」学校給食の実現に向けた取り組みをしています。
具体的には、地域の生産者団体との連携、地場産漆器の使用など、工夫を凝らしながら子どもたちが「食」への楽しみや関心を高める給食を提供し、2021年度の市産品活用率は46.8%でした。

熱塩加納地区の学校給食

旧・熱塩加納村時代、給食にお米が登場したころの1979年に週5回の米飯給食を導入。89年からは地元産の有機低農薬米(ひめさゆり米)を使用した完全米飯給食や有機野菜(まごころ野菜)の積極的な使用、厳選された無添加調味料の使用など、全国的に注目される取り組みが行われています。

ブランド米として販売しているひめさゆり米を学校給食に導入するために、当時は政府米の使用でしか認められなかった補助金を返上し、費用の増加分をJA、役場、父母と地域住民が負担することで実現しました。

まごころ野菜は、「家庭菜園の延長」という形で無農薬・無化学肥料栽培を農家にお願いし、無規格・無選別で農家が直接学校に納品するようにしています。

子どもと農家が心を通わせる工夫

だれが生産した野菜かが分かるように、生産者情報を書き込んだカードを栄養士が作成し、子どもたちが食材を通じて農家と心を通わせられる工夫もなされています。
このような取り組みの結果、子どもたちは美味しい給食を楽しみにし、残飯も少ない(3%以下)そうです。

学校田での無農薬米づくり

小学校に「農業科」が導入され、農家の指導で小学生が農作業を体験。食べものを育てることの大変さと自分で育てたものを食べる満足感を体験しています。
そして、子どもたちの学び、体験の場としての「農」の取り組みは、子どもを通して地域住民が農業の大切さ、おもしろさ、旬の味の体験、命の大切さを知る役割も担っています。

命の尊さ、自然のめぐみに感謝

熱塩加納地区はじめ市内の学校給食生産者団体は「地域の子どもたちのために安全・安心な食材を提供したい」との思いで協力しています。

学校給食に地場産物を活用した食育指導をすることにより、地域の身近な食材を理解し、郷土食や行事食などの食文化を知る機会となっています。さらに、感謝の心と郷土愛を育むとともに、食に関する知識や食を選択する力を養うなどの教育的効果も期待されています。 

※2023年12月に現地での聞き取り調査や入手した資料をもとに作成しました。

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