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組織的に新規就農者を育成ーーJAやさと有機栽培部会

新規就農者には、技術、農地、販路、自己資金、住居が必要となります。
JAやさとの研修制度「ゆめファームやさと」は、これらを兼ね備え、ほぼ間違いなく就農できる制度です。


生協との産直から消費者が求める有機農業へ

茨城県石岡いしおか八郷やさと地区が、全国でも有数の有機農業が盛んな地域になったきっかけは、1976年から始まったJAやさとと東都生協との産直です。タマゴ・鶏肉、そして1986年には野菜の産直が始まりました。
JAやさとの生産者と職員は、有機野菜を一品からでも消費者に届けるため「よりおいしい、より健康な、より豊かな野菜を食卓に」をモットーに有機栽培部会を1997年に、個々の農家の意思を尊重した手上げ方式で設立し、10名足らずの農家で国の有機ガイドラインを基準に、生産活動を始めました。

新規参入生産者を支える研修農場「ゆめファーム」

JAやさと有機栽培部会には、新規参入の農家を支援するという重要な活動もあります。きっかけは、生協職員が就農を希望したことです。「農家の後継者が育たないなか、農外に就農希望者がいるのであれば、前向きに育成を検討しました」と当時の農業部長柴山進さん。

1999年から180aの有機JAS認証圃場をもつ研修農場「ゆめファーム」を設置し、既婚の新規就農希望者を毎年1家族ずつ受け入れてきました。
研修は2年間。無料で提供された農機具を使って研修農場で野菜を栽培し販売します。

1年目は、栽培技術の指導をする有機栽培部会の担当生産者の圃場で、定期的に作業をしながら野菜の作り方を教えてもらいます。
他の生産者も研修農場の様子を見ます。研修生は担当生産者以外の生産者とも交流を持ち、不慣れな地域での生活についても相談できます。

2年目は独立に向けた準備期間。独立後の農地を借り、そこでの土づくり行います。住まいも決めなければなりません。これらに関して研修生の相談を受け、助言し研修後の独立を支えることが、有機栽培部会の役割です。

研修中の売り上げはJAの口座で管理され、研修終了後に就農準備金として支給されます。

JAやさと有機栽培部会と連携して、もう一組の新規就農者を育成

2017年、石岡市が廃校を活用し体験型観光施設「朝日里山学校」を開設。市がNPO法人アグリやさと(代表:柴山進)に管理運営を委託しています。
柴山さんは、JAやさとに勤務していた時に有機栽培部会の立ち上げ、研修農場「ゆめファーム」の設置など地域の有機農業の推進に尽力され、退職後も新規就農者の育成に取り組まれています。

周りの耕作放棄地1.6aを有機農業の圃場として整備し、農業に関心を持つ若者の就農支援と都市農村交流活動を行い、石岡市内で独立をめざす45歳までの既婚家族1組を研修生として受け入れ、2年間、JAやさと有機栽培部会と連携して実践的な有機農業の研修しています。

新規就農者が地域の力に

現在(2023年)では、JAやさと有機栽培部会の販売額は1.8億円に達し、部会員の9割近くが農外からの新規就農者が占めるまでになっています。
研修生の多くは30歳前後で就農するため、部会の年齢構成は若く、活力があります。子どもも多いので、保育所や小学校も維持され、農村地域を元気にしています。
農業後継者でなくても、有機農業で就農を希望する方が多くいます。ぜひ、ここでの研修制度を参考にしていただきたいものです。

参考文献

柴山進(2016)「有機農業に積極的に取り組むJAやさと(茨城県石岡市)」有機農業をはじめよう!地域農業の発展とJAの役割, 12-13, 有機農業参入促進協議会.

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