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土壌団粒と窒素安定同位体比との関係~生きものを育む土壌とは?


土壌団粒とは

土壌微生物、ミミズなどの土壌動物および作物の根のはたらきにより、土壌団粒が生成されます。
いっぽう、団粒の崩壊は、水分過少、過多時の耕耘、土壌の乾燥と湿潤の繰り返し、凍結と融解の繰り返し、粒子の結合剤となっている有機物の分解などによって絶えず起こっています。すなわち、畑地の土壌では絶えず団粒の生成と崩壊が行われています

ミミズ糞と窒素安定同位体比との関係

ミミズに摂食された土壌よりもミミズから糞として排出された土壌の窒素安定同位体比がが高くなることを紹介しました。

土壌粒子の形状と窒素安定同位体比との関係

ミミズ糞は土壌団粒の形成に寄与していることから、土壌粒子の形状と窒素安定同位体比との間に正の相関がある可能性が考えられます。
そこで、有機農業・不耕起畑の土壌を網目の異なる篩で土壌粒子の大きさごとに分離し、それぞれの窒素安定同位体比を測定しました(図)。

図 土壌粒子の大きさと窒素安定同位体比との関係

土壌の粒径ごとに測定値を比較すると、粒径が増すとともに窒素安定同位体比(δ15N)の値が増加しました。
大きな土壌団粒でδ15Nの値が増すことは、それだけミミズなどの土壌生物による物質循環的な作用をより強く受けた土壌であると思われます。

多様な食性の土壌生物の生活を保障する土壌とは

ミミズが種類によって異なる食性を持つことと併せて考えると、畑地の土壌動物の種類が豊富であればあるほど多様な食物網が形成され、土壌中の窒素安定同位体比が高くなっていることが予想されます。
窒素安定同位体比の高い土壌は、多様な食性の土壌生物の生活を保障する土壌(畑地)であるとも言えます。

参考資料

藤山静雄・藤田正雄・U. K. Aryal(2002)農業生態系の土壌圏-安定同位体比を用いて食物網を探る-.環境科学総合研究所年報21:59-64.


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