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社会的背景によって異なる技術の判断基準(2/2)

この記事は、「社会的背景によって異なる技術の判断基準(1/2)」の続きです。
先に紹介した堆肥・有機質肥料、化学合成農薬の利用という技術に加え、ここで紹介する、緑肥作物、混作、育種についても留意することが大切です。


「耕す」という技術

生産性の向上を第一とした技術では、養分の可給化と養分の作物への吸収を促し、高い収量を目指してきました。そのために、経済効率を第一として、耕耘、化学肥料の投入などによって収穫物よりも多いエネルギー量が投入されました。

耕耘は農地に棲息する動植物を排除し、生態系機能の低下を招きます。また、養分の可給化を促進し、窒素、リンの農地以外への溶脱を招き、環境汚染に繋がっています。風食、水食による表土の流出も問題となっています。さらに、耕耘は土壌中の有機物の酸化を早め、土壌貯留炭素が二酸化炭素として大気中へ揮散していきます。

「カバークロップ(緑肥作物)の利用」という技術

それ自身は収穫対象とならず、土壌侵食の防止や有機物の供給などを目的に、主作物の休閑期や栽培時の畦間、休耕地、畦畔などに栽培される緑肥作物は、一般に土壌表面の被覆力が高く、管理が容易であることが特徴です。土壌の保護・改善効果に加え、雑草制御、病害虫やセンチュウ防除、天敵の保護・増殖、農村景観美化など、さまざまな機能が着目されています。

「作物を組み合わせる」という技術

農地にさまざまな動植物、微生物が生活できるように作物を組み合わせ、お互いの特性を引き出す技術です。化学肥料への過度な依存、機械化、規模拡大、作業効率の追求を第一とした近代化農業では、単一作物が栽培されているため、農地生態系の生物群集も単純化しています。

「種を育てる」という技術

近代化農業で採用された高い収量を上げるための育種は、養分、とくに窒素の補給と収量の関係を重視し、採種場所と栽培場所の環境の違いは無視されてきました。
有機農業では、農地を生態系として捉え、作物の生きる力を引き出す地域環境に適した、根張りのよい種を選抜し、採種場所と栽培場所の環境に留意し、自家採種を奨励しています。

栽培技術(土づくり)の採用基準

有機農業では、土が育つしくみを農地に再現し、地域資源を活用した地力の向上を第一に心掛けるべきです。
個別的、対処療法的な方法を採用してきた近代化農業とは大きく異なり、農地を全体的、統一的なシステムとして捉える必要があります。

有機農業の技術を採用する際の判断基準は、次のことを留意することが大切です。

〇 生きものを育むこと、再生可能で豊富な資源を利用すること
〇 多様性、個性を生かすこと(画一化しない)
〇 無理なく、農地の現状にあっていること
〇 効率化、利潤の追求を第一としないこと


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