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持続可能な農業、社会は、私たちの暮らしの見直しから


食べることは、生命(いのち)の刷新

ヒトの体は、3か月もすれば食べたものが分子レベルで入れ替わるといわれています。生き続けるには、食べ続けなければなりません。すなわち、食べものを生産する農業こそが、持続可能な社会を実現するための核心だと思います。

有機農業は持続可能な生産システム

国際有機農業運動連盟は、有機農業を「土壌・自然生態系・人々の健康を持続させる農業生産システム」であり、「自然環境と共生してその恵みを分かち合い、そして、関係するすべての生きものとヒトの間に公正な関係を築くと共に生命・生活の質を高める農業である」と定義しています。
しかし、食料増産と農業所得の向上を目標としてきた日本農業の近代化は、農家の高齢化、担い手不足、そして耕作放棄地の増加を招いた結果、農業の存続自体が危ぶまれています。

農業や地域の在り方を考え直そう

地球温暖化にともなう気候変動が現実のものとなり、私たちの日常的な行動そのものを変えざるを得なくなってきました。
私たちが、次世代、さらにそのあとの世代に思いをはせ、身近な資源の活用や拡大した生産者と消費者との物理的、心理的距離を縮める取り組みなど、近代化農業を進めた思考とは異なる発想で、農業や地域の在り方を考え直す時期に来ていると思います。

まず、私たち食生活を見直すことから始めてはいかがですか。

ヒトの体の炭素および窒素の安定同位体比を分析すると、食物として摂取した植物、動物、魚、穀類の割合がわかります。縄文時代の人々は、北海道では海産物主体、本州・九州の海岸地方では植物・動物・魚介類の混合利用、本州の山間部では植物主体と、地域や生態系の違いにより、まったく異なった食生活をしていました(図、南川 1998)。縄文時代の食生活は、それぞれの地域生態系に適応していた(適応せざるをえなかった)のです。

図 採集狩猟時代の主な食料源とさまざまな地域の先史集団の骨コラーゲンの同位体比から推定した食物の13Cおよび15N濃度の分布(南川 1998)

持続可能な社会を実現するために、地域資源を活用した農業とそこで生産された農産物を主とした食生活や自然との関わり方など、縄文人の食生活に学ぶことも必要だと思います。

※安定同位体については、「安定同位体比を用いて農地生態系の食物網を探る」を参照してください。

参考文献

南川雅男(1998)「安定同位体で古代人の食生態変化を読む」季刊生命誌21、生命誌研究館


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