見出し画像

農村が維持できてこそ、持続可能な農業が可能に

群馬県甘楽町長・全国町村会経済農林委員長 茂原荘一さんへのインタビュー(2023年8月8日)記事を見て、北海道の農村で約50年前に暮らした体験を通して、感じたことを思い出しました。


約50年前に私が暮らした北海道の農村

水稲作の北限に近い当地は、大正時代(1910年代)に1戸あたり5ha(住宅地も含む)を割り当てられて入植した畑作地域です。当時は馬耕だったそうです。
高度経済成長期に多くの離農者があり、私が暮らした1970年代後半には20ha程度に規模を拡大した農家と5ha程度の小規模農家が混在していました。
規模を拡大した農家は50馬力のトラクターを使って、土地利用型作物の馬鈴薯、大豆、小麦、スイートコーンを輪作し、小規模農家は20馬力程度のトラクターで主に換金性の高いアスパラガス、ニンニクなどを栽培していました。

規模の異なる農家が協力して集落を維持

私が暮らした10数世帯の集落では、簡易水道をはじめ地域で維持していることは、全世帯で何らかの役割を分担していました。
たとえばお葬式があったときには、とくに打ち合わせがなくても、会場(寺)、買い出し、炊き出しなどの準備から当日の進行まで、滞りなく行われました(私の知らないところで、打ち合わせがあったのかも知れませんが…)。
日ごろは、互いに意見が異なることがあったとしても「いざのときは、協力してことに当たる」。
都会で育った私には、想像を超えた「地域の団結力」を垣間見ることができました。

土地利用型農業をしている農家は「今後馬力のあるトラクターに買い変え、100ha規模の農業を目指しているとのこと。しかし、そのためには、近隣農家に離農してもらう必要があり、地域の維持を考えると複雑な心境である」と語っておられました。

その後、後継者のいない農家の離農が増えたと聞きましたが、現在の状況は知る由もありません。

農村があっての農業、農業があっての食料

甘楽町長・茂原さんが言われる「農村は、農業生産に限らず住民の暮らしの場であり、地域社会そのもの」とは、農村で暮らした経験のある者にとっては当たり前のことです。
経営規模の大小に関わらず、ともに暮らしていける農村を維持するにはどうあるべきか。
国が「食料の安全保障の強化」を食料・農業・農村基本法に掲げるのであれば、農村政策は避けて通れないはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?