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Men Explain Things to Me

レベッカ・ソルニット著(邦題『説教したがる男たち』)

 原著は10年前に出版されたものだが、今でもそのまま当てはまることばかりである。
 特に気になった2章を取り上げるが、感想というか半ばは自分語りだということをあらかじめ断っておく。
 

第1章 説教したがる男たち

 全9章からなるが、書名ともなっている第1章はmansplainingを広める端緒ともなっている。これを読んで感じたのが、このようなことをする人間の中には、必ずしも女性だけにこういう態度をとるのではない者もいるということだ。
 私自身も、若いころはよく中年の男(教師であったり、上司であったり、先輩社員であったり、時には取引先の者であったりもする)に「お前は分かっていないだろうけど云々」はよく言われた。最初は偉そうに始まるのだが、聞いているうちに、大して中身がなくステレオタイプな通俗的講釈に過ぎないことが判明する。アホ臭いと思っても反論すると怒り出すから、適当にカラ相槌を打っているとそのうち諦める。イエスマンを集めるのが好きな人間は子分にできなくてがっかりしている様子が分かるときもあった。
 中年以降は、そういう態度をとってくる人間は減ってきたがゼロではない。例えば、PCやインターネットの使い方とか、仏教に関する蘊蓄とか、いい歳をして私に教えようとマウントを取ってきたりする。私も意地が悪いから、時にはど素人のふりをすることもある。プログラマーでもSEでもないし、僧侶でもないから嘘をついているわけではない。 
 だが、「ステップ事件」(5つのNO!)の時メーカーに忖度して広告掲載を拒否した出版社が発行する提灯記事だらけの雑誌とか、研究者でもない評論家・作家が書き散らした仏教解説書を読んで理解したつもりになっているオメデタイ人たちに付き合うほど暇ではない。しつこく絡んできた時にはちょっと専門用語を出して質問して黙らせる。
 
 このような人間は自分より年齢が若いと思う女性に対しては、一層しつこい態度をとるのだと思う。だが、既に知識については男女の差はないし、医学部不正入試事件のように男に下駄をはかせてみたり、都立高の男女別募集をなくしたりしているのを見ればむしろ逆転しているところすらある。SNSで無能男が自分より優秀な女性に嫉妬して誹謗中傷を繰り返している図が想像できよう。
 そして、社会の中でも特に遅れている分野の一つはよく言われているように政界であって、最近は与野党とも無能な男性議員が目立つようになってきた。そろそろ議員のクォータ制導入を考える時期だろう。その政界よりさらに周回遅れなのが宗教界で、比較的小規模な組織を除くとほとんど動きがない。本音としては最大の課題が目先の収入減対策であり、教義と社会の蹉跌に真剣に向き合わないようでは、宗教離れはますます加速するだろう。

第8章 女はみんなそう

 第8章Yes All Womenは初版にはなかったが、出版後すぐに追加されたものらしい。この#YesAllWomenはツイッター(X)のハッシュタグにもなっている。SNSとくにツイッターでは10年経ってもこの状況は全く変わっていないと感じられる。
 下に引用したような場合には、発信者は本名を隠して誹謗中傷をしているものが多いから、発信者の特定手続きの一層の簡素化・迅速化は必要であろう。特に公に発信している以上、発信者の個人名と所属組織名は個人情報に当たらない(”X”のポリシー)ので。責任を伴わない表現の自由なんぞ歴史上どこにもなかったし、これからもない。

P.152
#女はみんなそう
 「フェミニズムについてツイートするたびに脅迫とか変態リプがくる。言いたいことを言うのがこわいなんておかしい。」

 「女性の身に起きてることに対してより、このハッシュタグに対して怒ってる男の方が多いわけだが。」

 「親切にしすぎれば誘ってることになり、塩対応すれば暴力をふるわれかれない。どっちにしろクソ女認定」


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