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『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』

田野大輔、小野寺拓也編『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』を読んでいる。 編者2名による少し前の著作『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? 』(岩波ブックレット )は煽りタイトル名のせいで話題となり、読んでもいない知識人がアサッテを向いて非難したりと騒がしい。こちらは、歴史研究者とアーレント思想研究者による分担執筆および対談が収録されている。改めて、従来流布している「凡庸な」アイヒマンという見方でよいのかを問うている。

  「教えてくれる」のではなく「考えさせてくれる」本である。

 まず初めに言っておきたいのが、この本を読む前にハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン』と『全体主義の起源1反ユダヤ主義』は読んでおく方が良いということだ。それらを前提に論旨が展開されているので、そういう手間をかけないと、各執筆者が何を主張しているのか、また後半の対談で何を議論しているのかを理解できない。上記に加えて、ベッティーナ・シュタングネト『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』が明らかにした戦後のアルゼンチンにおけるアイヒマンの言動も踏まえる必要があるだろう。(〈以前〉は今は未読なのでこれ以上は触れない)
「悪の凡庸さ」とアーレントが表現したものをどのように捉えるかはかなり幅があるし、肯定的であれ否定的であれ新たに判明した事実を前にどのように再構成あるいは再定義できるのだろうかと問いかけている。
 
 https://honto.jp/netstore/pd-book_32647724.html

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