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毒親育ち視点で見るジャンケットバンク アンハッピー・ホーリーグレイル

 真経津のハーフライフ2戦目の対戦相手、叶。登場シーンを見るに「観測すること」に重きを置いている様であるが、それは逆に「誰かに見て貰いたかったから」ではないかと思う節がある。それこそ、ゴールデンカムイに登場する尾形の「おっかあ見て」の様に、当人に自覚はなくとも、見て貰いたい気持が高かったから、何かを拗らせて見る側に回ってしまったのではないか。そんな風にも思える。なんなら、「レイくん呼びしてくるモブが、配信で稼ぐ息子の金目当てでやって来た母ちゃん説」も自分の中にはある。

 司会者・蔵木ににより「聖水 聖杯 猛毒 絶命 誰が生きるか賭けません?」で始まったアンハッピー・ホーリーグレイル。そもそも、銀行特製の毒ってなんだ。毒を作り上げる金融機関、世界観が狂っているか賭けません?

 入国審査官を自称する叶。観測することに重きを置きながらも、見たいと思える相手に出会えるから賭場は良いと語りながらも、しっかりと見てくれる相手には懐く。その反面、担当行員の昼間がスマートフォンを眺めていれば「なにヨソ見してんだ?」とキレる。

 その観測することに長けた能力は流石のもので、リードをしているにも関わらず、どれが聖杯を明かしてくる。その結果的に、毒を飲み合うことになろうとも。

 両者不可避の服毒合戦!
 ワタシがボスに怒られるか賭けません?

 語り過ぎても、その説明が無いと理解出来ないお客様もいらっしゃるだろうから、蔵木の解説はそこまで間違ってはいないか賭けません?

 両者服毒の自爆戦法
 両者不可避の服毒合戦!

 お客様の中に司会者のファンが居るか賭けません?
 御手洗はカモか賭けません?

 真経津は何とか勝利したものの、御手洗の賭けは外れ、オークション送りが決まる。ただ真経津を盲信している御手洗とは違い、(単行本収録の休日もそうだが、)肩を貸してくれる位に昼間は叶と仲が良い様だ。

 

毒が扱われるだけに、ゲームの勝敗以外の面で、毒親育ちが語りたいことが複数あるか賭けません?

 毒親育ち、それは親から毒を受けて育った存在。そのせいで、ステータス異常が引き起こされ、ただ生きているだけでHPが削られていく。RPGならば「使用すれば解毒出来るアイテム」も有るが、現実はそうも行かない。
 そこで、解毒剤となるのは、物理的に存在する薬ではない。アンハッピー・ホーリーグレイルであれば、半量の毒を浄化する聖水が登場するが、それは毒自体が物理的に存在している物であるからに過ぎない。

 心理的な方面に作用する毒は、心理的な方面に作用する解毒剤が必要となる。物理的に存在する薬が効くのは、育ちのせいで鬱などを患い、そちらの症状を改善する為のものに他ならない。そして、患者を大して問診もせず、患者を慮ることも当然しない精神科医は存在する。下手したら、誤診のせいで症状が改善するどころか、別の病気を引き起こすことにもなりかねない。そんな時は、セカンドオピニオンが大事。

 予約が簡単に取れない精神科において、簡単に順番が廻ってくる病院の時点で危険なのだが、いざ病んで困った時にはその判断力が落ちているのでどうにもならない面がある。鬱は、脳機能が強制シャットダウンしているか、強制的に強めの省エネモードに移行されている為、どうしても判断力が落ちる。そこで、問診すらやらないヤブ精神科医と言うハズレに当たったら、正確な診断の出来る医師に当選した人に比べ、予後は悪くなる確率が高いだろう。

 そのリスクを負う位なら、身動きが取れなくなる程にメンタルを病む前に、セルフカウセリングをする方がマシだ。先ずは、毒の正体を突き止める為に、心の傷が傷もうが過去を振り返る。生き辛い時点で受けた毒は複数有ることが多いだろうから、毒の種類を分類するだけでも時間が掛かる。

 また、毒を見付ける度に心の傷は開き、それを自分自身の力で乗り越えるまではそれまで以上の不調に襲われる。それでも、解毒をしなければ生き辛いままである。

 

アンハッピー・ホーリーグレイルに出てくる解毒剤

 毒親育ちが良く言われるのは「それでも育てて貰った」「虐待死した子供よりは良い」等と言った、痛みを知らないからこその他人事。それならば、貴方はブラック企業勤めでで苦しむ相手に「必要最低限の給料は貰えているだろ」「過労死した人よりは良い」と言えるのか? 特に後者は言えないだろう? それに似た言葉を、雇用者被雇用者の関係では言わず、親子関係では平気で言えるのか、自分には分からない。

 そこで、叶の言う「苦痛の大小は我慢する理由にならない」である。その苦痛が虐待の果てに亡くなった子供よりは軽くとも、生まれ落ちた時から親から受ける苦痛は耐えず存在した。その全てを、我慢する理由は何処に有るのか。神では無く人間だから、赦し等は出来そうにも無い。それが非情と非難されるなら、痛み苦しみも知らずに非難する方が余程非情だと返す所存。

 

命は無くしたらお終いだから

 毒親育ちに投げかけられる悪質なフレーズの一つに「~すれば良いじゃん」がある。ほんの少し話を聞いただけで知ったつもり、分かったつもりで言い放つそれは余りにも悪質だ。その選択肢を選んでしまえば、その身に危険が及ぶことなど想像も付かない幸せな家庭で育ったのだろうな。良いなー羨ましいなー等と、鬼滅の鬼ぃちゃんみたいな何かが湧き出るフレーズである。

 好感度システムのあるゲーム宜しく、選択肢としては存在しても、それを選択したら最後、(一つの選択肢だけではバッドエンドとまでは行かないとしても)ろくな目に遭わないから、毒親育ちはそれを避けてきただけなのだ。それこそ、死ぬよりは毒を飲んで耐えてみせてでも命のチップを失わないことを選んだ真経津の様に。

 毒親育ちは、選択肢が提示された時に何かを天秤にかける。それは、命かも知れないし、学費かも知れないし、学費から繋がる将来かも知れない。どう足掻いても、未成年は保護者の許可が無ければ出来ないことが有る。契約関連が良い例だが、学校で必要になる様々な手続きにしたって、毒親育ちは毒親に媚びへつらって何とかしなくてはならない。
 そのせいで、心に毒が溜まり、心から血が止まらなくなろうとも。

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