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(6)松戸のソーシャルファーム日記 始まりと終わり

 私の勤める障害者向け農園のスタッフさんにも、ぜひ読んでほしい記事があったのでシェアしておきます。

 次来るときは誰々に会える、と楽しそうに話す子がいます。彼にとって、この職場は第二の親代わりなのかもしれない。

擬人化じゃないよ

 3月12日金曜日。朝は17℃でハウス内は22℃くらいに上がった。今日は、アスパラ菜がひとつだけ小さく黄色い花を咲かせていた。サニーレタスも芽が出てる。

 今日は液肥をやる日なので、毎朝水まきをするジョウロに液肥を加える。黄色い虫取り紙がレーン上や壁や休憩用テントの天井に、七夕の短冊みたいにぶら下がっている。コレが、キョンシーのお札だったらシュールだろう。「勅令害虫駆除」とか朱筆で書いてあるやつ。

 枝豆の一種、サヤムスメの種をまいた。梅干しの種みたいに赤くコーティングされている。肥料も含んでいるのだろうか。初めて聞く品種名で一瞬、ビールジョッキ片手に乾杯する擬人化枝豆娘を連想してしまった。

疲れさせてしまうかもしれないけど

 休憩時間中に、隣の班の大きい子と農場長さんがボーイズトークしてるのにお邪魔する。彼だけ作業服のサイズが合わずTシャツにサスペンダー姿で、椅子もソファだ。イタリア製の洒落たプラスチックの椅子は耐荷重量100kgで、彼の体重を支え切れないからだろう。

 朝、送迎バス待ちの途中で突然怒鳴った彼。何だろうと思い気になっていたので、その辺の事情を聞いてみる。駅で通行人に何か嫌なことでも言われたのかと思ったが、トラブルの相手はどうやら隣のハウスの子らしい。

 私は、彼がピュアな子だと思っている。好奇心が強くて、際限なく周囲に話しかけて疲れさせてしまう子。私にも似たようなところがあり、少し親近感を覚えるくらいだが。身体の小さな子からすれば、近寄るだけで怖いと感じてしまうのだろう。本人も反省していた。

 私たちは発達障害でない生徒より面倒をかけるかもしれません。
 しかし、私たちにとって先生は二番目の親のような存在になるかもしれません。
 私たちが先生を疲れさせることを私たちは分かっています。
 しかし、先生がつらい一日を過ごしたときには、私たちも一生懸命だったことを知っておいてください。

 そんなことがあったものだから、冒頭で紹介した記事を読んだときこれはうちの職場の人にも読んでほしいなと思いました。彼らがどれくらい、知的障がいや発達障がいについて知った上で現場に出ているのか。少し気になりました。

 自閉症スペクトラムの人は、定型発達の人と比べて説明の量が3割ほどしかなく「社会的な意味付け」に気付きにくいとか。あるいは「認知の歪み」があるとか。私も怒られると、必要以上に落ち込んでしまうほう。そういう知識があるのとないのでは、ものの見え方が違ってきます。悪意があるとか迷惑をかけようとしてそうなってるわけでないことは、知ってほしい。

 これは、支援機関の人に相談かな。私も面接前に、企業側からの要望で初めて「第三者の相談役」をつけることになりました。就労や雇用に関する、社会福祉や各種支援サービス事業をされているNPO法人の方です。

始まりと終わり

 午後はお昼を食べた後、食堂代わりのトレーラーハウスの掃除をして。それから収穫後の根っこだけ残ったレーンを種まき前の状態に戻す根処理をやった。スコップでパミスサンドを掘り起こし、ふるいにかけて根っこだけにする。本来、水はけの良い軽石のパミスがずいぶん湿っていた。これが植物の根っこが持つ保水力なのかと驚かされる。

 そんな作業のあとに、ふと思った。人間の根っこは、好奇心だと思う。

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